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世界で戦えるGLOBALエンジニアになるための製図技術〜図面は英語に勝る公用語〜 1st STEP 第2回:設計と製図の関係 /全5回P世界で戦うための製図技術【2】設計と製図の関係

2.設計と製図の関係2.設計と製図の関係

設計者が考えるアイデア次第で、品質・コスト・操作性などが異なり、「機能はたくさん付いているのに、コストが競合他社より高くて売れなかった・・」なんてことはよくある話である。消費者は機能だけでなく価格やデザインなど、商品としてトータルで魅力あるものを選択する。

図1 設計作業の概念図 このように設計とは、開発した製品をマーケットに送り出すまでは正解はないが、マーケットに送り出されたとたんに消費者が正解かどうかを判断してくれる。
開発した商品を認めてもらう手段として、魅力ある製品をタイムリーにマーケットに送り出すため、企画や設計構想の内容の充実とスピードアップを図り、生産効率を上げてコストを下げ、競合他社よりも優位に立とうと継続して努力する。

設計と製図は、図1のような関係にある。
製図は設計の中に一つの要素であり、設計作業の最終工程に位置するため、どうしても影の薄い存在になってしまう。

■「設計」は、設計者の創造力や技術力の差が製品の品質・コストに影響する「腕の見せ所」とも言える業務である。
・「奇抜アイデアが評価される」・「設計者の質が設計品質につながる」
■「製図」は、設計に比べると創造性の無いルーチン作業と思われている。
・「投影図に寸法線を記入する作業」・「寸法を記入するだけなら、誰がやっても同じ」

図2 3次元CADに描かれた計画図CAD上に、ユニークなアイデアを駆使した計画図(組立図)を描くことだけが設計ではない。
例えば、図2のように3次元CADに描かれた部品の集合体である計画図は、単なるオブジェクト(物体)をレイアウトしたに過ぎない。
CADに描かれた物体に魂を入れるために製図作業が存在すると認識すべきである。





図面とは、部品を加工するために投影図に寸法を記入した時代遅れの紙の資料と勘違いしている設計者も多い。設計者として自分自身が生み出した部品一つ一つに魂を入れる作業が製図である。
“魂を入れる”とは、品質やコストを満足させ、設計者の考えた設計意図を実現させるための作業である。
・寸法基準を決めること。
・バラツキを制御するために寸法公差、幾何公差を記入すること。
・表面性状を記入すること。
・材質を指定すること。
・表面処理を指示すること。

これらを的確に指示することが図面の品質を向上させ、担当する製品の品質が向上することにつながる。


設計製図の基礎教育への取り組み設計製図の基礎教育への取り組み

大手企業では、設計者自身が製図作業を行わず、外注設計者やトレーサーに任せっきりで部品図を作成する場合も多い。これは設計思想の基本となる次の項目をあいまいにしたまま、製図者に丸投げすることを意味し、無責任な図面が出図されることになる。

・加工できる形状とできない形状の違いがわからない(加工の知識が無い)
・設計者自身がどこに公差を入れるべきか解らない(設計思想がない)・どのくらいの公差値を記入すればよいのかわからない(加工の知識が無い)

出図後に現場から図面の問い合わせがあった場合、対応するのは部品の生みの親である設計者ではなく、寸法線を記入しただけの製図担当者が現場で怒られ、図面を修正することも多く、設計者という名を借りた“モデラー”となってしまう。
設計者のスキルが上がらなければ、同じミスを何度も繰り返し、それを別の担当者が尻拭いをするという “悪魔のサイクル”が延々と続き、企業利益を食いつぶしてしまう。
CADを使えば、構造や機構をコピーして貼り付けるという作業を繰り返すことで手っ取り早く派生機種を設計できるという一種の麻薬に近い作用を納期優先の設計開発に取り込んでしまった結果なのである。
設計者に向かって、「考えるな!考えるから時間がかかる!昔の構造を猿真似してでも仕上げろ!」と言う設計上司も現実に存在するのである。
つまり、設計思想もなく、CADを操作してレイアウトすることが設計と刷り込まれ、流用元の設計思想すら知らずに設計作業までルーチンワーク化したためである。

多くの企業に2次元CADが普及したのが約20年前である。多くの企業が犯した過ちとは、成果主義という名目の下、設計の過程で若手を教育しながら次世代の人材を育てるという意識が薄くなり、成功(=商品化)という結果だけを追い求めたことである。
どの企業も口をそろえて、現状の若手に将来の企業を背負える技術力がないと危機感を募らせている。

「いまの30代の設計者は、あと5年〜10年で管理職になるが、本当に彼らを課長、部長にしていいのか?」「以前の設計者と比べると、同じ年代でも技術力も思考力も劣ってないか?」「機械設計の基礎といえば、やっぱり機械製図や!一から教育し直しやな。」

そこで、30代の中堅クラスの設計者といえども、「もう一度、基礎から教育しなおさなければいけない」と悟り、体力のある大手企業では中堅クラスの設計者教育に取り組みだしている。 機械設計担当者の場合、設計の基礎といえば何を思い浮かべるだろうか?
すると誰もが“機械製図”と答える。
納期優先の業務の中で日陰の身であった“機械製図”が、設計の基本であり重要な要素であることを認識しだしたのである。

次回は製図の重要性に関して、さらに詳しく話をしよう。

参考文献:「設計製図リストブック」(日刊工業新聞社 山田学著)   イラスト:Naoko Doi

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