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「おさまり」のいい図面  〜鍵はBIM×二次元CADの相互理解〜  第1回:「窓」 窓を考える /全5回「おさまり」のいい図面【1】「窓」 窓を考える

1. BIM(ビム)って?1. BIM(ビム)って?

建築の設計にかかわる人なら耳にしたことがある流行りの言葉「BIM」、人によって「ビーアイエム」とも「ビム」とも発音するが、Building Information Modeling(ビルディングインフォメーションモデリング)の略だ。簡単に言えばコンピュータの中に建物を作るという設計、建設、維持管理に使う手法であり、思想のことだ。
BIMアプリケーション、つまりBIMで使うソフトウェアとしてはシェアの大きい順に(「BIM活用実態調査2011年版」日経BPコンサルティング/ケンプラッツによる)、ArchiCAD、Revit Architecture、SketchUp、Vectorworks、MicroStation(Bentley Architecture)、GLOOBE、Allplanとなる。
一つぐらいはその名前を耳にしたことはあるだろう。
ではそのBIMとは何か、BIMで何ができるのか、ここで整理しておこう。

1) プレゼンテーションのツールとしてのBIM

「ウチは工場の設計ばかりで、デザインが売りじゃないのでパースもいらんからBIMは使いませんわ」という工務店の親父。
3分の1は正しい、BIMを使えば簡単にパースが作れるし、最近ではアニメーション・動画まですぐ作れる。筆者らがBuilding Live Kobe(http://blkobe2011.seesaa.net/)というコンペで作成した建物モデルのパースが下の図だ。数時間でこのパースは作ることができるし、建物内外をアニメーションで見せる動画も1日もあれば作ることができる。

Building Live Kobeで神戸市長賞を受賞した設計作品

2) シミュレーションのツールとしてのBIM

「南側の庭に木を植えたら夏は涼しくていいかな? 今はコンピュータでどれくらいの効果があるか計算できるでしょ?」という施主。
建物をコンピュータの中に建ててあらゆることを試してみる。シミュレーションの道具、これこそBIMだ。下の図は建物のまわりをどのように海から風が流れるかを計算して表示している。風や熱ばかりでなくエネルギー消費量や、都市景観への影響、環境負荷などさまざまなシミュレーションをBIMでおこなうことができる。実際に建物を建てなくても、コンピュータの中で建ててシミュレーションをして、問題があればすぐ設計を変更する。

国際交流センターの風のシミュレーション(小さな球が風に乗って流れていく様子をアニメーションで表現)

3) 正確な図面を作る道具としてのBIM

「図面の変更が面倒だな、一つ窓の位置が変わっただけでいったい何枚の図面を直さないといけないの!」といらだつCADオペレータ。
BIMを使えばこの悩みは解決できる。どのBIMアプリケーションでも3次元のモデルと、2次元の平面図、立面図、断面図は完全にリンクしている。何か一つを変更すると関連するすべての図面は自動的に修正される。
儲かるBIMとして注目されるBIMの利点だ。逆に言えばBIMを使わない図面には図面どうしの不整合や、建設して初めて分かる問題点が隠されており、それらがコストアップの要因になっていたということだ。

子育て支援センターの立面図・断面図

4) BIMの三つの側面

プレゼンテーションのツールとしてのBIM、シミュレーションのツールとしてのBIM、正確な図面を作る道具としてのBIM、と三つのBIMの側面を紹介した。
筆者が本講義で取り上げるテーマは3番目の「正確な図面を作る道具としてのBIM」としたい。前者二つのテーマは時流に乗り、よくセミナーや記事で取り上げられる。ここではBIMによって正確な図面を作るというBIMの3番目の側面を掘り下げて考える。

2. この窓の高さは?2. この窓の高さは?

実例を見よう。筆者が設計した小さな「子育て支援センター」だ。3次元のモデルで表示したのが次の図だ。Revit Architectureというアプリケーションを使って作成した。

子育て支援センターの3Dモデル

このような3次元のモデルをコンピュータの中に作ると、2次元の図面も同時にできあがる。よく言う平立断(ヘーリツダン)の3種類の図面、平面図、立面図、断面図が自動的に作られる。さて3Dモデルと必要な2Dの図面が揃ったので、これで設計は終わったのだろうか? 確かにコンピュータの中に設計モデルができ、それを表現する図面もできたのでBIMとしてはこれで作業完了としたいところだ。
この建物を建設中に現場監督から質問がきた「センセー、掃き出し窓下のおさまりどうします? ウッドデッキのレベルとの兼ね合いもありますし」。現場で「センセー」と呼ばれるとろくなことはない。あまり尊敬のともなわない「センセー」だ。
「図面をよく見てください。ここにおさまりとレベルがかいてあります」と返事したいところだが、BIMソフトウェアだけではウッドデッキのレベルが分かっても窓の「おさまり」は分からない。
BIMアプリケーションRevit Architectureで作られた断面図(部分拡大)が次の図だ。

Revitでの断面図

これを現場監督に「これで施工してください」と渡したら怒ってしまうだろう。これでは何も分からない。現場で欲しい図面は次のようなおさまりの詳細を表現した図面だ。

窓のおさまりを示す断面詳細図

このようなおさまり詳細図があると、布基礎上部のどの部分をどれくらい下げればいいかが決まって、次のような基礎の断面図も正確にかくこともできる。窓の下部のおさまりが分かれば、デッキから泥や水が部屋に入ってこないような、かつ利用する子どもたちがつまずかないようなウッドデッキのレベルも決めることができる。
仮に3Dモデルからウッドデッキのレベルが1FL+0であることが分かったとして、施工する側はそれが窓との関係を考慮した1FL+0なのか、ただ他と高さを合わせて1FL+0としただけなのか分からない。上図のおさまり詳細図のような図面があって初めて、「ああ、これはおさまりを充分検討した結果のレベルだ」と施工者に伝わるのだ。

窓のおさまりを充分検討した上で作図された構造の断面図

おさまり詳細図がある図面とない図面では、ずいぶん図面の価値が変わることは分かっていただけただろう。仮におさまり詳細図をかかなくても、かくことのできる知識があって検討した上で3Dのモデルも作成すべきなのだ。BIMという道具があれば、知識がなくともそれなりに図面ができてしまうが、その設計からは建物を作ることができない。建物を作ることができないものを設計と呼ぶこともできないだろう。
一方、断面図を「おさまり詳細図」のように詳しく表現することを、BIMアプリケーションであるRevitに要求するべきかという問題はある、そこまでRevitで細かく表現するのは難しい、その必要もないとの声も聞こえてくる・・・という話を次回に。

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