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機械系CAD 講師:山田学

世界で戦えるGLOBALエンジニアになるための製図技術

3rd STEP 第2回:基準を六自由度から見つける/全5回

世界で戦うための製図技術 3rd STEP【2】 基準を六自由度から見つける

2基準を六自由度から見つける

前回は、寸法を記入する前に組立図を見て基準と機能を探し出し、それらの相関関係を見極めて、ばらつきを最小限にするために、ダイレクトに寸法を記入することが設計意図を表す寸法記入の第一歩であることを理解した。

今回以降、具体的な機械製品を使って基準や機能を探し出しながら、寸法を記入する過程を、部品を変えながら考えてみる。

下記に示す軸を固定する治具(じぐ:作業を補助する器具の総称)の組立図を見ながら、寸法記入の考え方を知ろう。

治具の組立図

このあと説明しやすいように、部品名称を下記のように決めておく。
  1…Vブロック
  2…ハウジング
  3…締め付けボルト
  4…ハンドル

まず、構造を確認しよう。
固定される軸を置く基準となるものが、Vブロックである。
軸を固定するために、Vブロックの真上に締め付けボルトがあり、固定する際の反力を受けるためにハウジングをVブロックの溝部に噛み込ませている。
締め付け軸には回転しやすいようにハンドルが挿入されている。

治具とVブロックの3DCG

この構造から機能を分解する前に「六自由度の拘束」を知っておかなければいけない。
六自由度とは、三次元を表すX軸Y軸Z軸における併進特性と回転特性を合わせたものである。

三次元を表すX軸Y軸Z軸

機械部品を設計する場合、六自由度の拘束を確認しながら位置を決める。これは、基準を明確にするための設計テクニックの一つである。
製図の際も、六自由度の拘束を探しながら基準を見つけることになる。

まず、Vブロックの基準を、六自由度方向の拘束を考えながら探してみよう。
一般的な機械部品の場合、取り付け面が基準となり、ねじなどの締結部材で固定されるが、Vブロックには固定部はなく、定盤などの作業台に置くことで基準となる。
従って、取り付け基準面は、VブロックのV面がある平面(上下に2面あり)を利用することになる。

基準面を示したVブロックの平面図

構造上、裏返しても基準面にできることから、下図のように、それぞれの基準面同士を寸法線でダイレクトに指示することで、Vブロックを大量に製作した場合に、個々の高さ寸法のばらつきを最小限(*1)に抑えることができる。

(*1)寸法公差記入の前段階という前提であり、ばらつきを最小限に抑えるには、寸法公差が必要になる。

Vブロックの平面図

置くだけという機能を持つ取り付け基準面であるため、六自由度の拘束を気にする必要はないが、六自由度を学習する意味で、この取り付け基準面の六自由度を考えてみよう。

Vブロックは作業台の上に置くことで面として接触するため、Z軸の併進運動ZA、X軸の回転運動XB、Y軸の回転運動YBの動きが拘束される。
しかし、Z軸方向の回転運動ZB、X軸方向の併進運動XA、Y軸方向の併進運動YAの動きは拘束されないため、Vブロックは作業台の上で自由にスライドして作業させるという設計意図が分かる。

作業台におかれた治具のイメージ

次はVブロックの機能を探してみよう。 Vブロックの主機能は、V面で軸を固定することである。軸はハウジング中央に取り付けられた締め付けボルトによって押し付けられるため、V面はVブロックの中央に存在することが望ましいことが分かる。

さらに、ハウジングはVブロックの両端をはさむように固定されることから、Vブロックの両端面がハウジングの位置決め基準となる。

V面は上下2面あるため、上側のV面を「軸固定面1」上側の両端面を「位置決め基準面1」、同様に下側を「軸固定面2」「位置決め基準面2」とする。

軸固定面と位置決め基準面を示したVブロックの平面図

V面が幅方向の中央に配置して欲しいことを表現するため(*2)に、縦の中心線を基準とした“中心振り分け寸法(*3)”として、角度寸法とV面の入口幅を指示する(青色寸法)。

(*2)厳密には、幾何公差の対称度を使うことが望ましい。
(*3)対称形状の部品に用いられ、中心線を基準に均等振り分けするという意思を表す。

また、位置決め基準となるVブロックの全幅をダイレクトに指示する(赤色寸法)。

全幅を示したVブロックの平面図

さらに、締め付けボルトで軸を固定すると、ハウジングは反力を受けて、Vブロックの溝に押し付けられる。

締め付け基準面を示したVブロックの平面図

従って、ハウジングの引っ掛け部が接触する溝面と、ハウジングが組み込まれる側の取り付け面をダイレクトに指示する。

ハウジングが組み込まれる側の取り付け面を示したVブロックの平面図

その他の寸法は機能上の優先度が低いため、寸法の記入忘れがないように気をつけて、下図のように記入すればよい。
赤色で示した括弧寸法(15)は、加工時にどのくらいの溝を削り取らなければならないかを計算する際に、小数点の寸法によって計算ミスを防ぐために、親切心で参考寸法として指示している。
また、JIS製図のルール上、面取りは個数表記できないため(*4)、青色で示したC1面取りは、外形にある3箇所(青矢印)を省略したものである。同様に、緑色で示したC1面取りは、溝にある3箇所(緑矢印)を省略したものである。

(*4)多くの企業では、“4×C1”のように面取りを個数表記することが一般的であるため、実務の中では個数表記しても問題ないと考える。

その他の寸法を示したVブロックの平面図

このように、部品形状は、六自由度方向の拘束を意識して位置決め設計することを知った。
さらに、製図の際にも、六自由度を考えることにより、“基準”を見つけることができ、それらの基準を元に寸法線を配列することが分かったと思う。

次回も引き続き、今回の治具の他の部品の寸法記入を練習しよう。

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