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建築系CAD 講師:鈴木裕二

BIMを本気で使いこなす

第4回:BIMで改修設計をやってみた(2)/全5回

BIMを本気で使いこなす【4】 BIMで改修設計をやってみた(2)/全5回

1予告どおりにはいかないが

BIMによる保育所の改修工事設計についてリアルタイムで報告しようというのがこの記事のテーマだ。本園の改修にかかる前に工事中の仮設保育所として使用する分園の設計と本園の改修設計の二つの設計が進んでいる。分園の工事は確認申請が完了し、工事入札が行われ、施工業者も決定したという段階だ。

前回の記事では、照明のシミュレーション、設備の3Dモデル、構造モデルの三つが次回には報告できる段階になっているだろうと予告したが、現時点では分園の照明シミュレーションしか報告できない。ほかはまさしく現在進行中なので別の機会に譲ることにしよう。

一方、前回紹介した、「BIMによる設計の見える化」が威力を発揮している。写真のようにプロジェクターを持ち込んで、BIMxを使ってコンピューターの中の建物を歩き回りながら、職員や保護者と打ち合わせをする。それだけのことだが、図面ではよく分からなかったことが誰にも分かるようになり、たくさんの設計に対する意見を頂くことができている。

BIMxを使って打ち合わせをしている写真

職員室で職員とBIMxを使って打ち合わせ

例えば、下の画像のような「キッチンスタジアム」を見てもらう。コンピューターの中の建物をゲーム感覚で歩いてもらいながら、ここに来たときに「楽しそうやね」という言葉とともに「子どもが、いす・テーブルに乗って、横の柵を越えて転落する可能性もあるのでは」という意見を頂く。貴重な指摘だ。

そのほかにもトイレから子どもが「せんせーウンチ出たよー」と大声を出したときに聞こえるだろうか、職員はトイレをどこからどの程度見ることができるだろうか、というテーマで話に花が咲く。すべての関係者がこの設計に関わっているという思いを共有できるというBIMらしい効果だ。

BIMx画面上で、キッチンスタジアム前を歩いている様子

BIMx画面上で、キッチンスタジアム前を歩いてみる

2照明のシミュレーション

下の画像は「分園」という4、5歳児を保育する保育室の室内パースだ。一般に設計者が照明を配置する場合は細かい照度などの計算はしない。簡単な表を参考にしたり、少し複雑な条件がある場合は照明メーカーに依頼して検討してもらったりするぐらいだ。

今回はLED照明を使う。ここでチェックしたいのは、まず過不足のない明るさだ。冬の夕方には外は暗くなるので家具などによって暗くなる部分が出ても困るので、それも見ておきたい。

このような照明検討を、設計者自らがArchiCAD 18を使ってモデルを作成しながら、つまり、設計図を仕上げながら検討することができた。設計者が科学的な検討を行い、どんどん変更しながらコンピューターの中で、照明設備を含めて建物をつくり上げていく、まさにBIMの醍醐味だ。

その具体的な手順をここで紹介しよう。

BIMx画面上で、分園の保育スペースを表示したところ

分園の保育スペース(ArchiCAD 18)

3LEDライトのデータをダウンロード

今回は株式会社遠藤照明の「配線ダクト取り付け直管形LEDライト」を保育室でメインの照明として使うことにした。まずは、メーカーのサイトからこの照明のデータをダウンロードする。照明のデータはIESファイルと呼ばれるファイルだ。遠藤照明以外にもパナソニック株式会社などの照明器具メーカーもこのIESファイルを公開している。

ここでは照明器具の品番が分かっているので遠藤照明のWebサイトで品番からその照明器具を検索する。
目的の照明器具が見つかれば図のアイコンをクリックし、ダウンロード用のページを表示し、[IES]のボタンをクリックしてダウンロードする。

遠藤照明のWebサイト
http://www.endo-lighting.co.jp/

遠藤照明のWebサイト「Jobサポート」ページで照明器具を検索している画面

遠藤照明のWebサイト内「Jobサポート」ページで照明器具を検索

該当する照明器具のIESデータをダウンロードする画面

該当する照明器具のIESファイルをダウンロードする

4IESファイルをArchiCAD 18に読み込む

使用するIESファイルの用意ができたので、このファイルをArchiCADで使えるように読み込む。IESファイルを使えるのはArchiCADの最新のバージョン18だ。旧バージョンの17では使えない。

ArchiCADの[ファイル]メニューから[ライブラリとオブジェクト]より[ライブラリマネージャー]を選んで[ライブラリマネージャー]を起動する。[ライブラリマネージャー]では[追加]ボタンをクリックして、目的のIESファイルを選択する。

これだけの操作で、ArchiCADでIESファイルを使えるようになる。図はここで使う「ERX9235S」という「配線ダクト取り付け直管形LEDライト」のIESファイルを読み込んだ状態だ。

「ライブラリマネージャー」にIESファイルを読み込む

[ライブラリマネージャー]にIESファイルを読み込む

5配置する照明を設定する

ArchiCADのモデルにこのLEDライト、ERX9235Sを配置する。まずはランプの設定を行う。

  • ・ArchiCADで[ランプツール]をクリック、[ランプのデフォルト設定]のダイアログボックスを開く。
  • ・IESファイルを使えるのは[IES光源]という特別な光源だけだ。一般の面光源やスポットライトで使えるわけではない。図のように[ArchiCAD Library 18]の下の[一般光源]から[IES光源]を選択する。
  • ・[光源設定]にある[測光ファイル名]で目的のIESファイル「ERX9235S_1S_35_58_LEDZ6_SOLID.ies」を選択する。

配置フロアからの高さを[2550]とし、そのほかの項目も図のように設定する。

[ランプのデフォルト設定]のダイアログボックス

[ランプのデフォルト設定]のダイアログボックス

6照明を配置する

[ランプのデフォルト設定]ダイアログボックスで、IES光源を設定したので、モデルでこのIES光源の「ランプ」を配置する位置、ここでは天井面の既に照明器具が配置してある位置を指示する。

先に配置されている照明器具は「ランプ」ではなく「オブジェクト」として、単に形状を確認する目的で配置されている。ここに重ねてIES光源の「ランプ」を配置することになる。

配置された光源は、ほかの「ランプ」と違ってその形状は表示されずに、その光束方向が図のように矢印で表示される。

配置されたIES光源の「ランプ」

配置されたIES光源の「ランプ」

7これからやること−構造モデル

[ドキュメント]メニューから[レンダリング]を選び、[レンダリング設定]で[レンダリングの設定]ダイアログボックスを表示する。[設定]と[サイズ]のタブでレンダリングのための設定を行う。

ポイントになるのはレンダリング エンジンだ。「CineRender by MAXON」を選ばないとIESファイルを使ったレンダリングは行えない。また今回は夜の照明のチェックが目的なので[太陽光輝度][表面イルミネーションの輝度]ともに「0」とした。レンダリング画面のサイズは適当なものを選んでおく。

「レンダリングの品質」は照明チェックが目的ならスピードを優先して「低」品質としておいて問題はない。プレゼンテーションなどの用途で使う場合に「高」品質に切り替えればいいだろう。

[レンダリングの設定]ダイアログボックスの[設定]タブ(左)と[サイズ]タブ(右)

[レンダリングの設定]ダイアログボックスの[設定]タブ(左)と[サイズ]タブ(右)

8レンダリングを実行 1

[レンダリングの設定]ダイアログボックスの下にある[レンダリングを実行]ボタンのクリックでレンダリングウィンドウが別に表示され、レンダリングが開始される。

筆者の環境(Lenovo ThinkPad X1)で、2分ほどで図のレンダリング結果が得られる。

なかなかいい感じだ。LEDらしい明るさが表現されている。床面の照度も経験上の実感とマッチする。

問題点は光源そのものの大きさだ。今回使用した遠藤照明のIESファイルには光源の大きさが定義されていない。そのため天井面の光源回りの異常に明るい表現はたぶん正しくない。IESファイルに光源の大きさが定義されたものがあるのか、そのようなIESファイルを使えば結果が違うものになるのか、残念ながら筆者にそれを試す力量がない。またIESファイルには色温度を設定できるようにはなっていない。そのため「温白色」などの色温度はIESファイルでは表現できない。

ライトを一つ置いた状態でレンダリング

ライトを一つ置いた状態でレンダリング

9レンダリングを実行 2

元の設計案どおり保育室に残り10個の配線ダクト取り付け直管形LEDライトを配置し、画面奥の舞台上には4個のスポットライトを追加してレンダリングしたのが下の結果だ。照明一つのときの約3倍の6分30秒ほどかかった。

明るく表示され過ぎて画像としては分かりにくいので、この図は[ランプの輝度]を60%に落とし露出を調整してある。照明の検討としてはこれで十分だ。この結果をベースに、より詳細な手元照明や全体の色についての検討を行うことができる。

BIMで照明シミュレーションと言うと、とても大規模な建物の設計における話のようだが、このような小規模な建物でも十分意味のある結果を得ることができる。設計者から言えばArchiCADだけで追加の投資なしで実行できるのだから、やらないという理由はない。

施主、クライアントから見れば、どんどん照明のシミュレーションを設計者に要求していけるということだ。建築設計の成果品が紙からコンピューターモデルへ、2Dから3Dへ、勘と経験から科学的なシミュレーションへ大きく変わりつつあるのだ。

全照明を配置してレンダリング

全照明を配置してレンダリング

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