ビジネスお役立ち情報 > 実務者のためのCAD読本 > 世界で戦うための製図技術 4th STEP【4】 寸法公差を使うシチュエーションを知る

実務者のためのCAD読本実務者のためのCAD読本

実務者のためのCAD読本のトップへ

機械系CAD 講師:山田学

世界で戦えるGLOBALエンジニアになるための製図技術

4th STEP 第4回:寸法公差を使うシチュエーションを知る/全5回

世界で戦うための製図技術 4th STEP【4】 寸法公差を使うシチュエーションを知る/全5回

4寸法公差を使うシチュエーションを知る

前回は、表面粗さを図面上で指示する面の肌記号について学習した。
今回は、寸法公差を使うシチュエーションとして、軸受やピンなど機械要素部品を使う場合について解説する。

一般的な機械製品には、多数の機械要素部品が使用される。
機械要素とは、機械を構成するために、分解可能な最小単位の機能部品を言う。
機械要素には、小ねじ、ボルト、ナット、座金、ピン・止め輪、スプライン、キー、セレーション、軸継手、ボールねじ、軸受、歯車、ローラチェーン・スプロケット、プーリ・ベルト、ばね、シール(パッキン)類などがある。

これらの機械要素の中で、寸法公差と関わりがある代表的な機械要素を列記する。

1. 転がり軸受、すべり軸受に関係する寸法公差の必要部位

  • ・軸受の内輪に挿入する軸の直径寸法
  • ・軸受の外輪を挿入するハウジングの穴の直径寸法

画像1

転がり軸受、すべり軸受の画像

左:転がり軸受(ベアリング) 右:すべり軸受(ブッシュ)

転がり軸受、すべり軸受ともに、メーカーのカタログに推奨する寸法公差が記載されているので、まずはカタログを確認すべきである。
転がり軸受の軸の直径に適用する寸法公差の選択例を表1に示す。

<表1 ラジアル軸受(0級、6X級、6級)に対して常用する軸の公差域クラス(抜粋)>

ラジアル軸受(0級、6X級、6級)に対して常用する軸の公差域クラス(抜粋)

引用:NTNカタログ 「はめあい」の項目より

2. 歯車に関係する寸法公差の必要部位

  • ・歯車内径に挿入する軸の直径寸法
  • ・かみ合う歯車同士の中心軸間距離(ハウジングの穴の中心間距離)

画像2

歯車

歯車

画像3

歯車の中心軸間距離

歯車の中心軸間距離

歯車の穴と軸との関係は、設計者自身が決定するため、はめあいの種類のうち、「すきまばめ」「しまりばめ」「中間ばめ」のいずれかを選択する。

すきまばめ
穴と軸とを組み立てたときに、常にすきまができるはめあい。
すなわち、穴の最小寸法が軸の最大寸法よりも大きい、または極端な場合には等しい。

しまりばめ
穴と軸とを組み立てたときに、常にしめしろができるはめあい。
すなわち、穴の最大寸法が軸の最小寸法よりも小さいか、または極端な場合には等しい。

中間ばめ
組み立てた穴と軸との間に、実寸法によってすきま又はしめしろのどちらかができるはめあい。
すなわち、穴と軸との公差域が全体又は部分的に重なり合う。

3. JISの定めるピン類に関係する寸法公差の必要部位

  • ・ピンを挿入する穴の直径寸法

画像4

スプリングピン

軸に圧入したスプリングピン

画像5

平行ピン

軸に挿入した平行ピン

一般的にピンを使用する場合、部品の固定や回り止めなどに使われることが多い。
ピンにはJISによる規格品があり、安価で寸法の安定した部品であるため、積極的に設計の中で採用するとよい。

画像6

スプリングピンの画像

スプリングピン(ロールピンとも呼ぶ)

画像7

スプリングピンの寸法図

スプリングピンの寸法図

JIS B 2808に規定されるスプリングピンの規格を表2に示す。
ピンの直径に対して、適用する穴の直径と寸法公差が明記されているのが分かる。

<表2 JIS B 2808 スプリングピン 溝付き一般荷重用(抜粋)>

JIS B 2808 スプリングピン 溝付き一般荷重用(抜粋)

引用:JIS B 2808より

直径1.6mmのスプリングピンを挿入する穴の寸法公差記入例:

画像8

1.6mmのスプリングピンを挿入する穴の寸法公差記入例

4. Eリング溝、キー溝に関係する寸法公差の必要部位

  • ・軸や穴に加工する溝幅など

画像9

Eリング溝の画像

Eリング溝

画像10

キー溝(穴側)の画像

キー溝(穴側)

軸受などの抜け止めにE形の止め輪を使用するEリング溝や、歯車やプーリと軸が相対的に回転しないように固定するキー溝も、JISで決められた寸法公差を使わなければいけない。

画像11

E形止め輪の形状

E形止め輪の形状

画像12

E形止め輪の寸法

E形止め輪の形状、寸法

JIS B 2804 に規定されるE形止め輪の規格を表3に示す。Eリングの呼びに対して、適用する軸の直径と寸法公差が明記されているのが分かる。

<表3 JIS B 2804 E形止め輪(抜粋)>

JIS B 2804 E形止め輪(抜粋)

引用:JIS B 2804より

直径8mmの軸のEリング溝の寸法公差記入例:

画像13

直径8mmの軸のEリング溝の寸法公差記入例

JIS B 1301 に規定されるキーの規格を表4に示す。
キーの呼びに対して、適用する軸の直径と寸法公差が明記されているのが分かる。

<表4 JIS B 1301 平行キー用のキー溝の形状および寸法>

JIS B 1301 平行キー用のキー溝の形状および寸法

引用:JIS B 2804より

画像14

直径8mmの軸のEリング溝の寸法公差記入例

画像15

直径8mmの軸のEリング溝の寸法公差記入例

直径12mmの軸に4×4のキー(JIS B 1301)を滑動形として挿入する場合の寸法公差記入例:

画像16

直径12mmの軸に4×4のキー(JIS B 1301)を滑動形として挿入する場合の寸法公差記入例

画像17

直径12mmの軸に4×4のキー(JIS B 1301)を滑動形として挿入する場合の寸法公差記入例

穴の寸法

軸受や歯車、軸などの機械要素を使う場合、寸法公差は必要不可欠となる。
このような機械要素に寸法公差を付与する場合、下記パターンを使い分けなければいけない。
・設計者自身で寸法公差を考えなければいけないパターン
・規格で決められた寸法公差を守って使用するパターン

今回の事例から、どのような場所に寸法公差が必要かという目安が分かったことと思う。
次回は最終回、累積する寸法公差の考え方を確認しよう。

企業のITセキュリティ講座
企業のITセキュリティ講座