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機械系CAD 講師:山田学

世界で戦えるGLOBALエンジニアになるための製図技術

5th STEP 第5回:幾何特性の特徴と範囲を理解する/全5回

世界で戦うための製図技術 5th STEP【5】 幾何特性の特徴と範囲を理解する

1幾何特性の特徴と範囲を理解する

前回は、幾何公差の基準となるデータムの記入法や、形体の一部を基準とするときのデータムターゲットを理解した。
最終回となる今回は幾何特性を記入する公差記入枠のルールや、幾何特性の範囲を知ろう。

公差記入枠の指示方法

公差記入枠は水平方向に置き、引出線を対象となる形体に当てる。引出線は公差記入枠の左右どちらから引き出しても構わない(図1)。

図1

公差記入枠の図面指示

公差記入枠の図面指示

公差記入枠からの指示線を記入する際、矢を当てる場所によって解釈が異なる。これは前回に解説したデータムと同じ理屈であるので、下記によって理解を深めておこう。

1. サイズ形体への幾何公差指示

サイズ形体とは、寸法のばらつきによって大きさが変化する形体を言う。
幾何公差を円筒の中心線に指示する場合、寸法線の延長線上に引出線を当てる。引出線の矢は次の例のうちの一つを使用して、図面に記入する(図2)。

図2

中心線に幾何公差を指示する場合の図

中心線に幾何公差を指示する場合

幾何公差を2面に挟まれた中心平面に指示する場合、寸法線の延長線上に引出線を当てる。引出線の矢は次の例のうちの一つを使用して、図面に記入する(図3)。

図3

中心平面に幾何公差を指示する場合の図

中心平面に幾何公差を指示する場合

2. 表面形体への幾何公差指示

表面形体とは、寸法とは無関係な部品の面や線の形体を言う。
幾何公差を表面あるいは母線に指示する場合、寸法線の延長線上から明確にずらした位置に引出線を当てる。母線とは形体の表面上にある任意の1本の線を言う。
幾何公差を表面あるいは母線に指示する場合、引出線の矢は次の例のうちの一つを使用して、図面に記入する(図4)。

図4

表面あるいは母線に幾何公差を指示する場合の図

表面あるいは母線に幾何公差を指示する場合

公差記入枠の要素

公差記入枠の持つ要素を紹介する(図5)。

図5

公差記入枠の要素

公差記入枠の要素

読者の皆さんは、幾何公差を記入するとき、あるいは第三者の図面を見たときに下記の疑問を持ったことがないだろうか?(図6)

  • 1. 公差記入枠に、データムが表示されていたり、されていなかったりする。
  • 2. 幾何公差の数値に、直径の寸法補助記号「φ」が表示されていたり、されていなかったりする。

図6

公差記入枠に関する疑問

公差記入枠に関する疑問

1. データムの要否

データムの要不要は、表1のように、主に公差の種類によって決定される。
幾何特性には全部で14種類があるが、幾何特性の種類によってデータムの要否が決まるのである。

表1 幾何特性の種類とデータムの要否

幾何特性の分類 幾何特性の記号 幾何特性の名称 データムの要否
形状公差 真直度 真直度
平面度 平面度
真円度 真円度
円筒度 円筒度
線の輪郭度 線の輪郭度
面の輪郭度 面の輪郭度
姿勢公差 平行度 平行度
直角度 直角度
傾斜度 傾斜度
線の輪郭度 線の輪郭度
面の輪郭度 面の輪郭度
位置公差 同軸度・同心度 同軸度・同心度
対称度 対称度
位置度 位置度
(否の場合も有る)
線の輪郭度 線の輪郭度
面の輪郭度 面の輪郭度
振れ公差 円周振れ 円周振れ
全振れ 全振れ

2. 幾何公差値の領域(φの有無)

幾何公差の数値に「φ」が付くか付かないかは、公差の種類では決まらない。
そのため公差領域を理解しなければ判断することができない。

1. 2次元平面上の直線と直線の間、あるいは曲線と曲線の間の領域(図7)

【適用する幾何公差】 真直度、平行度、直角度、傾斜度、線の輪郭度、位置度、円周振れ
図7の領域より、公差の数値に「φ」は付かない。

図7

2次元平面上の線と線の間の領域を示した図

2次元平面上の線と線の間の領域

2. 2次元平面上の円の中の領域(図8)

【適用する幾何公差】 同心度、位置度
図8の領域より、公差の数値に「φ」が付く。

図8

2次元平面上の円の中の領域を示した図

2次元平面上の円の中の領域

3. 2次元平面上の同心2円の間の領域(図9)

【適用する幾何公差】 真円度、円周振れ
図9の領域より、公差の数値に「φ」は付かない。

図9

2次元平面上の円の中の領域を示した図

2次元平面上の同心2円の間

4. 3次元空間上の2平面の間、あるいは2曲面の間の領域(図10)

【適用する幾何公差】 平面度、平行度、直角度、傾斜度、対称度、面の輪郭度、全振れ
図10の領域より、公差の数値に「φ」は付かない。

図10

3次元空間上の2平面あるいは2曲面の間の領域を示した図

3次元空間上の2平面あるいは2曲面の間の領域

5. 3次元空間上の角柱の中の領域(図11)

【適用する幾何公差】 平行度、直角度、傾斜度、位置度
図11の領域より、公差の数値に「φ」は付かない。

図11

3次元空間上の角柱の中の領域を示した図

3次元空間上の角柱の中の領域

6. 3次元空間上の円柱の中の領域(図12)

【適用する幾何公差】 真直度、平行度、直角度、傾斜度、同軸度、位置度
図12の領域より、公差の数値に「φ」が付く。

図12

3次元空間上の円柱の中の領域を示した図

3次元空間上の円柱の中の領域

7. 3次元空間上の円柱と円柱の間の領域(図13)

【適用する幾何公差】円筒度、全振れ
図13の領域より、公差の数値に「φ」は付かない。

図13

3次元空間上の円柱と円柱の間の領域を示した図

3次元空間上の円柱と円柱の間の領域

8. 3次元空間上の球体の中の領域(図14)

【適用する幾何公差】位置度
図14の領域より、公差の数値に「Sφ」が付く。

図14

3次元空間上の球体の中の領域を示した図

3次元空間上の球体の中の領域

公差記入枠にデータムが必要かどうかは、幾何特性の種類によって決まることが分かった。また、幾何公差の数値に直径の記号「φ」が付くか付かないかは、公差領域をイメージしなければ正しい指示ができないことも分かった。

以上で、「世界で戦えるGLOBALエンジニアになるための製図技術 5th STEP <全5回>」を完結する。 しかし、幾何公差を図面に指示するには、それぞれの幾何特性の意味や使い方を知らなければならない。これらの使い方は、次の機会にお話しすることとしよう。

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