2017年 4月 1日公開

実務者のためのCAD読本

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図面を極める…BIMでも図面は必要だ【極めるBIM/第2回】

建築系CAD 講師:鈴木裕二

シリーズ記事

1 どこまでモデリングする?

BIMでどこまでモデリングするか悩んでいる。設計内容がそのまま施工に結び付き、建設コストにも関わるという「実施設計」段階でどこまでモデリングするかに迷う。

ここにドアを入れたいけど、このBIMアプリケーションに用意されているドアはちょっと違うなぁ。でも似ているからこれを入れておいて、文字で「◯◯タイプドアを使用」と書いておくかな。発注者に3次元モデルを見せて勘違いされたら困るから、時間がかかってもきっちりと3Dモデルを作ろうか?

という迷いである。どこまで設計するかという迷いではない。どこまで設計するかは決まっていて、ただ標準にはないドアを2Dの図面や書き込み文字で表現するか、3Dモデルまで作り込んで表現するかだ。ARCHICADで図のようなドアをユーザーが作成すると1日以上かかってしまう。

ユーザーによって作り込まれたドア

ユーザーによって作り込まれたドア

2 LODで決めているけど

どこまで設計するかはLOD(Level Of Development 設計のレベル)という指標で設計にかかる前に決めている。例えば、窓でLOD 300なら次のような仕様としている。が、しかしこれでいいのかという迷いが残る。

[窓のLOD 300仕様]

窓ユニットは決まった位置に基本サイズでモデリングされる。
窓枠の外形寸法とガラス部の寸法は3mm程度の誤差以内でモデリングされる。
窓の開閉方法が表現される。
非グラフィック要素として次の情報を持つ。

  • 外観要素(仕上げ、ガラスタイプ)
  • 特性(U値、風耐力、防爆性能、構造耐力、空気、温度、水、音)
  • 機能(ハメ殺し、ケーシング、ダブル・シングル、吊り、オーニング、すべり出し、スライド)

LOD 300の窓の表現

LOD 300の窓の表現

3 保育所の木製ドアの場合

筆者の属している設計事務所BIM LABOの実施設計の例を見てみよう。建物内部の木製のドアに注目してみる。

実施設計段階のモデルだ。このモデルで入札も行われるので決定版とも言えるが、保育士との打ち合わせで決めた指詰め防止の切り欠きがモデリングされていない。引違いドアの敷居の部分に床との段差ができるのかこのモデルでは分からない。

3Dモデル

3Dモデル

同時に発行された設計では建具表の備考欄に「引違い戸のみ指詰め防止のためFLから1,000mmまで小口カット」と記載がある。

建具表

建具表

着工してから、現場での打ち合わせでFLから1,000mmの小口カットの指示は950mmに変更になって、木製建具の製作会社から次のような製作図が提出された。情報が過不足なく伝わって2Dの製作図に表現されている。

製作図

製作図

そして施工後の写真だ。床に段差はなく、指詰め防止の切り欠きも施工されている。

施工後の写真

施工後の写真