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「次世代PHS」とは?

通信の安定性や低電磁波、高音質が人気のPHSだが、独自の通信方式と無線LANで培われた高速化技術を融合させ、さらなる「高速化」と「安定性」を兼ね備えた次世代PHSが登場する。今回は、この次世代PHSの技術のしくみとメリットを解説しよう。

次世代のPHSって何?

「次世代PHS」とは、現在のPHSが持つ特長を生かしつつ、より高速で効率的な移動通信の実現を目指して開発を進めている新しいPHSのこと。現行のPHSで使われている「マイクロセル方式」と、最新の通信技術である「OFDM(オーエフディーエム)」「MIMO(マイモ)」「アダプティブアレイアンテナ」を融合し、20Mpbs以上(上下方向とも)の通信速度を実現する。

 OFDN(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)
少ない周波数帯域を効率的に使用するための通信技術の1つ。通常、電波が重なり合うと混信を起こし音声が途切れたりするが、OFDMを使用すると電波が重なりあった状態でも、重なり合う電波の中から目的の電波のみを抽出することが可能となる。これにより、限られた周波数帯域の中で、より多くの電波を送信することが可能となり、電波の利用効率の高い通信システムを構築できる。このOFDMは、すでに「WiMAX(ワイマックス)」などでも使用されている無線技術だが、この場合は、基地局と電話機の距離が近い次世代PHSに合わせた独自のチューニングを行った上で利用している。
 MIMO(Multiple Input Multiple Output)
アダプティブアレイアンテナを2セット同時に用いて通信を行い、約2倍の速度を実現する無線通信技術のこと。複数の電波を使うことで、速度が向上するだけでなく、障害物が多い環境での安定した通信が可能となる。
 アダプティブアレイアンテナ
複数のアンテナから、個々の電話機に最適な1つの電波を送出する技術のこと。個々のアンテナが発する電波の位相や振幅などを細かく調整することで、アンテナ全体から1つの電波として送出される。複数のアンテナを使う場合、通常は電波干渉を起こしてしまうが、このアダプティブアレイアンテナは、利用する電話機に電波を集中させる「ビームフォーミング」や、電波が届かない「NULL点」を作り出し、電波干渉を避けて最適なスループットを引き出すことができる。


この次世代PHSは、ワイヤレスブロードバンド推進研究会が定める「広帯域移動無線アクセス」の要件を満たしている高速移動体通信として、ウィルコムによって2010年頃に実用化されることが期待されている。

 「広帯域移動無線アクセス」の要件
3Gおよび3.5Gを上回る伝送速度(20〜30Mbps程度以上)
一定レベル以上の上り伝送速度(10Mbps程度以上)
3Gおよび3.5Gを上回る高い周波数利用効率


安定性をもたらす「マイクロセル」方式

次世代PHSの大きな特徴として「安定性」が挙げられる。この安定性は、現行のPHSで採用されている通信方式に秘密がある。

PHSでは、1つの基地局でカバーする範囲を、アンテナから半径30〜150mと狭く設定し、多くの基地局を整備することで通話エリアをカバーする「マイクロセル」という「セル」(基地局当たりの通信範囲)の設計方法を採用している。

一方、携帯電話などで採用されている「マクロセル」は、出力が大きい基地局を設置しており、基地局当たりの通信範囲が広いのが特徴である。

このPHSが採用するマイクロセルのメリットは、大きく3つある。まずは、周波数の利用効率が高いことで、利用の集中度合いに応じて基地局を配置できるため、限られた周波数帯域を効率よく使えること。2つめは、基地局と通信機器の出力レベルを小さくできることで、基地局の小型化が可能なこと。これは、基地局を多く設置しやすくなるほか、通信機(電話機やPCカード型端末など)の電池の持ちが良くなる。そして3つめが、中継処理の負荷を分散しやすいことで、ユーザーが集中する場所には基地局を多く設置できること。つまり、オフィス街などユーザーが集中する地域には集中的に基地局を設置し、あまりユーザーが密集しない地域では基地局の数を減らすといったエリア設計が可能となる。

■「マイクロセル」と「マクロセル」の比較


▲マイクロセル方式
多数の基地局でユーザーを分散して担当するため、1ユーザーあたりの速度を最大化しやすい


▲マクロセル方式
1つの基地局で多数のユーザーを担当するため、1ユーザーあたりの速度は制限されやすい

今後の予定と利用方法

現在、PHSの基地局は日本全国で16万カ所以上あり、日本全国を網羅している。東京都内だけでも約2万3000カ所が稼動している。次世代PHSはこれらの基地局を活用し、どこにいても無線LANのような高速通信サービスが受けられる通信基盤として期待されている。

ウィルコムでは、すでに2006年1月より実証実験が開始されており、8月には2.5GHz帯で伝送速度20Mbpsの実験に挑戦、見事に上下20Mbpsの通信速度を達成している。そして、2010年を目処に都市部から実際のサービスを開始し、徐々にエリアを拡大していく予定である。

さらに、電話機やPCカード型端末を使った通話やデータ通信だけでなく、自動販売機やガスメーターなどの機器から情報収集をするインフラとしての活用も予定している。

次世代PHSと現行のPHSとの違い

  次世代PHS 現行PHS
周波数帯  1〜3GHz  1.9GHz
最高伝送速度  上下それぞれ20Mbps  上下それぞれ1Mbps
アクセス方式  OFDMA+TDMA/TDD  4 TDMA/TDD
キャリア周波数幅  5M〜20MHz  300kHz
フレーム長 5ms上下対称
変調方式 BPSK〜256QAM
音声コーデック  SIP準拠  G.726 ADPCM
セル構成 マイクロセル
周波数有効利用技術  アダプティブアレイ、SDMA、MIMO  アダプティブアレイ、SDMA
周波数帯やキャリア周波数幅は、今後総務省から割り当てられる帯域によって決定される。

(掲載:2007年1月)

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