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大きな画面から小さな画面まで
前進を始める有機ELディスプレイ

東芝松下ディスプレイテクノロジーは、21型有機ELディスプレイを開発したと発表。また、ソニーは年内に11型有機ELテレビを発売するという。これまで大型化が難点とされてきたが、ここにきて次世代ディスプレイの切り札として大きな展開をみせている。

液晶やプラズマと有機ELのディスプレイ方式

現在の薄型テレビは液晶ディスプレイやプラズマディスプレイが主流になっているが、これに続く新世代のディスプレイとして期待されているのが「有機ELディスプレイ」だ。

有機ELディスプレイは、発光体自身が発光することにより画像を映し出すので、発光体の光を液晶という一種の膜を透かして映像を作る液晶ディスプレイのように視野角が狭いといった問題がない。また、プラズマディスプレイのような熱がほとんど発生しないので、消費電力が少なくて済む。

同じ電力で比べた場合、ブラウン管よりも液晶ディスプレイのほうが明るいが、有機ELディスプレイは液晶のさらに5倍以上の明るさを出すことが可能だ。コントラスト、色再現性、応答性能も大きく上回っていて、映像の美しさにメリットがある。

さらに、構成部品が液晶ディスプレイ(液体)やプラズマディスプレイ(気体)と違いすべて固体からできているため、曲面のようなフレキシブルなディスプレイも可能であるといわれている。


■有機ELとは

「有機(Organic)」とは、生き物のしかけがあるという意味で、生物がその体で作り出すものを指す。例えば、髪の毛、血、筋肉、骨などが代表的なものであり、草や木も有機物になる。反対に、ガラスや石、金属など、生き物が自分では作れないものは無機物として区別される。

しかし現在では、プラスチックのように、生き物の力を借りなくても有機物が作れるようになった。ビニールやガソリン、ストッキングなども有機物にあたる。有機ELにはジアミン類が主に利用されている。

「EL」は「Electro Luminescence」の略。Electroとは電気、Luminescenceは刺激を受けて光を発するものを意味する。ELそのものにエネルギーはないが、電圧をかけるとホタルのように光を発生させる。その発光する物体に有機物を原料とするのが有機ELということになる。

なお、日本では有機EL(OEL)という呼び方が一般的だが、欧米では「OLED(Organic Light Emitting Diode)」と呼ばれることが多い。


■有機ELディスプレイの仕組み

有機ELディスプレイは、電圧をかけると発光する物質(発光体・ジアミン類など)が2つの電極の間にはさまれ、ちょうどサンドイッチのような構造をしている。

まず、サンドイッチをのせる皿にあたるものとして光を通す透明なガラス板を用意する。その上に、プラスの電極、発光する物体、マイナスの電極をパンとパンの間に具をはさむように重ねる。また、サンドイッチでパンと具の間にカラシやバターを塗るように、電極と発光体の間につなぎとなるものを塗っておくと、電気の利用効率を高めてより美しい光を出すことができる。


サンドイッチのような構造をしている有機ELディスプレイの仕組み

期待された携帯電話への搭載

有機ELディスプレイは1987年に米国のイーストマン・コダックによって開発されたが、本格的に実用化されたのは2003年に同社のデジタルカメラに搭載されたのが最初になる。

開発当初は携帯電話への搭載に大きな期待を寄せていたが、実際の普及はデジタルカメラや携帯オーディオプレイヤー、携帯情報端末(PDA)のほうが先に進み、最近になってようやく携帯電話のサブディスプレイなどに搭載されるようになった。

携帯電話への普及が遅れた理由の1つに、有機ELディスプレイの視野角の広さがある。つまり、メールの画面などを他人から見られにくくするには液晶ディスプレイのほうが有効だからだ。

だが、ワンセグ放送の開始や動画配信の本格化によって、これらのコンテンツをメインディスプレイで美しく表示したいという需要が急速に高まってきている。KDDIでは「au design project」第6弾モデルとして発表した「MEDIA SKIN」へ、世界で初めてとなる26万色QVGA有機ELをメインディスプレイに採用した。


メインディスプレイに有機ELを搭載したauのMEDIA SKIN

ついに有機ELテレビが登場予定

液晶ディスプレイの5倍以上の明るさを誇る有機ELディスプレイにとって、期待は次世代のテレビ受像器への搭載だ。しかし、有機ELディスプレイは携帯機器に搭載する小型画面であれば開発や製造が容易だが、技術的な問題から大型化に大幅な時間を要するとされていた。

ところが、東芝と松下電器産業が共同出資する東芝松下ディスプレイテクノロジー(TMD)は、4月9日に21型有機ELパネルの開発に成功したと発表した。TMDはこれまで主に中小型の液晶パネルを生産してきたが、今後はテレビ用の大型パネルを生産し、2009年には20型前後のテレビを投入するとみられる。


東芝松下ディスプレイテクノロジーが開発した21型有機ELディスプレイ


一方、ソニーも4月12日に年内の有機ELテレビ発売を発表、サイズは11型で厚さは3ミリ程度だという。豊田自動織機との合弁会社エスティ・エルシーディのラインで月産1000台を生産予定。ソニーは、このように小型テレビ向けパネルの量産化には目処が立ったとして、今後は中型・大型化に向けてさらなる技術開発を進めていくという。見本市などでは27型で1920×1080ピクセルのフルHD表示が可能なパネルも展示している。

有機ELディスプレイの今後

さまざまなメリットを備えた有機ELディスプレイだが、課題もある。一番は製品寿命の問題だ。ほとんどの有機物質がそうであるように、有機ELディスプレイに使われている発光体もまた空気中の酸素や湿気に弱い。ただ空気に触れているだけで、別の物質へと変化してしまい光らなくなってしまう。

できるだけ長寿命のものを作るために、発光体として利用する有機物にはさまざまなものが研究されているが、同時に、できるだけ空気に触れないようにする方法も研究されている。単純解としてはガラスや金属でおおってしまう方法があるが、ガラスでは大画面のときに割れやすく危険であり、金属では光を通さない。これに対してプラスチックは安く、軽く、丈夫なのだが、空気を通してしまうという欠点があった。しかし、最近になって空気がほとんどもれないプラスチックが登場したことによって解決がみえてきた。

さらにプラスチックの形状を板からフィルムへ変えれば、折り曲げられるディスプレイができる。つまり、持ち運ぶときに丸めてバックに入れたり、ポスターのように柱の曲面に貼ったりすることもできる、紙のようなディスプレイ“電子ペーパー”が実用になるのだ。

また、視野角や動画応答性にメリットを持つ有機ELディスプレイを利用して、自動車のドアミラーの代わりに、車載機器としてバック確認用ディスプレイを配置しようという構想などもある。

このように有機ELディスプレイは、広い視野角、高輝度、低消費電力、携帯性をはじめ、さまざまな点で優れているディスプレイとして、今後さまざまな分野で実用化、商品化が期待されている。

(掲載:2007年6月)

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