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インターネット動画配信も
ハイビジョン映像の時代へ突入

7月11日から@niftyが、ハイビジョン動画の配信実験を開始した。その配信を実現するテクノロジーとともに、今後のインターネット配信動画の動向を占う。

ハイビジョン映像での
インターネット動画配信がスタート

高画質化した液晶ディスプレイやプラズマディスプレイの普及によって、地上デジタルやBSデジタルで放送されるハイビジョンの映像をテレビで楽しむ人が増えている。そしてついにインターネットでも、ハイビジョンの動画が配信されるようになった。

ISP(Internet Service Provider)である@niftyは、7月11日より、動画ポータルサイト「@nifty動画」で「HD*動画」の実験配信を開始した。このサービスは、利用者とともにサービスを発展させる取り組みを紹介する「@niftyラボ」の紹介例の1つとして、ベータ版で提供されている。@niftyの契約者でなくでも利用でき、実験配信期間中は無料でハイビジョン映像を楽しむことができる。

提供されるコンテンツは、「地上の楽園」と呼ばれているバハ・カリフォルニアの自然と生き物などを撮影した全11話の映像。1話53分と見応えのある内容だが、やはり圧巻は映像の美しさ。モニターやビデオカードの性能によって違いはあるものの、従来の動画とは比べものにならないハイクオリティの映像を味わうことができる。

©いまじん ©@nifty
海の中の生物の実態もくっきりと写し出される


©いまじん ©@nifty
ハイビジョンならではの風景の美しさ


■「HD」とは?
  「HD(ハイディフィニション/ハイデフ)」とは高解像度映像やその映像を再生するための機器のことを指す。従来のテレビ映像が垂直画素(走査線)525本の線の並びで1画面を構成していたのに対し(一般的に「SD」と呼ばれている)、1画面650本以上の線で構成された映像を「HD」と呼ぶ。テレビ放送での高解像度映像を指す「ハイビジョン」と同義語だが、画質以外にもサウンドやネット接続を含む、総合的なデジタル映像環境を指す場合もある。また、「ハイビジョン」というのは日本特有の名称で、海外では「HD」と呼ばれることがほとんどだ。
  ちなみに、垂直画素1080本以上を表示できる機器は、放送局が送るハイビジョン放送の1,920×1,080画素をそのまま表示できるため、“フルスペックハイビジョン(フルHD)”と呼ばれている。

ハイビジョン映像の配信を支える
動画圧縮とストリーミングの技術

@nifty動画のハイビジョン動画配信サービスは、動画圧縮の方式として「H.264」を使用し、ストリーミングソフト(動画再生ソフト)にサンストリームの「ACQULIA SK1.5」を採用することで実現した。

ここで、最近の動画配信の技術について簡単に解説しておこう。大きなポイントは、動画の圧縮技術とストリーミング技術だ。

まずは、動画の圧縮について。ハイビジョンなどの高品質の映像はデータ量が多く、圧縮しないままであれば1分当たり約7GBのデータ量を要する(再生レート約995Mbpsの場合)。いくら光ファイバーなどの高速通信サービスが普及してきたといっても、これではとてもネットワークを通じて映像を配信することはできない。

そこで登場したのが、動画の圧縮技術だ。現在、動画では主に表のような圧縮技術が用いられている。

主な動画圧縮方式

形式 解説 主な用途
MPEG2 「ISO(国際標準化機構)」で定められた、映像を符号化する動画圧縮符号化方式の1つ。
DVDで採用されており、普及率が高い方式。画質は標準画質(6Mbps程度)からハイビジョン画質(18Mbps程度)まで対応できる。
DVD
地上デジタル放送
MPEG4 「ISO(国際標準化機構)」で定められた、映像を符号化する動画圧縮符号化方式の1つ。
MPEG2形式よりもさらにデータ量を圧縮することができる。画質は、5Kbps〜4Mbpsに対応。
携帯電話の動画配信
インターネットの動画配信
iPodの動画配信
H.264 「ITU-T(国際電気通信連合−電気通信標準化部門)」で定められた、映像を符号化する動画圧縮符号化方式の1つ。正式には「ITU-T H.264」と呼ばれる。
MPEG2と同じ画質のまま約半分の情報量に変換できる点や、携帯電話などの小さな画面からハイビジョン画質まで幅広く対応している点が特徴。
ワンセグ放送
Blu-ray ROM
HD DVD
VC-1 H.264に類似する、マイクロソフトの策定した動画圧縮符号化方式。 Windows Media Video
Blu-ray ROM
HD DVD


動画配信サービスは、@nifty動画のように、ストリーミング方式が主流になっている。ストリーミングとは、インターネット経由で映像や音声などのデータを視聴する際に、データを受信しながら同時に再生を行う方式のことだ。

ストリーミング方式が登場する前は、コンテンツを閲覧するために一度すべてのデータを受信するまで待たねばならなかった。そのため電話回線など転送速度が低く安定しなかった当時では、動画を閲覧することは難しかった。しかし、ストリーミング方式を使うことにより、低速な回線でもマルチメディアデータのリアルタイム再生が可能となったのだ。

ただし、データ圧縮技術が進みストリーミング方式による映像配信は普及したが、そもそもハイビジョン映像の転送データ量は従来のSD映像に比べてはるかに多い。ストリーミングサーバの性能や回線の容量などに大きく影響されるため、ハイビジョン映像配信はなかなか現実的ではなかった。最近になり、高性能のストリーミングサーバの登場や回線の大容量化、転送技術や動画再生ソフトの発達によって、ハイビジョン映像が多くの人に提供できるようになってきたのだ。

今後のインターネット配信動画の動向は?

@nifty動画のサービスでは動画再生ソフトに「ACQULIA SK1.5」が必要だが、ハイビジョンの映像そのものはWindows Media PlayerやQuickTimeの最新版でも再生可能だ。マイクロソフトのWebサイトには、Windows Media Playerで再生できるハイビジョンコンテンツのサンプル映像「WMV HD Content Showcase」がアップされているので、ダウンロードすればすぐに観賞することができる。

ただし、ハイビジョンの映像を再生するには、パソコン側にも相応の準備として高性能なCPUやメモリ、ビデオカードなどが装備されていないと難しい。ストリーミングでの再生となれば、光ファイバーなどの高速な回線も必要だ。ハイビジョンの映像配信が普及するには、インフラも含めたハード面の問題がクリアになることが必要だ。

とはいえ、パソコンは日々高性能化し、光ファイバーの回線も急速に普及しているため、この問題もやがて自然解決するはずだ。

むしろ、問題は提供されるコンテンツの中身になるだろう。@nifty動画の実験では、いわゆる風景映像だけで、映画やテレビドラマ、スポーツ、お笑いなどの人気コンテンツは提供されていない。真にハイビジョンのインターネット配信が一般化するのは、これらのコンテンツが提供されるときになるだろうが、現在のSD映像での動画配信でさえも、著作権の問題、放送局の利害などがネックになり、なかなか大きな拡がりを見せていないというのが現状だ。

地上デジタルやワンセグの普及などによって、近年「放送と通信の融合」が大きな課題になっている。動画配信の普及にも、やはりこの課題をクリアする必要がある。

(掲載:2007年9月)

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