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進化するデジタルの眼
CMOSイメージセンサー

最近のデジタル一眼レフカメラにはCMOSイメージセンサーが搭載され、携帯電話のカメラやデジタルハイビジョンカメラにも利用されている。普及の背景には何があるのか。

光をデジタルに変換する
CMOSとCCDの役割

「CMOS(シーモス)」は「Complementary Metal Oxide Semiconductor」の略で、日本語では一般的に「相補型金属酸化膜半導体」と訳されている。CMOSはカメラのレンズから入った光を電気信号に変換する働きをして、人間の網膜と同じ役割を果たす。そのため、デジタルカメラの映像素子に採用されることが多い。なお、CMOSメモリやCMOSオートフォーカスセンサーなど別のものを指す名称も存在しているが、デジタルカメラで採用されている映像素子としてのCMOSは「CMOSイメージセンサー」もしくは「CMOSセンサー」と呼ばれ、区別されている。しかし、デジタルカメラについてCMOSといえば、一般的にCMOSイメージセンサーのことを指すとしてよい。

同じように電子の目としてデジタルカメラやビデオカメラに搭載されている映像素子には「CCD(シーシーディー)」がある。CCDは「Charge Coupled Device」の略で、「電荷結合素子」と訳される。CCDは光が当たる面積を広くできるため、暗い場所でも美しい画像が撮影でき、長いあいだ高画質の代名詞とされてきた映像素子だ。1980年には初のカラーCCDカメラの商品化がされ、続いてプロ向けのビデオカメラやデジタルカメラに搭載されるなど、CCDは急速に普及していった。

CCDセンサーは1970年に生まれたのに対し、CMOSセンサーは原理の考案こそ1960年代後半と古いが、実用化は加工技術が高度化した1990年代以降になった。そのため長らくCCDのほうが多く利用されてきたが、2004年後半には総出荷個数でCMOSが上回るようになってきた。


画像センサーの信号読み出し方法

CMOSは、各画素で発生した電荷を、個々に増幅して信号を送り出す。CCDは、各画素で発生した電荷をリレー方式で転送し、最後に増幅器で信号として扱う。両者を比較した場合、太陽などの強い光源が入ってしまったときに白い帯状の部分が発生してしまう現象を「スミア」というが、リレーをしないCMOSはスミアが発生しにくい。

CMOSのメリットと弱点克服で
人気を集める

CMOSが台頭してきた最大の理由は、CCDに大きく劣っていたいくつかの問題が解決に向かっていったことだ。

まず、CMOSは低照度の状況では素子そのものが不安定になりやすく、撮影した画像にノイズが多くなる傾向にあった。つまり、暗い場所での撮影に弱かった。また構造的な理由から、光を受けたり受け終わったりするタイミングが画素によってズレてしまい、高速に動く被写体の撮影では画像が歪んでしまうという欠点もあった。

しかし2004年頃から、感度を大幅に高め、高速な動きにも対応したCMOSが次々と発表された。この技術進歩により、CMOSは次第に出荷数を伸ばしていくことになる。

さて、欠点は解決されつつあるが、CMOSのそもそものメリットとは果たして何なのだろうか。大きくは、以下の3つが挙げられる。

  1. 消費電力の低さ
    最も大きなメリットは、低い消費電力だ。動作に12〜15Vという高電圧が必要となるCCDに対し、CMOSは5分の1程度の低い電圧で済む。そして高画素にするためセンサーが微細化していくほど、その差は大きくなっていく。高画質を追い求め、年々画素数が増えている携帯電話のカメラにとって、消費電力の観点からは、もはやCMOSでなければ搭載できなくなっているのだ。実際に、NTTドコモの最新シリーズである「905i」からは、すべての機種がCMOSを採用した。
  2. 供給量の確保
    CCDの生産には専用のプロセスと製造技術が必要となるが、CMOSはCPUやメモリのプロセスなどを転用することができる。このため比較的に製造が容易で、供給量が確保しやすく、低価格化にもつながる。以前には、携帯電話機種へのCCD生産が追いつかず端末の供給を絞らざるを得なかったり、供給リスクの問題からメガピクセルカメラ搭載を見送ったこともあったという。
  3. 組み込みの容易さ
    一般に携帯電話のカメラは、センサー/レンズ/処理回路が一体となったモジュールで提供されることが多い。CMOSはCCDと違いドライバ回路が必要ないため、駆動回路はシンプルで電源回路も少なくて済む。そのため、組み込みが容易で、小型化にも有利である。

CMOSとCCDの比較

  CMOS CCD
長所 低消費電力
供給が安定している
低ノイズ
高画質化がしやすい
短所 暗いところに弱い 消費電力が大きい
主な搭載製品 携帯電話
デジタル一眼レフカメラ
ビデオカメラ
デジタルカメラ
防犯カメラ
医療用カメラ

高性能化に伴い
本格カメラにも次々と採用

CMOSは携帯電話だけでなく、デジタルカメラやデジタルビデオにも次々と採用されている。

ニコンは2005年、デジタル一眼レフカメラに初めて撮像素子としてCMOSを採用した。その後に発売した高級機種にはCCD搭載モデルもあったが、最新の最高機種である「D3」(2007年11月発売)ではCMOSを採用。画面サイズ36.0×23.9mm、有効画素数1210万画素という大型の撮像素子の開発に成功している。

キヤノンも、最高機種「EOS-1Ds Mark III」(2007年11月発売)で画面サイズ36.0×24.0mmの35mmフルサイズ、有効画素数約2110万画素というハイスペックのCMOSを自社開発している。さらに2008年には、550億円をかけてCMOSの新工場を建設する予定だ。これまで同社はCCDをすべて外部から調達していたが、CMOSなら自社生産で確保できるため、順次CMOS搭載の商品に切り替えていくという。

高性能デジタルビデオカメラにCCDを搭載した商品を発表してきたソニーも、2007年11月には業務用ハンディタイプカムコーダーで初めて1/2型フルHD CMOSを搭載した「XDCAM EX」を発売した。すでに家庭向けハイビジョンビデオカメラはCMOS搭載のモデルに切り替わっているが、今後はプロ向けの高画質カメラもCCDからCMOSに替わることになるだろう。なお、既存の工場へ今後3年間に約600億円を投じてCMOSの生産設備を増強する計画があり、現在の携帯電話向けCMOS世界シェア約6%を、高画質の製品を中心にシェア30%を目指すという。

世界市場でのCMOS
今後のCCDとの関係

日本国内では注目を集めているCMOSだが、実はアメリカで低迷している。アメリカ市場でのCMOS売上は、2005年の32億米ドルから2006年の42億米ドルと、前年比30%増の大幅アップをしているが、2007年は上半期の売上高が前年同期を割ったことから、年間でもマイナス成長に落ち込むと予測されている。

低迷の原因は、携帯電話機業界からの受注が大幅に減少したことにある。アメリカの消費者は携帯電話機のカメラに高性能を求めておらず、30万画素程度のものが主流を占めた現状に満足しているからだ。しかし長期的に見れば日本と同様に高性能化が進むことも言われており、また、ビデオカメラのハイビジョン化もCMOSの新たな普及を後押しすることになりそうだ。

さて、CMOSの普及は携帯電話のカメラやデジタルカメラ、ビデオカメラへの搭載だけにとどまらない。まず、大きく期待できるのはセキュリティ関連の製品だ。現在、監視用カメラの主流はCCDだが、消費電力の低さからCMOSへの切り替えが進んでいくだろう。また、医療用の内視鏡や車載カメラ、TV会議システム、個人認証装置、テレビドアホンなども、CMOS搭載のものが増えてくるはずだ。

このようにCMOSは、各方面で普及が期待されているが、一方、CCDも省電力モデルが登場するなど、巻き返しを図っている。この2つのセンサーが切磋琢磨することが、画像センサーのさらなる高性能化につながっていくだろう。

(掲載:2007年12月)

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