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高速無線通信規格「モバイルWiMAX」
事業免許が交付され本格的に始動

UQコミュニケーションズ(旧ワイヤレスブロードバンド企画)とウィルコム、2つの通信事業体に2.5GHz帯広域移動体通信基地局免許が交付された。これにより「モバイルWiMAX」の実用化が本格的にスタートした。

より速く、より広く、より大量に
無線通信の注目株「モバイルWiMAX」

ADSLやCATV、光ファイバーの普及によって高速なブロードバンド通信を安く利用できるようになってきたが、モバイル環境でのデータ通信も第3.5世代携帯電話(3.5G)と呼ばれる、より高速な「HSDPA」や「HSUPA」に移行しつつある。こうした中で、高速無線通信の新たな選択肢として広帯域、大容量のモバイル通信規格「モバイルWiMAX」がクローズアップされるようになってきた。

日本では2.5GHz帯周波数でこのモバイルWiMAXを利用できるが、2007年12月に、KDDIを筆頭株主とし、インテル・キャピタル、東日本旅客鉄道、京セラなどが出資する「UQコミュニケーションズ(旧ワイヤレスブロードバンド企画)」が事業免許を取得したのだ。

この2.5GHz帯には、全国で使える「移動系全国バンド」と、市町村など行政区域単位で割り当てる「固定系地域バンド」の2種類がある。UQコミュニケーションズが取得した免許は、移動系全国バンドのものだ。この2008年夏には、固定系地域バンドについても免許の割り当て事業者が決まる。

そもそも「WiMAX」とは「Worldwide Interoperability for Microwave Access」の略で、2005年にIEEE(米国電気電子技術者協会)で承認された無線通信技術のことを指す。主に802.16のことを指すが、モバイルなどの移動端末で利用することになるのは「IEEE802.16e」という技術だ。

IEEE802.16eは、固定無線アクセス向けのIEEE 802.16-2004に、省電力機能やハンドオーバーなどモバイル機器向けに必要な機能を追加した規格で、通信速度が最大75Mbps(実効的には10〜20Mbps)と、無線LAN接続並みの速度で通信できることが最大の特徴になる。また、時速120kmで高速移動をするときでも利用が可能なのも大きなメリットだ。現在、数多くの無線アクセス技術が登場しているが、モバイルWiMAXの位置付けは次のようになる。

■WiMAXの仕様

規格名

802.16e

802.16

802.16-2004(16d)

策定時期

2005年12月

2001年12月

2004年6月

利用周波数帯

6GHz以下

10〜66GHz

11GHz以下

速度

最大75Mbps

最大135Mbps

最大75Mbps

モビリティ

ポータブル(歩行速度)
モバイル(時速120km)

固定

固定/ノマディック

チャンネル幅

1.25M、5M、10M、20MHz

20M、25M、28MHz

1.25M〜20MHz

利用距離
(セル半径)

2〜3km

3〜5km

10km以下


■無線アクセスの比較

種類

モバイル
WiMAX

無線LAN

3GPP
3GPP2

FLASH-
OFDM

iBurst

通信速度

最大75Mbps

IEEE802.11a/g
 最大54Mbps
IEEE802.11n
 最大100Mpbs

HSDPA/EV-DO
Rev.A 数Mbps

最大
16Mbps

最大
32.35Mbps

カバーエリア
(半径)

2〜3km

数十〜百数十m

数km

2〜3km

2〜3km

周波数の
利用条件

要免許

なし

要免許

要免許

要免許


モバイルWiMAXの通信速度は最大75Mbpsと、現在実用化されている他の技術に比べても高速といえる。PHSは数百kbps、携帯電話を利用したHSDPAや「EV-DO Rev.A」も現状は数Mbpsである。無線LANはIEEE802.11a/gで最大54Mbps、IEEE802.11nは100Mbps超と高速化が進んでいるが、1台のアクセスポイントでカバーできる範囲は、半径数十〜百数十メートルと狭い。一方でモバイルWiMAXは、1台の基地局で半径2〜3kmのエリアをカバーできる。

モバイルWiMAXで広がるシーンと
世界での展開における特徴

モバイルWiMAXの利用方法は、パソコンでのインターネットアクセスが一般的だろう。UQコミュニケーションズでは、利用者向けの端末について現在調整中としつつも、パソコンに接続して使うタイプと、パソコン内に組み込むエンベッド型の2つを想定している。後者については、インテルと共同でプロモーションしていく予定だ。

さらに、今後は専用の通信端末だけでなく、PDA(携帯情報端末)や携帯ゲーム機、携帯音楽プレーヤー、デジタルカメラ、カーナビなど、さまざまなデバイスにモバイルWiMAXの通信機能が組み込まれていくことを想定している。このようなコンシューマ向けのものだけでなく、エレベーター監視、空調機器監視、広告ディスプレイ、セキュリティ管理など、ビジネスシーンでの利用も同時に見込まれている。

モバイルWiMAXは、さらに世界的な規模での拡がりも見せている。実は、世界的に見ればモバイルWiMAXは固定ブロードバンドの代替手段、あるいはハイエンドユーザ向けの限られたパケット通信サービスを少ない設備投資で実現できる手段として注目されているのだ。

将来は無線ブロードバンドとして利用する選択肢を残しつつ、当初は固定ブロードバンドでサービスを展開するアプローチでモバイルWiMAXの採用を検討している事業者が海外には多い。

また、モバイルWiMAXは、これからブロードバンド化を進めようという国にとっては格好の技術でもある。モバイルWiMAXの特徴の1つとして、端末からインフラ、サービスまでを世界規模で供給する動きが進んでいる点が挙げられるが、WiMAXの業界団体「WiMAXフォーラム」には約500社の通信事業者やベンダーが参加しており、需要の拡大とともにベンダー間の競争が進み、基地局や端末の低価格化を期待できる状況にある。

ブロードバンドの普及には、加入者当たりのインフラコスト、特に端末コストを下げることが不可欠であるが、モバイルWiMAXはまさにこうしたニーズにしっかりと応えられる技術なのだ。既に無線LANは世界規模で供給が進んでいるが、モバイルWiMAXはこれを凌駕する最大のデファクトスタンダードになる可能性もある。

サービス開始までのスケジュール
次々に生まれる構想と残る課題

事業免許を取得したUQコミュニケーションズは、2008年6月から2008年度の第2四半期までに約300局の基地局を建設し、2008年度第3四半期にもさらに300局、2008年度第4四半期ではさらに400局を開設する計画だ。

エリアの展開スケジュールとしては、2009年2月の試験サービス開始までに東京23区と横浜市などをカバーし、商用サービス開始を予定している2009年夏には東京から名古屋、大阪エリアに拡大。2009年度末には全国の政令指定都市エリアをカバーするという。全国の主要都市も、2010年度の末までにはカバーする考えだ。

そして、この商用サービスが始まる2009年度には、年間で3000局ほどの基地局を新設し、カバーエリアを急速に拡大していくという。さらに、駅構内や電車内でもモバイルWiMAXが利用できるよう、JR東日本と電波伝搬実験も実施している。当然、地下街や地下鉄の駅などもエリア化しなくてはサービスが普及しないと考えており、順次交渉を進めていくという。また、米国のSprint Nextelや韓国のKTとローミングサービスの提供へ向けて交渉を行う計画もある。

サービスの提供価格については、総務省への免許申請時に月額3,200円程度を見込んでいると発表している。具体的な価格はサービス提供の直前に明らかにするとしながらも、この価格を大きく変えるものにはならないという。

なお、UQコミュニケーションズが商用サービスを開始する2009年夏は、携帯電話事業者が「LTE」などの次世代高速データ通信サービスを開始している時期でもある。LTEは、NTTドコモやソフトバンクなどが採用している第3世代携帯電話方式「W-CDMA」の高速データ通信規格「HSDPA」をさらに進化させたものだ。下り100Mbps以上、上り50Mbps以上の高速通信を実現するよう目指したもので、W-CDMA方式の標準化団体3GPPにおいて標準化が進められている。

このLTEとモバイルWiMAXは、当然ながら競合が予想されている。ただし、モバイルWiMAXは携帯電話が得意とするような音声中心のネットワークを狙っているわけではなく、内蔵デバイスやデータ通信カードのような多種多様な端末を使うことを前提に開発が進められているという。

今後、どのような住み分けができていくのかが1つの課題となりそうだ。

(掲載:2008年4月)

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