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音声録音のICレコーダが進化
CDを超す音質「リニアPCMレコーダ」

音声録音が手軽にできるICレコーダは、会議や商談をはじめ、音声メモにも使えるビジネスアイテムの1つになっている。最近では多くの機能向上とともに、CD音質を上回る「リニアPCMレコーダ」が人気を集め、AV機器として隠れたベストセラーになっている。

アナログ音声信号のデジタルデータ化
3段階で変換するリニアPCM方式

そもそもICレコーダは音をどのようにデジタル化しているのだろうか。リニアPCMとは、音声などのアナログ信号をデジタルデータに変換する方式の1つだ。PCMとはパルス符号変調(Pulse Code Modulation)の略で、「標本化」「量子化」「符号化」の3段階を通して元の信号をアナログからデジタルに変換する。

■標本化

標本化とは、信号をどのくらいの周期で標本(サンプル)するか、つまり、どのくらいの一定間隔で信号データを取得するかという意味になる。そして、データを取得する間隔を表すものを「サンプリング周波数」という。サンプリング周波数が大きいほどデータ取得の間隔が小さくなり、多くのデータを集めることになるため、高音質な記録となる。

■量子化

量子化は、信号の振幅(レベル)を2進数で表現する。例えば、3bitで符号化する場合、2の3乗までの8段階でデータを近似して表す。

■符号化

符号化で、コンピュータなどを介してハードディスクやメモリといった媒体に記録するため、2進数に変換する。

音質ということでいえば、取得する音の間隔が短いほど、不連続な値の刻みが細かいほど原音に近くなる。つまり、サンプリング周波数が高く、量子化数が大きいほど音の品質が良いことになる。ちなみに、音楽CDでは1秒間に4万4,100回(44.1kHz)のサンプリングを行い、16bit(約6万5,000段階)で量子化している。CDを超える音質で話題になった「DAT」は、48kHz、16bitのリニアPCM方式で記録する。なお、音楽のレコーディングスタジオではリニアPCMの96kHz、24bit(約1,600万段階)がスタンダードフォーマットとして使用されている。

サンプリング周波数・量子化ビット数と録音時間の関係(数値は一例)

音質

サンプリング周波数/量子化ビット数

録音時間
(4GBメモリの場合)

備考

22.05kHz/16bit

約13時間

一部の圧縮音声ファイルレベル

44.10kHz/16bit

約6時間半

音楽CDレベル

48.00kHz/16bit

約6時間

DATレベル

44.10kHz/24bit

約4時間半

 

48.00kHz/24bit

約4時間

 

96.00kHz/16bit

約3時間

 

96.00kHz/24bit

約2時間

レコーディングスタジオレベル


リニアPCMは得られたデータに圧縮などの処理を行わず、一切手を加えない方式であるため、一般の携帯オーディオプレーヤーやICレコーダが使用している「MP3」「ATRAC」「WMA」などの圧縮音声ファイルに比べると、音の歪みなどがはるかに少ない。リニアPCMのリニアとは、データを圧縮せず歪みが少ないという「リニア」を意味するのだ。

リニアPCMとMP3の音を実際に聴き比べてみると、細やかな表現力でその差は明白になる。リニアPCMなら、バイオリンの弦と弓がこすれる音や、歌手の息づかいなど、聞き逃しそうな音も忠実に記録・再生されるので、音に臨場感が生まれる。

欠点としては、非圧縮データのため記録するには大きな記録領域が必要になる。しかしこの問題も、記録媒体の大容量と低価格が進んでいる現在ではネックとならず、リニアPCMレコーダの利点は大きい。

■もう1つの高品質フォーマット「Direct Stream Digital(DSD)」方式

CDを凌ぐ高音質として「スーパーオーディオCD(SACD)」が大いに注目された時期があった。このSACDに採用された録音方式「Direct Stream Digital(DSD)」は、PCM方式とは全く異なり、音声信号の大小を1bitのデジタルパルスの密度(濃淡)で表現する方式だ。

最大の特長として、回路構成がとてもシンプルに実現できる点が挙げられる。原音のアナログ信号をデジタル信号に変換する際、オーバーサンプリングA/Dコンバータが使われ、このコンバータの最初の部分でアナログ信号が1bitのデジタル信号に変換される。

通常、CDなどに記録するには間引き処理となるデシメーション処理を行ってPCM信号を生成する必要があり、そのためPCM方式では再生時に補間データの作成がデジタルフィルタなどで処理される。対してDSD方式では、A/D変換された1bitの信号をそのまま記録することができ、再生でもアナログローパスフィルタを通すだけのシンプルなシステムで行える。このため、100kHzをカバーする再生周波数範囲と可聴帯域内120dB以上のダイナミックレンジを確保し、原音にきわめて近い録音・再生を実現している。

しかし、SACDの規格は一般のCDと互換性がなく、再生は対応した独自のプレーヤーが必要となるため、オーディオマニアなど一部の層にしか普及していない。DSD方式で記録できるICレコーダも登場したが、現在ではリニアPCM方式が主流を占めている。

次々と新機種が登場して高機能化
普及の広がるリニアPCMレコーダ市場

リニアPCM形式を搭載したICレコーダ「リニアPCMレコーダ」で先鞭を付けたのが、デジタル楽器のメーカーとして知られるローランドの「R-1」。2004年に発売された同モデルは、サンプリング周波数44.1kHz、量子化ビット数16bit/24bitを誇り、文庫本程度の大きさで価格が4万円弱、DATやMDからの買い換え需要を掘り起こして大ヒットした。2006年にはサンプリング周波数48kHzにも対応し、さらにコンパクト化された「R-09」も発売され、こちらも好評を博した。

このように需要が拡大するマーケットにいち早く着目した電機メーカーがソニーだ。2005年に「PCM-D1」を発売したが、20万円以上する価格にもかかわらずAVマニアを中心に大ヒット。4GBのフラッシュメモリを内蔵し、96.0kHzのサンプリング周波数で24bit記録できる機種として、いまだに同社のリニアPCMレコーダのフラッグシップモデルとして人気が高い。後に、可動式のエレクトレットコンデンサーマイクを搭載した普及モデル「PCM-D50」を発表、メモリスティックDuoを使った容量の増設も可能になっている。

三洋電機も2006年、44.1kHz/16bitのリニアPCMレコーダ「ICR-S280RM」を発売。当時としては破格の3万円弱ということもあり、こちらも好評を博した。この時期からメモリの小型化・大容量化、そして本体の小型軽量化・低価格化が進み、リニアPCMレコーダ市場が急速に拡大していく。

ICレコーダではトップシェアを誇るオリンパスも、最近になってこの市場に参入してきた。2008年2月に発売された「LS-10」は、リニアPCMとMP3、WMAの3つの録音形式に対応し、約165gのコンパクトなボディとスリムな筐体が特徴になっている。2GBの内蔵メモリとSDカードスロットを装備し、96kHz/24bitという高音質で録音できる高級機種だが、価格は5万円を切っている。

オリンパス「LS-10」ソニー「PCM-D50」

リニアPCMレコーダの用途は?
趣味だけではなくビジネスにも有効

リニアPCMレコーダは音楽CD以上の高音質を誇るが、会議や商談などのビジネス用途でここまでのスペックは必要だろうか。

実際、リニアPCMレコーダがヒットしている主要因は、昨今の中高年バンドブームを受けてか、団塊の世代を中心とした中高年に人気を集めているからだという。原音に近い音で楽器の演奏が録音できるため、スタジオや自宅などでレコーディングする際に使われるだけでなく、集まって練習する時間がないときは互いの演奏を録音し、メールで送り合うというケースも多いという。また、登山やハイキングの人気も手伝い、野鳥の声や自然の音、列車の音などを録音する「ナマ録」もヒットの後押しをしているという。

このような趣味の世界では高音質であることが直接のメリットになるが、高音質であるということは同時に「音の解像度が高い」ことでもある。例えば、会議での会話は議論が目的のため、音声が重なることもあれば、会議室自体が音響的に不利な場合も多い。議事録のための録音なら、それぞれの発言が明瞭に聞き分けられる音の解像度を持ったリニアPCMに十分なメリットはあるだろう。

その他にも、語学学習として教材の音声ファイルや授業を録音したデータを再生して発音のチェックをするなど、高音質を活かした使い方も考えられる。デジタルデータのため、パソコンに取り込めば音の加工も自由自在にできる。価格も一般化しているリニアPCMレコーダを、ぜひ自分なりに活用したいものだ。

(掲載:2008年5月)

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