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Human Machine Interfaceでクルマの操縦が進化する
技術によって近くなる人間と機械の境界

自動車業界ではハイブリット化をはじめとする環境問題が大きな話題になっているが、同時に自動車の「HMI」にも積極的に取り組んでいる。実用化目前にまで開発が進みつつある、HMIの新技術を解説する。

人間と機械をつなぐ関係
自動車におけるHuman Machine Interface

「HMI」とは「Human Machine Interface(ヒューマン・マシン・インターフェース)」の略で、人間と機械との間で情報のやりとりを行う境界という意味を持つ。一般的には、人と機械の間に介在し、人への情報提供、機械への指令などをやりとりする部分を指す。簡単にいえば、人と機器をつなぐ部分、つまり機器の表示やユーザの操作を受け付ける部分のことだと理解してもらえばいいだろう。

自動車に供えられた代表的なHMIとしては、デバイスでは各種のスイッチ、ハンドル、レバー、ディスプレイ、カーナビなどがあり、技術としては音声認識、画像認識などが該当する。そもそも自動車というのはHMIの発想が重要な製品であるが、近年、自動車業界においてはこれまで以上にHMIの発想、そして製品への応用が重要になってきている。

1つは、安全性の向上という面だ。現在の自動車業界における安全技術の焦点は、事故が起きた際にいかに被害を軽減するかという「パッシブセーフティ」もしくは「プリクラッシュセーフティ」から、いかに事故そのものを未然に防止し、危険を回避するかという「アクティブセーフティ」に移りつつある。アクティブセーフティに関する技術では、事故に至るまでのドライバの認知能力や操作能力の不足を、自動車側が技術的に支援することになる。この、ドライバの眠気や不注意をどのように検知するか、また検知した情報を踏まえながら、危険回避の観点からどのような判断を下すのかといった点にHMIが関係してくる。

次に、快適性向上の側面がある。市場調査会社J・D・パワーが毎年実施している新車購入直後の「初期品質調査(IQS)」は業界でも重要視されているが、2006年より、このIQSの調査方法が変化した。2005年までは「壊れる」や「動かない」というものが不具合としてカウントされていたが、2006年から「使いにくい」「使い勝手が悪い」という項目まで不具合としてカウントされるようになったのだ。

この調査に象徴されるように、現在の自動車業界ではいかに自動車の利用、そして利用時の車内空間を快適にするかという点が大きなテーマとなっている。その意味でも、HMIの発想が自動車の設計に大きく影響しているのだ。

人間の持つ五感を通して
システムと操縦の境界になるHMI

自動車のHMIと言えば、カーナビが最もポピュラーで理解されやすいだろう。カーナビに搭載されている音声システムのように、人間の五感を刺激するHMIの開発が盛んになっている。

その1つが「インテリジェントペダル」として日産自動車が実用化した技術だ。このインテリジェントペダルは、昨年12月に発売された同社の高級乗用車「フーガ」に搭載されたもので、車両前部に設置したレーダーセンサからの情報を元に、先行車両との車間距離や相対速度に応じてブレーキを制御し、追突を防止するというシステムだ。

これまでにも試された多くのシステムと違うのは、アクセルペダルを踏んでいるときに危険を判断すると、ペダルを押し戻す力がかかり、ドライバへフィードバックを与える点だ。つまり、システムによる処理をドライバはその身体で直接知ることができる。

従来の追突防止システムではフィードバックの方法として、ナビゲーション画面を通じて警告メッセージを流す、警告音で知らせるなどがあった。それでも、ナビゲーション画面から目を逸らしたり、BGMや外音で警告音を聞き逃すなどの可能性が残っていた。しかし、ドライバが足を置いているアクセルペダルを押し戻すこのシステムなら、ドライバがクルマからのサインを見逃す可能性はかなり減らせるとみている。また、アクセルから足を離している場合でもブレーキは自動的に作動するため、気が付かなくとも追突の心配がなくなる。また、このブレーキはエンジンブレーキとは異なってシステムが自発的にかけているもので、前走車が停止すれば自車も停止するようになっている。

■インテリジェントペダルの技術概要


自車が先行車両に近づき過ぎた場合

ドライバがアクセルペダルを戻すと、システムが滑らかにブレーキをかけて減速し、車間維持操作を支援する。ドライバがアクセルを踏んでいる場合は、アクティブアクセルペダルがアクセルペダルを押し戻す方向に力を発生させてアクセルペダルを戻す操作を支援し、アクセルペダルが戻るとシステムが滑らかにブレーキをかけて減速する。

先行車両の減速などにより、ドライバのブレーキ操作が必要だとシステムが判断した場合

ディスプレイ表示やブザー警報などで注意を促すとともに、アクティブアクセルペダルがペダルを押し戻す方向に力を発生させ、ドライバがアクセルペダルからブレーキペダルへ踏みかえる操作を支援する。

「インテリジェントペダル」技術


百聞は一見に如かず
視覚を有効に使うHMI

重要な感覚器官である眼、この視覚を有効に使う技術が普及するのもそう遠くない。急速に普及しそうなのが「ヘッドアップディスプレイ(HUD)」技術だ。自動車のフロントガラスに車速や進行方向などの情報を表示すれば、ドライバは速度計などへ視線を配ることもなくなり、前方視界に集中したまま運転できるため操縦性や安全性はかなり向上することになる。

HUDはBMWやCitroenなど欧州の自動車メーカーではいち早く採用されているが、現在のところ日本車で標準装備されているのはトヨタ「クラウンマジェスタ」のみ。ただし、速度計などをフロントガラスに映し出す装置はオートショップなどでカーパーツの1つとして販売されており、カーマニアの間では人気が高い。

このクラウンマジェスタでは、さらに「ナイトビュー」機能も搭載されている。これは、夜間の前方視界を近赤外線カメラで撮影し、見えにくい前方の歩行者や障害物、道路状況を映像化してフロントガラスに投影するというもの。ヘッドライトのロービームによる照射範囲より先の情報をいち早く把握でき、ゆとりをもった運転が可能となる。

さらに進んだHUDとしては、デンソーが開発中の「インテリジェントウォーニング」という技術がある。これはまずドライバの視線を自動認識し、走行中に認知もしくは注意すべき対象がドライバの視界に入っているかどうかを判断、視界から外れていた場合に警報音およびその対象物周辺に警報マークを映し出して注意を促すシステムだ。つまり、ドライバが見逃している危険をシステムがセンサ技術などで検知し、瞬時に分かりやすく警告する技術となる。これらの技術の実用化によって、自動車を運転する際の危険性を低くしようと努力がされている。

「インテリジェントウォーニング」技術


ヒトと道具の関係性
進む技術開発と拓ける操作の未来

マツダは2008年1月29日に発表した「アテンザ」で、「CF-Net(Cross Functional-Network)」というHMIを採用している。これは、ディスプレイに表示された空調やオーディオ、トリップカウンターなどの設定を、ハンドル部分に搭載されたステアリングスイッチで簡単に操作できるというものになる。ステアリングスイッチで各種の設定を切り替えられる仕組みはほかにも数多くあるが、切り替え方法が分かりにくかったり、操作が面倒だとされてきた。マツダの開発したCF-Netでは、項目を左右ボタンで選択し、設定は上下レバーを使うなど、機能の選択と設定の決定を完全に分割、これによって初めてのユーザでも直感的に操作できるという。

そしてHMIの考え方は自動車だけではなく、バイクにも浸透しつつある。ヤマハでは、走行環境に合わせてライダーが音声によるシステムコントロールを可能にすることで、運転操作にいっそう集中できる環境を作り出すシステムを開発中だ。専用ヘルメットに内蔵したスピーカとマイクによって、運転者から見えない、あるいは見えにくい範囲の車両の存在を音声とディスプレイ表示で告知したり、ほかのライダーとの通信ができるようにもなっている。また、風切り音などの雑音を大幅に低減するノイズキャンセルやボイスナビゲーションの機能も搭載されている。

ここで紹介したのは、まだほんの一部のHMIであり、これからもさまざまな技術が登場してくるだろう。いずれの技術も安全性、快適性をさらに向上させるためのものであり、早い実用化と普及が望まれる。

(掲載:2008年7月)

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