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オンライン百科事典でも使われる「Wiki」って何?

世界中の人が作成、改訂を行い、日々情報が増え続けているオンラインの百科事典「Wikipedia」。誰でも簡単に編集できるこの百科事典には「Wiki」というシステムが使われている。

世界中の人がオンラインで参加
進化を続ける百科事典「Wikipedia」

「Wikipedia(ウィキペディア)」とは、利用者が自由に執筆・編集できるインターネット上のフリー百科事典のことだ。米国の非営利団体「Wikimedia財団(Wikimedia Foundation)」が主催している。

Wikipediaの名称は、「Wiki」と呼ばれるWebサイトの共同執筆・編集システムと「Encyclopedia(百科事典)」を組み合わせた造語。その最大の特徴は、誰でも無料で記事を閲覧することができ、また利用者の誰もが自由に項目(記事)を増やしたり内容を記述したり編集したりすることができる点。また、こうした変更はすべて履歴として記録・公開され、他の利用者や管理者がチェックできるため、いい加減な内容や虚偽の内容、特定の意図をもって書かれた内容(政治的宣伝や企業の広告など)は書き込んでもすぐに発見され、修正ができるようになっている。こうした点もWikipediaの優れているところだ。

Wikipediaは2001年1月15日に英語版が開始され、2009年の現在では、世界中にある250を超す言語で作成されている。Wikipediaのもう1つの大きな特徴は、掲載されている項目の多さにある。もちろん、オンラインの百科事典としては世界最大規模を誇り、科学や物理など専門的な項目から、ほとんど知られていないマイナーな事象まで、実にさまざまな情報が掲載されている。2009年1月現在での項目数は、英語版が約267万、ドイツ語版が約84万、フランス語版が約75万、ポーランド語版が約56万、そして日本語版では約54万という項目が掲載されているという。

なお、Wikipediaには広告や有料サービスなどは一切なく、運営に必要な資金は寄付によってまかない、執筆や編集は世界中の無償のボランティアの手によって行われている。

Wikipedia日本語版のメインページ
Wikipedia日本語版のメインページ(http://ja.wikipedia.org/

誰でも簡単に編集ができる仕組み
Webサイト編集ツール「Wiki」

「Wiki」はWebブラウザから簡単にWebページの発行・編集などが行えるWebコンテンツ管理システムのことで、Webサーバにインストールし、Webブラウザから利用する。WikipediaはこのWikiのシステムを使用している。

Wikiは、複数の人々が共同でWebサイトを構築していくような利用法を想定しており、閲覧者が簡単にページを修正したり、新しいページを追加したりできるようになっている。また、編集できる人をパスワードなどで制限したり、編集できないようページを保護したりすることもできる。Webページを構成するHTMLの知識がなくても、リストやリンクなどの表現を簡単に作成できるように、独自の整形ルールも定められている。

簡単に記事を掲載できる点は電子掲示板(BBS)に近いシステムだが、BBSが時系列に発言を積み重ねるコミュニケーションツールであるのに対し、Wikiは内容の編集、削除が自由なこと、基本的に時系列の整理を行わないことから、誰もが自由に記事を書き加えていく、いわば「コラボレーションツール」もしくは「グループウェア」の1つともいえるだろう。柔軟性が高く、手軽に始められて、操作が簡単なことから、メモ帳代わりに使ったり、簡易なコンテンツ管理システムに利用したりなど、個人ツールとして活用する人も多い。

そもそもWikiは、Ward Cunningham氏が「WikiWikiWeb」というWebサイトで使っていたプログラムが原型となっている。同氏がこれを公開したことから、多くのWikiクローンプログラム(オリジナルと同様の機能を有する派生プログラム)が作成され、さまざまな環境に移植された。そのほとんどはフリーソフトウェアとして配布されており、簡単に入手して導入することができる。Wikipediaで使用されている「MediaWiki」も、フリーのソフトウェアとして誰でも簡単に手に入れることができる。

ちなみに「Wiki」は、ハワイ語の「Wikiwiki」が語源で、「速い」「急ぐ」「形式張らない」といった意味がある。

MediaWiki設定画面
「MediaWiki」(1.11.0)のSite config設定画面。Webサーバ構築について基本的な知識があれば、誰でもインストールできる

すべての人のアイデアを集めて記録
Wikiによって実現する集合知

Wikipediaはインターネット上の百科事典である。しかし、既に記載内容は一般の百科事典に載っている範囲をはるかに超える。その一例として、裏話的な情報を挙げてみよう。例えば「伊藤博文」の項では、一般的にはあまり記載されない、並外れた女好き、そして芸者好きが紹介されているほか、「吉田茂」の項には、紙の百科事典では掲載量が限られるがWikipediaではその制限がないため、披露したユーモアの事例が多数紹介されている。

掲載されている記事の内容に質の優劣はあれ、とにかくその情報量は莫大だ。これは誰でも記事を執筆したり修正したりできるというWikiのシステム上の特徴によってもたらされたものだ。どれほどの専門家と編集者が集まった百科事典でも、その編纂に携われる者は限られるため、このような情報の量は決して手に入らないだろう。まさに、Wikiは複数人の知恵の集合である「集合知」をインターネット上で実現して成功させたシステムといえる。

一方で、Wikiのシステムは情報の信憑性という点ではまだまだ問題が多い。前述のように明らかに間違った情報や、問題があると思われる情報は削除されるが、ボランティアによるこうしたチェックは、情報が多いからこそ完全に行き渡ることは難しい。こうしたことから、アメリカの大学ではWikipediaの内容をリポートに加えた場合、受理しないという方針を出している所が多い。日本においても、Wikipediaの出典や引用を認めないケースが増加している。

いずれにせよ、こうした成り立ちをきちんと理解した上でWikiを見れば、興味深く、かつ有益に利用することができる。ある調べ物をする際に、Wikipediaの記載を出発点として、その真贋を確かめるように他の資料を当たっていくような方法であれば有用だろう。Wikipedia日本語版の記事数は、いまだ英語版の5分の1にすぎない。今後さらに、その情報の幅と深みを増していき、万人の貴重な情報ソースとなっていくことだろう。

また、Wikiを使ったサービスはもちろんWikipediaだけではない。不特定多数の人が1つの事例について情報を集められるため、いわゆる「まとめサイト」の作成に多く使われている。そして「SNS(Social Networking Service)」が日本で急速に普及したように、Wiki自体も情報ソースとしてだけでなく、今後はコミュニケーションツールや個人ツールなどさまざまな形で広まっていくことが期待される。

(掲載:2009年5月)

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