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なぜ国際会計基準へ
対応が必要なのか

EUを中心に100カ国以上で適用・採用が検討されている国際会計基準。日本の会計基準を国際会計基準に近づける「コンバージェンス(差異縮小)」プロジェクトが進行中だが、金融庁は2012年をめどに国際会計基準を強制適用するかを判断する方針を示した。国際会計基準とは何か、なぜ対応しなければならないのか、会計の現場ではどのような影響が出るのかを考える。

世界共通の会計のモノサシ
国際会計基準

国際会計基準(International Financial Reporting Standards)は、2005年EUにおける域内上場企業に対し強制適用されて拡大、2011年には韓国やインドが強制適用するなど100カ国以上が採用あるいは適用を検討中だ。先進国のうち、日本と米国のみが対応時期を明確にしていなかったが、米国は2014年からは順次適用を義務付ける方向性を打ち出した。

当初、日本は国際会計基準と日本基準とのコンバージェンスを行ってきたが、2009年1月、金融庁が2010年3月期からの任意適用を認める方針を明らかにし、2012年には強制適用の判断を行う。強制適用になった場合は、最短で2015年からのスタートが予想されている。

会計基準は企業の業績を評価するモノサシであり、投資家はそのモノサシで各企業の業績を比較して投資の判断を下す。そもそも会計基準はその国独自のモノサシであればよかったのだが、グローバル化が進み国境を超えて企業が活動するようになったため、国ごとにモノサシがバラバラだと企業の業績を比較検討できない。そこで、国を超えて企業を比較検討できる世界共通のモノサシ=国際会計基準の必要性が高まった。投資家の意思決定に役立つ情報を提供するという財務諸表の目的に適合するように開発されてきたのが国際会計基準だ。

金融庁が2010年3月期からの国際会計基準の任意適用を認めた背景には、既に世界で100カ国以上が採用を決めていること、またEUでは2009年からEU域内で証券を公募・上場する外国企業についても、国際会計基準またはそれと同等と認められる会計基準による連結財務諸表の作成を求めていることがある。さらに、国際会計基準と米国会計基準のコンバージェンスが活発化し、このままでは日本の会計基準が国際社会の中で孤立する恐れが出てきたことも、国際会計基準適用の圧力となっている。

国際会計基準と日本の会計基準は
どこが違うのか

国際会計基準と日本の会計基準の違いはいくつもあるが、最大の相違点は原則主義かルール主義かにある。原則主義とは、会計基準の中で原則的な会計処理のみ記述され、詳細なルールは設けないとする考え方で、自社の実態に応じて解釈し経理処理を行うため、企業の判断する余地が大きい。一方、日本や米国のルール主義は、細かな規則を積み上げて処理を行うため解釈の余地は少ないが、その全貌を把握するのは企業の経理担当者はもちろん会計専門家でも難しいと言われている。

さらに、国際会計基準では損益計算書よりも貸借対照表を重視する点も大きな違いだ。従来の損益計算書重視のアプローチは、当期の収益費用に属さない項目を資産負債として繰り延べるので、まず損益が決まり、次に貸借対照表が決まるという関係にある。一方、貸借対照表重視のアプローチは、貸借対照表における資産負債の価値を重視するため、貸借対照表によって損益が決まる。

例えば、企業が持つのれん代(ブランド、ノウハウ、商圏)などの無形資産の評価に違いがある。20年以内の償却が求められる日本では、のれん代を毎期費用として計上するため、毎年の利益はその分減少する。しかし、国際会計基準では、原則的にのれん代を費用として計上する必要がなく、利益が減少しない。その結果、日本では赤字決算でも、国際会計基準では黒字となることがある。基準次第で業績判断が変わってしまうのだ。

これは投資家に対しても大きなアピールとなる。国際会計基準の適用によって、M&Aの活発化に加えて、M&A後にのれん代の定期償却が必要ないため、海外の投資家拡大につながるうえ、資金調達コストの削減も可能になるというメリットがある。反対に、定期償却しないため、一時的に多額の損失が発生したり、自己資本が急減し財務が悪化する可能性や、保有株の株価動向など一時的な要因に利益が左右されるというデメリットもある。

財務経理の現場では
どのように取り組めばよいのか

国際会計基準の導入による影響は、決算時における会計基準の変更だけではない。財務数値や財務報告プロセスはもちろん、内部統制、情報システムなど広範囲に及ぶ。当面、国際会計基準を任意適用する会社はグローバルで資金調達を行っていたり、海外市場に上場している大企業が予想されるが、いずれ海外で事業を展開している中堅・中小企業に対しても適用の可能性が出てくると思われる。

グローバルにビジネスを展開する中堅・中小企業の経理部門も、国際会計基準を対岸の火事として傍観するのではなく、研究する必要があるだろう。では、現場ではどのように取り組んでいけばよいのだろうか。

まず、当然のことだが、財務経理担当者は国際会計基準の考えを正しく理解しなければならない。そして、国際会計基準は業務プロセスを横断して関係してくるので、データを一元的に統合管理できる仕組みを検討する必要がある。自社の業務プロセスを洗い直し、業務を標準化・効率化するERPの導入が現実的な解決策となるだろう。

時間的な余裕があるうちに、国際会計基準導入に向けたトレーニングを行っていくことが大切になる。

(掲載:2009年9月)

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