ビジネスお役立ち情報 > なるほど!経理・給与

なるほど!経理・給与なるほど!経理・給与 経理・給与など、日常業務に役立つ知識やニュースを紹介します

なるほど!経理・給与 のトップへ

改正労働基準法によって
何が変わるのか?

「改正労働基準法(労働基準法の一部を改正する法律)」が2010年4月1日から施行された。その背景には、30歳代という子育て世代の男性の長時間労働の割合が高いことがある。この改正によって何が変わり、どのように対応したらよいのかを考える。

改正労働基準法施行の
背景とは

労働基準法で、法定労働時間は1週40時間、1日8時間と定められている。ただし、事業所の規模と業種(従業員9人以下の商業、映画・演劇業、保健衛生業、接客娯楽業)によっては、1週44時間が認められている。ところが、総務省の「労働力調査」(平成20年)によれば、週60時間以上労働する労働者の割合は全体で10%、特に30歳代の子育て世代の男性のうち、週60時間以上労働する労働者の割合は20%となっており、長時間にわたり労働する労働者の割合が高くなっている。

こうした状態を続けると、労働者が健康を保持しながら労働以外の生活の時間を確保することが難しくなり、ワークライフバランス(仕事と生活の調和)が崩れてしまう。そこで、長時間労働を抑制し、労働者の健康を確保するとともにワークライフバランスのとれた社会を実現することを目的として、改正労働基準法が2010年4月1日から施行された。

改正労働基準法の
ポイントは

今回施行された改正労働基準法では、時間外労働は本来臨時的なものとして必要最小限になるよう努力すると同時に、限度時間を超える時間外労働に対する法定割増賃金率の引き上げなどを求めている。ただし、法定割増賃金率の引き上げについては「資本金の額または出資の総額」と「常時使用する労働者の数」で以下の表に該当する中小企業は当分の間適用が猶予される。

業種

資本金の額

常時使用する労働者数

小売業

5,000万円以下

50人以下

サービス業

5,000万円以下

100人以下

卸売業

1億円以下

100人以下

そのほかの業種

3億円以下

300人以下


改正労働基準法のポイントは、次の3点となる。

  1. 使用者は限度時間を超えて働かせる一定の期間(1日を超え3カ月以内の期間、1年間)ごとに法定割増賃金率を定める。法定労働時間を超える時間外労働(法定時間外労働)に対しては、時間外労働45時間まで25%、45〜60時間は25%以上の努力義務を負うことになる。また、1カ月に60時間を超える法定時間外労働については法定割増賃金率50%に引き上げなければならない。なお、1カ月60時間の法定時間外労働の算定には、法定休日(例えば日曜日)に行った労働は含まれまれないが、それ以外の休日(例えば土曜日)に行った法定時間外労働は含まれる。
  2. 1カ月60時間を超える法定時間外労働を行った労働者の健康を確保するため、引き上げ分の割増賃金の代わりに有給の休暇(代替休暇)を付与できる。まとまった単位で与えることによって、労働者の休息の機会を確保する観点から、1日または半日のいずれかを与えなければならない。また、法定時間外労働が1カ月60時間を超えた月の末日の翌日から2カ月間以内の期間で与えなければならない。ただし、代替休暇制度導入にあたっては、過半数の組合、それがない場合は過半数の社員と代表者との間で労使協定を結ぶことが必要となる。
  3. 過半数組合、それがない場合は過半数代表者との間で労使協定を締結すれば、年に5日を限度として時間単位で年次有給休暇を与えることができる(時間単位年休)。その際、時間単位年休の対象労働者の範囲、時間単位年休の日数、時間単位年休1日の時間数、1時間以外の時間を単位とする場合はその時間数を決めなければならない。

就業規則だけではなく
業務の見直しなども必要

時間外手当の割増分が50%になると人件費に対するインパクトがかなり大きくなるため、就業規則の変更だけですませることは難しくなる。いつも業務に追われて忙しい社員と、そうでない社員の業務バランスを平準化させないと、人件費増に苦しむことになる。月間60時間を超える残業分に割増を適用して算定すると増額分が分かるので、シミュレーションをするとよいだろう。

また、コンプライアンスの観点からも注意が必要となる。時間外手当の引き上げにより、月間の総労働時間の管理が重要になるが、管理者によっては残業の多い社員に対し平日残業から休日出勤への移行を暗に強要するおそれが出てくるからだ。そうなると、休日の減った社員の心身ともに労働安全衛生に関するリスクを増大させるだけでなく、労働基準監督署の指導の対象となる。

さらに、時間単位年休の導入によってきめ細かな労務管理が必要となる。今まで、有給休暇は基本的に1日単位だった(会社によって特例で半日単位もあるが)。もし、時間単位での導入がなされた場合、年間最大5日分と定められているが、8時間×5日=40時間がバラバラに利用できるようになるため、社員間の業務の連携やそれをサポートする仕組みも必要となる。

一般的に優秀な社員ほど業務が集中する傾向はあるが、そのままではいつまでたってもそうした社員の負担を軽減できない。優秀な社員をつぶさないためにも、業務の平準化と社員の人材育成が求められる。社員全体の生産性向上の観点からも、全員の能力やスキルを平均的に引き上げることが必要となる。つまり、改正労働基準法の施行をきっかけにして、業務や人事戦略の見直しも必要になるだろう。

(掲載:2010年5月)

関連リンク

企業のITセキュリティ講座