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国際会計基準は中堅・中小企業に
どんな影響を及ぼすのか?

上場企業を対象にした国際会計基準(IFRS:International Financial Reporting Standards)の強制適用が2012年に検討される。2009年7月には中堅・中小企業を対象とした「中小企業版IFRS(IFRS for SMEs)」が公表された。今まで対岸の火事と傍観していた中堅・中小企業も、その影響を受ける可能性が出てきた。そこで、中堅・中小企業は国際会計基準にどのように対応したらよいかを考える。

国際会計基準と
中堅・中小企業会計指針

金融庁は2012年に国際会計基準(IFRS)の一斉適用あるいは段階適用かを判断し、2015年または2016年の適用を予定している。ただ、IFRSは上場企業が対象であり、圧倒的多数の中堅・中小企業にとっては対岸の火事だった。しかし、2009年7月、中堅・中小企業向けの「中小企業版IFRS」である「IFRS for SMEs(Small and MEdium-sized entities)」が公表されると、中堅・中小企業の国際会計基準への関心が高まってきた。

その背景には、非上場の中堅・中小企業でも、銀行融資やベンチャーキャピタルから外部資本参加を受ける場合などにIFRSが関係する可能性があることがあげられる。現在、中堅・中小企業のほとんどは税務基準で決算書を作成しており、上場企業を対象とした会計基準に準拠していない。

しかし出資する側は、出資金が将来確実に返済されるかを予測するためには、税務基準で作られた決算書では不十分なため、独自に上場企業に準じた決算書に修正することもある。つまり、融資する側で上場企業の会計基準やファイナンスの考え方に基づいて決算書が修正され、それに沿って融資条件などが判断されている場合もある。

従って、IFRSが適用され浸透すると、融資する側もIFRSの考え方に基づいて決算書を修正したうえで融資判断する可能性が高まることが予想される。また、非上場企業であっても上場企業の子会社などでは、税務基準の「損益計算書」ではなくIFRS基準の「包括利益計算書」が必要になることも考えられる。

さらに、中堅・中小企業が計算書類の作成にあたり、拠ることが望ましい会計処理や注記などを示した「中小企業の会計に関する指針」もIFRSに対応するようになると、中堅・中小企業は「中小企業版IFRS」に対応する必要が出てくることも予想される。

中堅・中小企業を対象とした
中小企業版IFRSとは

2009年7月、IFRSから複雑な処理を減らして簡略化した中小企業版IFRS、IFRS for SMEsが公表された。中小企業版IFRSはIFRSとは独立した別の基準になり、完全版IFRSに比べてかなりコンパクトになっている。IFRSの原則の多くが簡素化され、中堅・中小企業に関係しない事項は省略され、開示要求も大きく減免されている。

まず、中堅・中小企業に関連しない3項目(1株当たり利益、中間財務報告、セグメント報告)は削除された。また、無形資産の処理や償却についても完全版IFRSと異なる。上場企業は規模の大小にかかわらず、中小企業版IFRSを採用することはできない。

例えば、完全版IFRSと中小企業版IFRSでは、無形資産の全額費用処理に違いがある。完全版IFRSでは研究開発費のうち、要件を満たしたものは無形資産として計上しなければならないため負担が大きいが、中小企業版IFRSでは日本の会計基準と同様になり負担は減った。

また、無形資産の償却についても違いがある。完全版IFRSでは無形資産を償却期間があるものとないものに分け、償却期間があるものについては償却を行うが、中小企業版IFRSではすべての無形資産を償却できる(償却期間が不明な場合は10年で償却を行う)。

さらに、のれんの償却については日本の基準と同じになった。完全版IFRSではのれん代は償却しないが、中小企業版IFRSではすべての無形資産を償却できるので、のれん代も償却できる。いずれも、日本の会計基準に準じていることが分かる。

IFRSと中小企業版IFRSの違い

内容

中堅・中小企業に関連しない項目の削除

1株当たりの利益、中間財務報告、セグメント報告

無形資産の扱い

研究開発費は無形資産として計上する必要なし
全ての無形資産を償却できる
のれん代を償却できる

中堅・中小企業における
IFRS適用の課題

中小企業版IFRSは完全版IFRSに比べて負担は小さくなっているものの、依然としてハードルは高い。ただ、上場企業の連結対象となっている子会社は、中小企業版IFRSへの対応が必要になりそうだ。また、資本市場への上場を準備中の中堅・中小企業も、透明性向上の観点から中小企業版IFRSが必要になることも予想される。

しかし、現時点ではIFRSの導入で利益を得られるのは、グローバルな事業展開をしている企業が中心だ。圧倒的多数の中堅・中小企業は、そのメリットを享受できない。IFRSに対応することで、財務諸表の信頼性が高まり企業経営の効率化ができるという側面はある。その結果国内における直接金融だけでなく国際市場での資金調達も可能になるなどのメリットが期待できるが、対象となる中堅・中小企業は少なく、労多くしてメリットがないのが実際のところだ。

ただ、一国一会計基準へという流れ、さらにIFRSを簡略化した「中小企業会計指針」が公表されると、中堅・中小企業への影響が出てくるので、今後のIFRSの動向を注意深く守る必要がありそうだ。

(掲載:2010年7月)

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