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失敗しないための
従業員の退職に関する事務手続き

自己都合による退職や定年、解雇など、さまざまな理由で従業員と会社との雇用関係は終了する。中でも使用者側からの契約解除による解雇は、従業員の生活基盤である収入が途絶えるため、トラブルに発展する場合もある。そこで、退職や解雇に伴う社会保険や雇用保険の手続きで失敗しないためのポイントを考える。

さまざまな
退職理由と対応

従業員が退職する理由は、疾病や死亡、結婚、出産、育児、転職などの自己都合による退職、定年や契約満了による退職、早期退職優遇制度による退職や解雇(普通解雇、整理解雇、懲戒解雇)などさまざまだ。そのため、担当者が行う手続きは退職理由や従業員のその後の進路によっても異なるので注意が必要だ。

手続きを誤ると大きなトラブルにつながりかねないので、退職に関する手続きは慎重さが求められる。しかも、退職手続きに必要となる書類は多いので、もれや抜けがないようしっかり確認しなければならない。また退職時には、給料の前借りや仮払金、交通費などの精算、会社支給品の回収なども忘れないようにしたい。

退職の際に必要となる手続きと書類

手続き

必要な書類

年金事務所、健康保険組合、ハローワークに提出

健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届(退職日の翌日から5日以内)、雇用保険被保険者資格喪失届、雇用保険被保険者離職証明書(退職日の翌日から10日以内)、任意継続被保険者資格取得申請書(従業員が希望する場合。退職日の翌日から20日以内)

税務署、市区町村に提出

給与所得の源泉徴収票(給与支給日の翌月10日まで)、退職所得の源泉徴収票(退職金支給日の翌月10日まで)、給与所得者の退職所得受給に関する申告書(退職日の翌月10日まで)、給与支払報告特別徴収に関する給与所得者異動届(退職日の翌月10日まで)、給与支払報告に係る給与所得異動届(4月15日まで)

従業員に渡す

雇用保険被保険者離職証明書(従業員が希望する場合)、給与所得の源泉徴収票(翌年1月末まで)、退職金の源泉徴収票(退職日から1カ月以内)、年金手帳

従業員から回収

退職届、健康保険被保険者証、身分証明書や社章など、定期券、会社の支給品(PCや携帯電話)


退職すると健康保険や厚生年金の資格がなくなるので、資格喪失日から5日以内に「健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届」を提出する。その際、従業員から回収した健康保険被保険者証も添付する。退職が月末の場合、資格喪失日は退職の翌日になるので、翌月分の健康保険料・厚生年金保険料を納付する必要がある(資格を取得した日から喪失した月の前月分までを納付)。ただ、退職時に限って前月分の保険料に加えて当月分の保険料を給与から控除することができる。

退職の日まで継続して2カ月以上被保険者であった人は、退職後20日以内に申請すると2年間は引き続き任意継続被保険者として健康保険に加入できる。この取り扱いを希望する従業員には、退職前から書類を準備する必要がある。

雇用保険や
住民税などの手続き

退職によって労働保険の資格もなくなるので、資格喪失日から10日以内に「雇用保険被保険者資格喪失届」を所轄のハローワークに提出する。その際、従業員が「雇用保険被保険者離職証明書」の発行を希望する場合は「雇用保険被保険者資格喪失届」と同時に提出する。ただし、「雇用保険被保険者離職証明書」の発行を希望しない場合は省略できるが、後日離職証明書交付の希望があった場合は速やかに発行しなければならない。

「雇用保険被保険者資格喪失届」には「被保険者でなくなったことの原因」を記載する。その理由によって失業給付の額や給付制限の有無に影響するので、担当者には特段の注意が必要となる。例えば、自己都合による退職と会社による解雇(普通解雇、整理解雇、懲戒解雇)では、失業給付の開始時期が異なってくる。迅速な失業給付を当てにしていた従業員にとって、給付が遅れると生活に影響が出てしまい、大きなトラブルに発展しかねない。

なお、失業給付は原則として離職日以前2年間に雇用保険の被保険者期間が通算12カ月以上必要だが、雇用保険法改正によって2009年3月31日以降に離職した人で「期間の定めのある労働契約が更新されなかったこと、そのほかのやむを得ない理由で離職した人(特定理由離職者)」に対しては、離職日以前1年間に被保険期間が6カ月以上あれば基本手当が支給される。また、基本手当の所定給付日数についても要件を満たせば、「特定受給資格者」と同様になった(離職日が2009年3月31日〜2012年3月31日までの人が対象)。

会社が住民税を天引き(特別徴収)していた従業員が退職した場合、「給与支払報告に係る給与所得異動届」を4月15日までに従業員が居住する市区町村に提出する。また住民税の納付は、社員の退職時期によって手続きが異なるので、退職者の希望に沿って手続きを進めることが必要となる。

退職に伴う住民税の手続き

退職日

住民税の徴収方法

1月1日〜4月30日

最後の給与や退職金支給額が未徴収の税額を超えるときは、特別徴収義務者が給与あるいは退職金から一括徴収し翌月10日までに納付する

5月1日〜5月31日

通常どおり最後の1カ月分を徴収して会社が納付する(特別徴収は6月から翌年の5月まで)

6月1日〜12月31日
(右のいずれかを適用する)

退職者から申し出がない場合は、普通徴収に変更する。「特別徴収に係る給与所得者異動届」に所定の事項を記入し退職月の翌月10日までに各市区町村に提出
退職者から申し出があった場合は、一括徴収する
退職者から申し出があった場合は、特別徴収を継続できる。「特別徴収に係る給与所得者異動届」に所定の事項を記入し新しい勤務先に送付する

退職金の
支給手続き

就業規則で退職金規程を設けてある場合は、規定に沿って退職金を支払う。退職金制度を採用するかどうかは会社の裁量であり、規程がない場合は退職金を支払う必要はない。退職金規程を設けている場合は、退職者に原則として通貨で本人に直接退職金を支払わなければならない(金融機関の支払小切手や支払保証小切手、郵便為替での支払いも可)。

退職金は老後の生活保障という意味から税制上大変優遇されているが、退職金を年金形式で受け取る場合は退職所得とはならず雑所得として課税されるので注意が必要だ。退職金は分離課税(給与や不動産などの所得と合算しないで課税する)であり、退職所得控除(勤続年数に応じた退職所得控除金額)を行った課税対象額(退職所得控除額を控除した額のさらに半分の額)に課税されるので、所得税や住民税が大幅に軽減される。

退職金支給の際に源泉徴収した所得税は、給与から徴収した源泉所得税と同様に徴収した月の翌月10日までに納付する。そして「退職所得の源泉徴収票」を作成して退職者に交付する。税務署への提出期限は退職後1カ月以内だが、1年分をまとめて翌年1月31日までに提出しても問題はない。なお「退職所得の源泉徴収票」は、退職した年の1月1日現在の退職者の住所地の市区町村に退職後1カ月以内に提出する。

退職は社員の生活を左右する重要なイベントなので、担当者は慎重かつ迅速に手続きを行うことが求められる。

(掲載:2010年9月)

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