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裁量労働制と
みなし労働時間について考える

仕事のやり方や進め方を個人の裁量に任せる「裁量労働制」は、労働者が自由に働くことができ、会社は時間外手当を軽減できるというメリットがある。労働時間と業績が必ずしも連動しない職種においてこの制度が採用されることが多いが、業務内容に制限があるなど導入に際してはいくつかの注意が必要だ。

裁量労働制とは

システムエンジニアや研究職、デザイナーや編集者などは、1つのタスクが終了するまで労働するなど通常の法定労働時間(1日8時間労働)で働くスタイルになじまないことも多い。そうした業務に従事している労働者からは、もっと自由に働きたいというニーズもある。また、通常の勤務形態であれば法定労働時間を超えた場合には割増賃金を支払う必要があるが、必ずしも業績と連動しないため会社の利益を圧迫する要因の1つにもなる。

そこで「仕事のやり方、進め方を個人の裁量に任せる」という裁量労働制が導入され、法定労働時間の制約にとらわれない働き方が導入された。労働者にとっては、会社から仕事を進める手段について細かい指示を受けたりすることなく、自由に働けるというメリットがある。一方、会社にとっては時間外手当を軽減できるというメリットがある。

裁量労働制は一日の労働時間を労働者に一任するが、「この仕事なら通常この程度の時間がかかるはずだ」という「みなし労働時間」に基づいた働き方となる。つまり、裁量労働制は労働基準法の定めるみなし労働時間制であり、労働者は実際の労働時間とは関係なく、労使であらかじめ定めた時間働いたものとみなされる。

例えば、みなし労働時間が1日8時間であれば、1日に10時間働いても「8時間の労働」とみなされるので、2時間分の時間外手当は支給されない。ただし、深夜10時以降翌日の朝5時までの労働や、法定休日労働については、法律で定められた割増賃金を支払う必要がある。なお、裁量労働制は仕事の具体的な進め方や時間配分について委ねることなので、出勤日に休むことまで認める必要はなく、その場合は通常の欠勤扱いとなる。

裁量労働制の適用業務

裁量労働制は、業務遂行の手段や方法、時間配分などを労働者の裁量に大幅に委ねることになるので、労働時間の裁量の余地が少ない一般事務などには適用されない。裁量労働制が適用される業務は、自ら労働時間をコントロールできる業務に限定されており、厚生労働省令および厚生労働大臣告示によって定められていて、大きく分けて専門業務型と企画業務型の2種類がある。

裁量労働制

適用される業務

専門業務型裁量労働制

新製品・新技術の研究開発などの業務、情報処理システムの分析または設計の業務、記事の取材または編集の業務、デザイナーの業務、プロデューサーまたはディレクターの業務、コピーライターの業務、システムコンサルタントの業務、インテリアコーディネーターの業務、ゲーム用ソフトウェアの創作の業務、証券アナリストの業務、金融工学などの知識を用いて行う金融商品の開発の業務、大学における教授研究の業務、公認会計士の業務、弁護士の業務、建築士(一級建築士、二級建築士および木造建築士)の業務、不動産鑑定士の業務、弁理士の業務、税理士の業務、中小企業診断士の業

企画業務型裁量労働制

経営企画担当部署、人事・労務担当部署、財務・経理担当部署、広報担当部署、営業企画担当部署、生産企画担当部署


ただ、適用業務や部署であっても、出社や退社の時間が制限されていたり、時間が労働者の自由にならない場合には適用できないので注意が必要だ。例えば、デザインの仕事をしているものの定時出勤、定時退社が必要な場合や、編集の仕事でも事務作業があって時間が自由にならない場合などには、専門業務型裁量労働制を適用することはできない。

どのように導入したらよいのか

導入に際しては労使が合意し、原則として次の事項を労使協定により定めたうえで所轄労働基準監督署長に届け出ることが必要となる。

  1. 裁量労働制の対象となる業務
  2. その業務を行うのに必要とされる時間(みなし労働時間)
  3. 業務の進め方および時間配分の決定などに関し、具体的な指示をしない旨の記載
  4. 社員の健康と福祉を確保するための措置の具体的内容
  5. 協定の有効期間
  6. 企画型裁量労働制は本人の同意を得ること、同意しないとしても不利益な取り扱いをしないこと
  7. 4、5、6の記録は協定の有効期間およびその期間満了後3年間保存

なお、手続きに不備があった場合は実際の労働時間に基づいた時間外手当の支払いが求められるので注意が必要だ。

専門業務型裁量労働制は労使協定の締結で導入できるが、企画業務型裁量労働制の導入には労使委員会で5分の4の賛成が必要となる。ちなみに労使委員会とは、労働者による労働時間や賃金などの労働条件について審議するための機関だ。労使委員会がない場合は、まず労使委員会を結成してもらい、その後に会社と話し合い同意を得る必要がある。また、決議によって企画業務型裁量労働制を導入した場合、定期的に運用の状態を管轄の労働基準監督署に報告しなければならない。

裁量労働制は労働者のイニシアチブで仕事を進められるので、労働者の自由度が高まりモチベーションが上がるというメリットがある半面、過剰労働により健康と福祉を損ねる危険性もあるため、その防止策も大切になる。会社は月や年間を通しての労働者の労働時間の確認が必要で、過剰な場合はそれを防止しなければならない。

裁量労働制は、指示待ち社員ばかりではうまく機能しないので、導入に際しては社員の能力と資質を勘案することが必要になってくる。これから裁量労働制導入の検討をしたいという場合には、まずフレックスタイム制を導入してどのような働き方になるのか見てみるのも一案だ。

(掲載:2011年4月)

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