2015年 8月 1日公開

仕事効率を上げるパソコン手帖

【アーカイブ記事】以下の内容は公開日時点のものです。
最新の情報とは異なる可能性がありますのでご注意ください。

モバイルルーターの選び方

テキスト: 芝田隆広

今やインターネットの利用はビジネスに欠かせない。外出しているときも、いつでもどこでもインターネットへの接続手段は確保しておきたい。そんなときに便利なアイテムが「モバイルルーター」だ。今回はモバイルルーターの選び方を解説していく。

外出先で便利! どこでもインターネットが利用可能なモバイルルーター

インターネットは今やビジネスをするうえで欠かせない。外出先でメールを読み書きしたり調べものをしたりする必要性に駆られることは少なくない。「外出先に普段オフィスなどで使っているパソコンを持ち出して使う」という場合に困るのが、通信手段の確保だ。端末側にインターネット接続機能があればいいが、無線LANにしか対応していない機種の場合はそのままではインターネット接続できない。

最近は有線でインターネットを使えるホテルや無線LANが使える飲食店なども増えてきているが、ネットワーク環境が完備されていない場所も多く、「いつでもどこでもインターネットへの接続手段を確保できる」というところまではいかない。そんな場面で役に立つのが、今回紹介する「モバイルルーター」だ。

NECの「AtermMR03LN」

モバイルルーターは、さまざまな機器をインターネットに接続できるようにする「中継ポイント」の役割を果たす機器。写真はNECの「AtermMR03LN」。

モバイルルーターの役割は、大まかに言ってパソコンやタブレットなどの端末をインターネットにつなぐための「中継ポイント」と考えればいいだろう。現在市販されているモバイルルーターでは、まず「WiMAX2+」と「4G/LTE」といった無線のデータ通信回線を利用して、モバイルルーター側をインターネットに接続する。

次にパソコンやタブレットなど、インターネットに接続したい機器をモバイルルーターに無線LAN(あるいはUSBケーブル)を使って接続する。パソコンやタブレットは、モバイルルーターを経由して、モバイルルーターが接続しているインターネット回線を利用できるようになるのだ。

モバイルルーターには複数の機器を接続できる機能がある。パソコン、タブレットだけでなく、Kindleなどの電子書籍端末やiPod touchのような音楽プレーヤー、携帯ゲーム機など、さまざまな機器を同時にインターネットにつなげるといったことが可能になるわけだ。

モバイルルーターのしくみを表す図

モバイルルーターを使えば、WiMAXや4G/LTEに対応していないノートパソコンやタブレットなどの端末でもインターネットに接続できるようになる。

目次へ戻る

モバイルルーターのスペックの読み方・選び方

現在販売されているモバイルルーターについては、使い方はどの機種でも機能はほとんど変わらない。モバイルルーターをインターネットに接続したら、あとは端末側でモバイルルーターに無線LANで接続すればいい。それではモバイルルーターを選ぶときはどのような点に留意すればよいのだろうか。気を付けるべき点を以下に記していく。

回線種別

モバイルルーターからインターネットに接続するときの回線の種類を確認しよう。現在のモバイルルーターで使われているのは、主にWiMAX2+と4G/LTEだ。どちらも無線で高速インターネット通信をするための規格だ。

WiMAX2+は、UQコミュニケーションズの無線ネットワーク回線で、この回線を使った通信サービスを各プロバイダーが提供している。また4G/LTEについてはワイモバイルなどが提供している。

それぞれの回線速度、速度制限などについては以下の表にまとめるので参考にしてもらいたい。

<主なモバイルデータ通信の比較>

会社名UQコミュニケーションズワイモバイルNTTドコモソフトバンク
サービス名WiMAX2+Y!MobileXi(クロッシィ)データ通信
速度(下り最大)220Mbps110Mbps150Mbps165Mbps
料金(月額)3696円~
(UQ Flat)
3696円4700円3696円
(4G/LTEデータし放題フラット)
通信容量制限月間容量無制限、ただし混雑回避のため速度制限あり(注)7GB7GB7GB
通信制限時の速度128kbps(詳細は注を参照のこと)128kbps128kbps128kbps

(注)「ノンリミットモード」「ハイスピードモード」は月間容量無制限。「ハイスピードプラスエリアモード」の場合は、「WiMAX2+」「au 4G LTE」の通信量合計が7GB以上となった場合、128kbpsに制限される。このほか混雑回避のため3日間3GB以上利用時は速度制限あり。

通信エリア

電波の入りやすさ、つながりやすさを確認しよう。電波の入りやすさについてはWiMAX2+より4G/LTEの方が若干有利だ。WiMAX2+の方が障害物や移動中の通信に弱い傾向がある。地下や室内、移動中の利用が多いのであれば4G/LTEを使った製品の方がいいだろう。ただ最近はWiMAX2+も接続性は改善されつつあるので、通常の利用では不便を感じることは少なくなってきている。

速度制限

サービスによっては月間の通信量が一定の容量に達すると、速度が遅くなるという速度制限が課せられている。WiMAX2+の「ノンリミットモード」「ハイスピードモード」では月間速度制限はない。「ハイスピードプラスエリアモード」での「WiMAX2+」および「au 4G LTE」の通信量合計が7GB以上となった場合、128kbpsに制限される。「UQ Flatツープラス ギガ放題」では、混雑回避のため3日間の通信量が3GBを超えたときに速度制限が課せられるが、大量のダウンロードを行わない限り、3日間で3GB使い切ることはないだろう。ワイモバイルやNTTドコモ、au、ソフトバンクといったキャリア系のサービスでは月間通信量が7GBを超えると速度が128kbps程度に制限されてしまう。頻繁にモバイルルーターを使う人は、速度制限が少ないWiMAX2+を選ぶといいだろう。

料金

料金を見るときは、初期費用(端末の価格など)、月額利用料をトータルで考えるようにしよう。月額利用料については、データの利用量に応じてさまざまなプランが用意されている。例えば動画などを利用することが多い人はデータ利用量が増えるので、データ使い放題プランなどのあるサービスを選びたいところだ。またプロバイダーのキャンペーンによって、端末料金無料+キャッシュバックなどを行っているところもある。

バッテリーの持続時間

通信を行った場合のバッテリーの持ち。これは長ければ長いほど望ましいだろう。一般的にバッテリーの持ちはバッテリー容量に比例する。ただ、バッテリー容量が大きければ大きいほど、重量が重くなりがちなのでその点はバランスを考えて製品選びを行おう。

目次へ戻る

どっちを選ぶ? モバイルルーターとテザリング

ここまでモバイルルーターの選び方を紹介してきたが、出先で通信を行いたい場合はもう一つ選択肢がある。それはスマートフォンの「テザリング」だ。

テザリングとは要するに「スマートフォンをモバイルルーターとして使う機能」のことだ。テザリング機能をオンにすると、スマートフォンのインターネット接続が共有される。次にパソコンやタブレットなどの端末から、テザリングがオンになったスマートフォンに無線LANやUSBケーブルなどで接続。するとスマートフォンの回線を使って、つないだ端末からインターネットを利用できるようになる。モバイルルーターの仕組みと基本的には全く一緒だ。

Androidスマートフォンのテザリング設定画面

最近のスマートフォンは、モバイルルーターとして使える「テザリング」に対応した機種が多い。画面はAndroid 4.4スマートフォンのテザリング設定画面。機種によって異なるが、この製品の場合は、「設定」の「無線とネットワーク」の「その他」で「テザリングとポータブルアクセス」で「ポータブルWi-Fiアクセスポイント」にチェックを入れると、スマートフォンが無線LANルーターとして使えるようになる。

スマートフォンをモバイルルーターとして使えるのであれば、荷物を増やさないで済むのでお手軽だ。しかしテザリングには以下のようなメリット・デメリットがある。

テザリングのメリット

1. 既にスマートフォンを携帯しているユーザーなら荷物を増やさないで済む

スマートフォン+モバイルルーターだと荷物が2個となるが、スマートフォンだけなら1個だけ。その分重量も軽くて済む。

2. 通信料金の節約になる

スマートフォンとモバイルルーターの2台持ちだと、それぞれについて通信の契約をしなくてはならないので費用もかさみ、また管理も面倒だが、テザリングでは一台で済む。

テザリングのデメリット

1. スマートフォンの電池の減りが早くなる

スマートフォンを通じて通信を行うためスマートフォンの電池の減りが早くなる。もちろんモバイルルーターを使えば、モバイルルーターの電池が減るが、スマートフォンの電池が切れると電話もできなくなってしまうのでよりダメージが大きい。

2. テザリングを行うのに別途オプション料金が必要になる場合がある

契約しているキャリア・料金プランによって追加料金が必要となる場合がある。追加料金は契約しているキャリアやプランによって細かく異なるので、それぞれのキャリアのWebサイトで確認してほしい。

NTTドコモ テザリング

au テザリングオプション

ソフトバンク テザリングオプション

3. スマートフォンに速度制限が適用されやすくなる

スマートフォンの4G/LTEなどの高速通信は、通信量が一定量に達すると速度制限が行われる。多くのキャリアで1カ月の通信量が7GBを超えると、その後の通信速度が128kbpsなどに制限されてしまう。この速度だと、WebブラウジングやTwitter程度の読み込みでもかなり遅くなる。モバイルルーターでも利用する回線種別によっては通信制限はあるが、通常はスマートフォンの方が使用頻度が高いので、スマートフォン側に速度制限がかかるとより不便になってしまう。

上記のことを考え合わせると、スマートフォンのテザリングは「手軽だが日常的に使うと速度やバッテリー面でのデメリットが大きい」ということになる。「まれに外出先でちょっとだけパソコンなどで通信を行う」といった人はテザリングでも賄えるだろう。

逆に外出先でも頻繁に使う人であればモバイルルーターを選択すれば、バッテリー面や速度面でスマートフォンに影響を与えることなく、快適に通信を行いやすい。自分の用途や使用頻度を考えながら、最適な選択をしてほしい。

目次へ戻る