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シリーズ記事
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1 基準を意味するデータムを知ろう
前回は、設計者として、知っておきたい計測の基礎知識を理解した。
第4回では、幾何公差の基準となるデータムを知ろう。データムは英語で“Datum”と書き、和訳は「基準」と辞書に載っている。多くの設計者が、このデータムの記入法を理解せず、間違って図面を描いている。正しいデータムの使い方と記入法を紹介しよう。
データムとは
データムとは、「関連形体に幾何公差を指示するときに、その公差域を規制するために設定した理論的に正確な幾何学的基準。例えば、この基準が点、直線、軸直線、平面、及び中心平面の場合には、それぞれデータム点、データム直線、データム平面、データム中心平面と呼ぶ。」とJISで規定されている。
データムの目的は、図面に関わる担当者の視点で異なる。
- 設計者の視点 ・・・ 取り付け基準、位置決め基準、機能する基準(軸受穴や摺動面など)
- 加工者の視点 ・・・ 加工基準、固定基準
- 計測者の視点 ・・・ 計測基準、固定基準
データムには、一般的に次の二つがある(図1)。
◇データム形体
データム形体とは、データムを設定するために用いる対象物の実際の形体(部品の表面や穴など)のことをいう。
◇実用データム形体
実用データム形体とは、データム形体に接して、データムの設定を行う場合に用いる十分に精密な形状を持つ実際の表面(定盤、軸受、マンドレルなど)をいう。
つまり、データムとして指示した部品の面は、完全な形状ではないので、より精密な面を持つ定盤やゲージ、マンドレル(注)などを実用データムとして接触させるのである。
(注)マンドレルとは、芯金(しんがね)とも呼ばれ、寸法、幾何特性共に高精度な円筒軸をいう。
図1
データムの種類
データム記号の図面指示
データム記号は、三角記号と四角い枠を結んで表示し、枠内のアルファベットは図面の向きに合わせる(図2)。
三角記号は、黒く塗りつぶしたものと塗りつぶさないもののどちらを使っても構わないが、視認性が良いという理由で黒く塗りつぶした方の使用をお勧めする。
図2
データム記号と向き
データム記号の配置とその解釈
データムを図中に記入する際、配置する場所によって解釈が異なるため、注意が必要である。多くの企業の図面で誤って指示されているのが現状である。
1. サイズ形体へのデータム指示
サイズ形体とは、寸法のばらつきによって大きさが変化する形体をいう。
データムを中心軸に指示する場合、寸法線の延長線上に記載する。データム記号は次の例のうちの一つを使用して、図面に記入することができる(図3)。
図3
中心軸にデータムを指示する場合の記入例
データムを中心平面に指示する場合、寸法線の延長線上に記載する。データム記号は次の例のうちの一つを使用して、図面に記入することができる(図4)。
図4
中心平面にデータムを指示する場合の記入例
2. 表面形体へのデータム指示
表面形体とは、寸法とは無関係な形体をいう。
データムを表面あるいは母線に指示する場合、寸法線の延長線上からずらした位置に記載する。母線とは、円筒形体の表面上の任意の1本の線をいう。
データム記号は次の例のうちの一つを使用して、図面に記入することができる(図5)。
図5
表面あるいは母線にデータムを指示する場合の記入例
データムターゲット
データムターゲットとは、データムを設定するために、加工、測定および検査用の装置、器具などに接触させる対象物上の点、線または限定した領域のことである。
設計構造上、幅広い面積で取り付けるのではなく、少ない面積をいくつかに分けて基準とする場合に用いる。
データムターゲットを図示する場合、「データムターゲット記入枠」と「データムターゲット記号」の2種類を組み合わせて表現する(図6)。
図6
データムターゲット記入枠とデータムターゲット記号
データムターゲットは、一般的なデータム記号と併せて記入する(図7)。
この図例では、データムA面を定義するために、データムターゲットA1~A3の3点を使うことになる。
ここで、データムターゲットの寸法は、「理論寸法」として、寸法数値を枠で囲ったもので表す。理論寸法とは、ばらつきを持たない寸法を意味する。
図7
データムターゲットの指示例(関係ない寸法は省略)
図7の図面から、検査治具を設計することができる(図8)。
検査治具のため、データムターゲットの位置は、理論寸法で指示されるため、できる限り正確な位置を狙って加工してもらうよう、加工側と調整しなければいけない。
また、データムA1~A3の上面は、面一に仕上げることが前提である。
図8
データムターゲットに対応した検査治具例
データムは、設計基準(取り付け面、位置決め、機能的な中心軸、摺動面など)である。それは、加工基準でもあり、検査基準ともなる重要な部位である。
データム記号の配置する場所で、解釈が異なるため、サイズ形体と表面形体の違いを理解しておこう。
今回学習したデータムと対になるのが公差記入枠である。次回は公差記入枠の記入法に加えて、公差領域の考え方を解説するとしよう。
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