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3.製図の重要性を知る

設計作業と比較すると製図作業は技術的なレベルが低いと認識されており設計者の中でも重要視されていない。

製図によって作り出される図面は、設計OUTPUTという設計の成果物として加工現場で部品として生み出される元になるものであり、CADに描いた計画図とはその役割が大きく異なるためどちらが重要という比較する対象になるべき技術ではない。

図面は、ISO9001(品質マネジメントシステム)の中では管理書類として位置づけられるほど重要なドキュメントなのである。

「加工するために寸法漏れのない図面を出図すればよい」と考える設計者、あるいは設計上位者も多い。 なぜ製図が重要なのか?製図の本質を捉えて、その重要性を理解しなければいけない。

まず、図1に示す絵画と機械図面を比較してみよう。

どちらも紙に描いた情報媒体であるという面で共通している。

絵画は人によって解釈が異なるものであり、“感性”によって評価が分かれる。
つまり、ある絵画を幼稚な絵だと酷評する人もいれば、何億円も払ってでも購入したいと希望する人がいてもかまわないのである。

対して機械図面は、人によって解釈が同じでなければならず、“共通性”が求められるものである。
つまり、文化や歴史・言語の異なる第三者が図面を見たとき、誰でも同じように解釈できることが求められる。

製図の世界には解釈が同一になるようルールが決められている。ルールに従うことで、エンジニアにとっては公用語である英語以上にコミュニケーションを取れるツールとなる。

このルールには、大別するとISO(国際標準化機構)が定めるルールとASME(アメリカ機械学会)が定めるルールの、二つの国際的な基準が存在する。

日本を始め、EU(欧州連合)や韓国はISOのルールに整合するよう製図の規格を取り決めている。この規格がJISの定める製図である。

JIS(Japanese Industrial Standards)とは、我が国の工業標準化の促進を目的とする工業標準化法(昭和24年)に基づき制定される国家規格である。 JISによると、製図とは、「図面を作成する行為」と定義されている。同様に、図面とは、「情報媒体、規則に従って図または線図で表した、そして多くの場合には尺度に従って描いた図面情報」と定義される。

対して、アメリカはASMEのルールに従っているが、EUや韓国では独自にASMEを社内基準として採用している企業が増えており、今後の動向に注意するとともに海外メーカーと付き合う場合は適用している規格の確認が必要である。

製図におけるISOとASMEの規格では、一部に独自の記号や寸法と形状の関係に解釈の違いはあるものの、図2のように大半は共通しているといわれている。

学生から新入社員として現場に配属されると、雑務をこなしながら徐々に製図などの設計業務を任される。 企業や上司の立場からすると、新人といえども学生時代に機械設計の基礎知識を持って入社していることが前提であり、機械設計の基礎にあたる製図に関して手取り足取り教えてもらえることはない。

いざ図面を描こうと思っても、学生時代に習った製図の知識はあいまいであり、企業利益に反映される“責任ある図面”を作成しようとすると手が止まり、寸法線が一つも入らず困った記憶がある読者も多いことであろう。

そこで、どうやって皆さんはこの状況を解決したのであろうか?

多くの新人が、仕方なく先輩たちの描いた図面を参考にまねをして図面を作成したはずである。この瞬間は、「図面ってこんな感じで描くものではないはず・・」と感じても、同じような作業を繰り返すことで感覚が麻痺し、製図とは寸法さえ漏れてなければ問題ないと、大きな誤解をしたまま経験を積んでしまったはずである。

寸法を記入する理屈を教えてもらえなかったせいであるが、実は多くの設計上位者も同じ道を歩んでおり、正しい製図の作法をよく知らないのが現実である。

このように、「なんとなく分からないままに・・」といういい加減な気持ちで図面を描いてはいけない。図面とは設計機能を表す情報媒体であり、下流工程へ正しく伝達する手段である。情報を正しく伝えるためには、製図という技術が大変重要な役割を持つのである。

国家規格であるJIS製図でも、読者の皆さんが設計する製品の図面を100%満足できるように細かいルールまでは網羅しておらず、最低限のガイドラインという役目を負っているにすぎない。

次回は国家規格であるJIS製図にはない企業独自のルール(ローカルルール)やJIS製図の新旧記号が図面には蔓延しているといった話をしよう。

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