2024年 7月16日公開

トラブル解決! 情シスの現場

情シスも企画力が必要!? 社内外から評価されるSDGs施策とは

著者:金指 歩(かなさし あゆみ)

「SDGs」と聞いて、「いまさら?」と思う人は多いかもしれません。しかしSDGsは現在も重要な課題のひとつで、企業が率先して対応すべき事柄だといえます。

このSDGs施策を立案する上では、実はテクノロジーに詳しい情シスのアイデアが欠かせません。もしかしたらある日、あなたが、「IT系のSDGs施策を何か考えてくれない?」と急に企画を任されるかも!?

そこでこの記事では、情シスから立案できるSDGs施策について解説します。現場で困ったときの参考にしてください。

企業がSDGs施策に本腰を入れる理由

SDGs(Sustainable Development Goals)とは、人類がこの地球で暮らし続けていくために、2030年までに達成すべき持続可能な開発目標のことです。その目標は17あり、人権、経済・社会、地球環境といった分野を横断しています。2015年に国連総会で採択されたのち、日本でもさかんに取り上げられるようになりました。

また、SDGsに関連するキーワードとして「ESG」が挙げられます。ESGとは、環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)に考慮した投資活動や事業活動のことです。ESGは、SDGsという「目標」を達成するための「手段」という意味合いもあり、このふたつは密接な関係があります。

すでにSDGsやESGに関する施策を行っている上場企業は非常に多く、その背景には、2023年3月期からの有価証券報告書で、サステナビリティ情報など非財務情報の開示が義務づけられたことがあります。

上場企業は現在、サステナビリティやESGに関する取り組み・活動状況などをきちんと投資家に説明しないと、自社の株価に影響が出るような状況となっています。

中堅・中小企業にとって、この流れは大きなチャンスでもあります。SDGsやESGを意識した取り組みの実施は、世間の注目を集める可能性があり、大きなビジネスチャンスにつながるかもしれません。

つまりSDGsは、どんな企業でも自分ごととして関心をもつ価値のある課題なのです。

情シス部門こそSDGs施策を立案しやすいのはなぜ?

実は情シスは、SDGs施策を立案しやすい部門でもあります。SDGsの17の目標には、テクノロジーの活用で解決できそうなものが多く含まれており、そのテクノロジーに日頃から触れているのが情シスだからです。

<テクノロジーの活用で期待できる目標(例)>

  • 7. エネルギーをみんなに そしてクリーンに
  • 8. 働きがいも経済成長も
  • 9. 産業と技術革新の基盤をつくろう
  • 12. つくる責任 つかう責任
  • 13. 気候変動に具体的な対策を
  • 17. パートナーシップで目標を達成しよう

例えば、日々使用している光熱費のデータを分析して、燃費の悪い製品を割り出し交換することで「7. エネルギーをみんなに そしてクリーンに」に、デジタル化によって業務効率を上げることで「8. 働きがいも経済成長も」に貢献できます。

テクノロジーを起点に、SDGsに関する課題を解決できる可能性は高く、そこに情シスの持つ知見を生かさない手はないでしょう。

情シスから発信! 今から取り組めるSDGs施策

SDGs施策を立案する際のポイントは、社外だけでなく社内からも歓迎されやすい施策を考えることです。

これまでSDGsに関する取り組みは多く行われてきましたが、よくある失敗として「社外からの評価ばかりを気にして、社内の声を無視した例」が挙げられます。例えば、世の中で話題になるために最先端のITツールを導入した結果、現場の従業員からは「使い勝手が悪い」と声が上がり、結局そのツールがほとんど使われず業務効率化に失敗した、などです。

また、社内からの反発が強いと、プロジェクトを進行しにくくなるという懸念もあります。そこで今回は、従業員にメリットがあって受け入れやすい施策を紹介します。

リモート環境の整備による、オフィスの光熱費削減と働きやすさの向上

コロナ禍から時がたち、再び出社中心になっている企業もありますが、SDGsの観点からはリモート環境の維持・整備は欠かせません。

リモートワークによってオフィスの光熱費を削減できると、「7. エネルギーをみんなに そしてクリーンに」「13. 気候変動に具体的な対策を」が達成できます。また、リモートワークは働きやすさを向上させるため「8. 働きがいも経済成長も」にもよい影響があるでしょう。

加えて、近年はLEDに関する研究が進み、照明機能と除菌機能を併せ持つLED照明が登場しています。こうした最先端のテクノロジーを活用した商品をオフィスに導入するだけでも、SDGsを意識した施策が実行できます。

クラウド活用やAI活用による業務効率化

代表的なテクノロジー活用といえば、クラウドツールやAIツールによる業務効率化が挙げられます。これにより「8. 働きがいも経済成長も」に寄与できるでしょう。

ITツールによるデジタル化に着手している企業もありますが、実際のところは「ツールを導入しただけで利用が進んでいない」「業務改善どころか、余計な業務やコストが増えてしまった」という声も聞こえます。

そこで、すでにITツールを導入しているものの運用に失敗している場合は、その効果的な運用方法を提案してみてはいかがでしょうか。この運用の改善は「12. つくる責任 つかう責任」にもつながります。

テクノロジーを活用した自社事業の改善や新規事業の提案

自社事業がテクノロジーとは無縁だったとしても、ITツールを導入するなどして自社事業の改善や、新規事業の提案につなげることが可能です。

例えば、教育関係の企業がカスタマーサポート部門にAIチャットツールを導入すれば、担当者の業務効率を改善できます。また、水産業を行う企業がECサイトを立ち上げて自社事業化した場合、新たな販路が開拓できるでしょう。

こうした取り組みの結果「9. 産業と技術革新の基盤をつくろう」や、企業によっては「14. 海の豊かさを守ろう」「15. 陸の豊かさも守ろう」などに寄与できる可能性があります。

新技術に関する情報をキャッチアップし社内に共有。ナレッジも蓄積

情シスは日頃からテクノロジー関係の情報に通じているため、新技術に関する感度が比較的高いといえます。この強みを生かし、新技術の情報をキャッチしたら社内に共有するサイクルを作るのがおすすめです。

その結果、「9. 産業と技術革新の基盤をつくろう」にあるような新たな“基盤”作りにつながる可能性もあります。また、新技術に関するナレッジが社内に蓄積されることで、時代に即した新たなアイデアが生み出しやすくなります。

安全で継続利用できるシステムの導入

情シスは日頃から、社内で使われているITシステムを管理しています。そこでこのITシステム群を見直し、近い将来にレガシー化するものや、セキュリティ上問題があるシステムをピックアップしましょう。そして安全で長く利用できるシステムにリプレイスすることで、社内のセキュリティを向上させ、事業の安全性を高めることができます。

こうした取り組みの結果、「12. つくる責任 つかう責任」に関連して、商品やサービスを利用するお客様への責任も果たせます。

パートナー企業との関係強化、コミュニケーションの促進

現在のように変化の激しいビジネス環境では、他社との協働が強い味方となります。パートナー企業との関係を強化するためにも、チャットツールを導入するなどして、社外とコミュニケーションの取りやすい環境を構築しましょう。これにより「17. パートナーシップで目標を達成しよう」に寄与できます。

またこのとき、安全性が保たれるシステムを導入することも、情シスの重要な仕事だといえます。

加えて、社内の一部門が「オンラインのミートアップを開催したい!」など、新しい施策を行う際に積極的にバックアップするなど、社内でテクノロジーが活用しやすいような土壌作りを行うと、社内で好感される可能性があります。

まとめ

SDGsやESGに関係する施策が重視される流れは、2030年まで続くでしょう。この流れを味方につけ、情シス発のSDGs施策を提案していってはいかがでしょうか。それが自社のビジネスチャンスや自身の評価向上にもつながるかもしれません。

著者紹介:金指 歩

ライター・編集者。新卒で信託銀行に入社し営業担当者として勤務したのち、不動産会社や証券会社、ITベンチャーを経て独立。金融やビジネス、人材系の取材記事やコラム記事を制作している。

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