2024年 9月17日公開

トラブル解決! 情シスの現場

一人ではもう無理! 情シス業務がおろそかになるとどんなリスクが?

著者:金指 歩(かなさし あゆみ)

企業のシステム周りを整備・管理・強化しながら、さまざまなトラブルにも対応する情シス。中堅・中小企業では一人しかいなかったり、総務担当者が兼務していたりもしますが、情シスの手が足りなくなるとさまざまなリスクが高まることをご存じでしょうか? 想定外のトラブルが起きる前に、情シスの重要性や情シスの手が足りない際の対策について知っておきましょう。

情シスの手が回らなくなると何が起こる? 情シス不足のリスク

IT技術の発展やデジタル機器の利用拡大とともに、年々重要性が増している情シス。IT人材の不足が全国的に懸念されているなかで、情シスの確保は企業にとって重要課題ともいえます。しかし一方で、その重要性があまり認識されていない、情シス担当者の重要性を理解しながらもなかなか2人目が採用されないなど、情シス泣かせな現場も少なくないようです。

また、昨今はDXやデジタル化の取り組みが増えていますが、こうしたプロジェクトに着手する際は情シスの手間や負担がさらに増えるともいわれています。もし社内で情シスが不足すると、どのようなリスクにつながってしまうのでしょうか。

ITトラブル時の対応が遅くなる

情シスは、社内のIT周りに関する全てを把握している唯一の人物ともいえます。そのため、情シスがいなくなったり、情シスの手が回らなくなったりすると、社内でシステムトラブルなどが起きたときの対応が遅れてしまいがちです。軽微なトラブルであれば大事には至らないかもしれませんが、業務に影響のあるシステムに関するトラブルが起きたとき、対応が遅れるとお客様や他社などに迷惑をかけてしまう可能性があるため、注意が必要です。

セキュリティ対策が不十分になる

昨今はサイバー攻撃の脅威が年々増しており、セキュリティ対策がますます重要視されています。すでに情シスとして十分セキュリティ性の高い環境を構築している、と思っていても安心してはいけません。こうしたソフトやシステムは定期的なアップデートが必要なため、情シスの手が回っていない場合、セキュリティの“穴”ができている可能性があるからです。こうした弱点を突かれてサイバー攻撃を受けてしまうと、業務面や金銭面で甚大な被害をこうむる危険性があります。

情シスの休職・離職を招く

社内に情シスが一人もしくは少数しかいない場合、その業務負担が大きいことや、周囲に理解者がおらず孤立してしまうことなどを原因として、今いる情シスが休職・離職してしまうことがあります。すぐに後任を見つけられればよいのですが、IT人材不足の昨今ですから、すぐに採用できるとは限りません。そうすると社内システムに詳しい人がいなくなり、システム周りのさまざまな業務やトラブルに対応できなくなってしまいます。

業務が属人化しやすい

社内に情シスの「ひとりぼっち」体制が定着していた場合、本人だけが業務を把握していればよいので、情シス業務が属人化しやすくなります。そうすると、一人情シスが急に休んだ場合にシステム関係の業務が滞ったり、引き継ぎをせずに休職・離職された際には、業務がブラックボックス化したりすることが懸念されます。

DXへの対応が遅くなる

多くの企業が業務効率化やコスト削減のためにDXに取り組んでいます。DXを進める際には、まず社内の課題を洗い出すことが重要です。特にシステムに関する課題は、情シスが把握していることが多く、さらに、プロジェクトを推進するにはITに詳しい人材が適しているため、DXを進行する情シスの役割は非常に重要になります。もし情シスが不在だったり、プロジェクトに割ける時間が少なかったりすると、DXの進行がスムーズにいかず、遅れが生じる可能性があります。

一人では限界! アウトソーシングできる情シスの業務内容

社内で重要な役割を果たしている情シス。すでにマンパワーが限界の場合は、情シス業務をアウトソーシングすることで、その業務負担を軽減することができます。情シスの役割のなかで外注しやすい業務は次のとおりです。

パソコンなどデジタル機器の貸し出しや設定、操作サポート、障害対応

社内人材の入れ替えに伴ってたびたび発生する、パソコンやデジタル機器の貸し出し、設定などの「キッティング」は、アウトソーシングできる代表的な業務です。これには、パソコンのセットアップやアカウント作成、セキュリティソフトの設定などの業務が含まれます。また、従業員からの操作に関する質問への回答や、障害発生時の対応もアウトソーシング可能なため、万が一情シスが不在の場合でもトラブルが解決しやすくなります。

サーバーやシステムの監視業務

社内システムや使用中のサーバーが正常に作動しているかを監視する業務も、アウトソーシング可能な業務のひとつです。何らかの異常が発生したときには、障害が起きている領域を検知し、リモートもしくは現地で対応します。通常時はさほど稼働しないものの、トラブル時には心強い味方となるでしょう。

ネット環境の整備・管理

社内のネット環境の整備や管理などもアウトソーシングが可能です。社内で使用するデジタル機器が増えている場合、その管理も委託することで情シスの負担を大幅に軽減できます。また、ネット環境が不安定になりやすい場合、情シスの工数をその原因究明や対策の検討に振り向けやすくなります。

セキュリティ対応

ファイアウォールなどのセキュリティソフトの設定や管理、運用もアウトソーシングが可能です。セキュリティに関しては、一度設定して終わりではないため、継続的に対応してくれる外注先があると便利です。また、セキュリティ体制は、サイバー攻撃やセキュリティのトレンドに合わせてアップデートしていくことも必要なため、一人情シスが今後の対策を練る時間を捻出することができるようになります。

社内ヘルプデスク業務

システムに関する社内からの問い合わせへの対応も外注可能です。これはコミュニケーションコストがかかる業務ですから、アウトソーシングによって情シスの工数が確保され、その他の業務に集中しやすくなるでしょう。さらに、社外からの問い合わせやクレーム対応などにも対応してくれるアウトソーシング事業者もあります。

情シス業務アウトソーシングサービスの選び方

情シス業務のアウトソーシングサービスはさまざまな事業者が提供しているため、どうやって選んだらよいのか悩むかもしれません。そこで、外注先を選ぶ際のポイントについて解説します。

自社の規模に合ったサービス内容や価格帯か?

情シス業務のアウトソーシングサービスは、大手企業向きから中堅・中小企業向きまでさまざまです。自社の規模感に合った内容や価格帯のサービスを選ぶと、条件面がマッチしやすく、スピーディーな選定につながります。

社内で使っている機器やソフトに対応できるか?

アウトソーシングサービスの対象となるソフトやデジタル機器は、その事業者やサービスによって異なります。そこで、普段からSurfaceのパソコンを使っているなら、Surfaceに対応しているサービスを選ぶなど、自社で使用中の機器やソフトに対応できるサービスから選ぶのがおすすめです。

IT資産管理業務に対応可能か?

企業は、自社で使用しているソフトやデジタル機器などの「IT資産」の状況を把握する必要があり、年1~2回はIT資産の種類・数量を調査し、価値を評価する業務も発生します。このIT資産管理業務は、IT資産の有効活用やコスト管理に直結する重要なものですが、情シスが対応し切れていない現場も散見されます。よって、こうした業務に対応しているサービスを選ぶと、業務負担の軽減につながるでしょう。

アウトソーシング先と連携する際のポイント

実際にアウトソーシングを始めた際には、一人情シスがアウトソーシング先と連携していく必要があります。その際のポイントも簡単に紹介します。

機密情報などの漏えいに注意する

アウトソーシング先が信頼できる企業でも、外部にシステムやセキュリティに関する情報を渡すことには変わりありません。そこで、外注先のセキュリティ体制やセキュリティポリシーをよく確認し、機密情報などの漏えいが起きるリスクがないか事前に確認しておくとよいでしょう。

費用対効果を定期的に見直す

情シス業務をアウトソーシングした後は、こちらの期待感に合った仕事をしてくれているか、お願いしている役割が費用対効果に見合っているかなどを、定期的にチェックするとよいでしょう。もし期待と相違している場合は、コストの浪費にもつながるため、外注先に進言したり、委託先の変更を検討したりするとよいかもしれません。

まとめ

情シスは社内のシステム周りをつかさどる重要な役回りですが、何かと人材・リソース不足になりがちです。情シスの手が回らなくなるとさまざまなリスクが高まるため、トラブルが起きる前に、情シス業務のアウトソーシングを検討してはいかがでしょうか。その際には、自社の規模感やニーズ、費用感に合った外注先を探し、契約後はうまく連携していきましょう。

著者紹介:金指 歩

ライター・編集者。新卒で信託銀行に入社し営業担当者として勤務したのち、不動産会社や証券会社、ITベンチャーを経て独立。金融やビジネス、人材系の取材記事やコラム記事を制作している。

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