2025年 4月15日公開

トラブル解決! 情シスの現場

ファイル保存の選択肢で業務効率がこんなに変わる! これからのファイル保存法

著者:水無瀬 あずさ(みなせ あずさ)

企業がファイルやデータを安全に管理することは、業務効率の向上やセキュリティ対策、社会的信用の維持に欠かせません。この記事では、従来のローカルサーバーやレンタルサーバーの課題に加え、クラウドストレージやクラウドサーバーの特性、メリット、注意点について解説します。

ローカルサーバーやレンタルサーバーでトラブル? その問題点とは

企業内でのファイル保存には、ローカルサーバー(社内サーバー)やレンタルサーバーなど、以前から利用されているファイルサーバーが採用されるケースが多く見られます。しかし、こうしたファイルサーバーには運用上の不便さやトラブルのリスクが潜んでいるため、注意が必要です。

ここでは、具体的なトラブルの事例について詳しく見ていきましょう。

データが急増し、サーバー容量が足りなくなってしまった!

ローカルサーバーやレンタルサーバーは容量に制限があるため、利用者の増加や大容量データの送受信によって、すぐに容量不足に陥ることがあります。また、業務ファイルをメールに添付し、複数の人にCCで送信すると、メールサーバーが急激に圧迫され、他の業務に支障をきたすケースも少なくありません。

容量を増やすには追加手続きやコストが発生するため、即座に対応できないケースも見られます。

アクセスが集中したのか、ファイルのやり取りが遅すぎる……

ローカルサーバーは、特定のユーザーのみがアクセスできる環境を提供しますが、同時アクセスが集中するとデータ転送速度が低下してしまうのがデメリットです。その結果、ファイルのアップロードやダウンロードに時間がかかり、業務効率が大幅に下がることがあります。

一方、レンタルサーバーは多くの利用者が共有する仕組みのため、アクセスが多い時間帯にはさらに速度が遅くなる傾向があります。特に大量のデータをやり取りする業務では、作業が滞りやすく、ストレスを感じる場面が増えるでしょう。

レンタルサーバーがハッキングに遭い、データが消失!

レンタルサーバーは、多くのユーザーが利用するため、セキュリティリスクが高まります。特にサーバーがハッキングされると、データが消失したり、不正に改ざんされたりする危険性があります。

近年、ランサムウェア攻撃の増加が深刻な問題となっています。警視庁の報告によると、2024年上半期における国内ランサムウェア被害報告件数は114件にのぼり、年々増加傾向にあります。

令和6年上半期におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について(警視庁のWebサイト<PDF>が開きます)

ランサムウェア攻撃に遭うと、社内データが暗号化され、解除のためと称して高額な費用を要求されます。この被害は経済的損失にとどまらず、社会的信用の失墜にもつながり、企業にとって致命的なダメージとなる可能性があります。

レンタルサーバーのトラブルで、Webサイトが改ざんされてしまった!

レンタルサーバーがハッキングされると、Webサイトが不正に改ざんされるリスクがあります。具体的には、攻撃者によってサイトのコンテンツが変更され、不正な広告やフィッシングページが埋め込まれるケースが確認されています。

このような被害に遭うと、企業のブランドイメージが損なわれるだけでなく、訪問者にも被害を与え、信用を大きく失う恐れがあります。また、改ざんされたサイトは検索エンジンやセキュリティソフトによって危険サイトと判断され、アクセス自体がブロックされる可能性もあります。

最近の調査では「クラウドストレージ」「クラウドサーバー」の利用が増加

近年、クラウドストレージを導入する企業が増えています。クラウドストレージとは、インターネット上に設けたファイルの保存場所のことで、物理的なハードディスクに依存せず、どこからでもアクセスできる点が特徴です。

2024年度の国内企業ストレージ利用状況に関する調査では、クラウドストレージの利用率が52%に達し、前年比で3.7ポイント増加しました。クラウドストレージの普及が着実に進んでいることが示されています。

また、同調査ではクラウドストレージを導入する目的として、特に「大容量ファイルや機密性の高いファイルの受け渡し」と「脱ファイルサーバー」が多く挙げられました。この結果から、クラウドストレージを活用してセキュアなファイル共有を実現しつつ、従来のファイルサーバーからの完全移行を目指す企業が多いことがうかがえます。

同時に、クラウドサーバーの利用も増えています。クラウドサーバーとは、インターネットを通じて仮想的に提供されるサーバーのことで、必要に応じてリソースを柔軟に増減できるのが特徴です。

クラウドサーバーと混同されやすいものに、レンタルサーバーが挙げられます。レンタルサーバーは、1台の物理サーバーを複数のユーザーで共有する形式が一般的で、コストを抑えられる反面、他ユーザーの影響を受けやすいのが難点です。一方、クラウドサーバーは仮想化されたサーバーを専有利用できるため、カスタマイズ性やリソース拡張に優れています。

クラウドストレージやクラウドサーバーを利用するメリット

クラウドストレージやクラウドサーバーは、その高い利便性と多くのメリットから、「これからのファイル保存法」として注目を集めています。ここでは、その具体的なメリットについて詳しく説明します。

業務効率化を促進できる

従来のローカルサーバーやレンタルサーバーでは、容量不足やアクセス集中による速度低下などの小さなトラブルが頻発し、その対応に時間と労力を取られるケースが多くありました。クラウド環境を導入することで、これらのトラブルを大幅に軽減できます。

さらにクラウドを活用すれば、複数拠点やリモートワーク中の社員がリアルタイムでデータを共有・編集できるため、業務の効率化が一層進むことが期待されます。

リモートワークとの相性が良い

クラウドストレージやクラウドサーバーは、どちらもインターネットを通じて利用できるため、物理的な場所に縛られることなく、どこからでも業務を行えるのがメリットです。

特にクラウドストレージは、自宅や外出先、さらには異なる拠点間でも、ファイルをリアルタイムで共有・編集できるため、チームメンバー間の共同作業を円滑に進められます。

またクラウドサーバーは、遠隔地からのデータアクセスだけでなく、リソースの拡張や設定変更を簡単に行える柔軟性を備えており、リモート環境でも安定した業務基盤を提供できます。

ローカルサーバーに比べ、保守・メンテナンスのコストが低い

ローカルサーバーは、機器の購入や設置、定期的なメンテナンス作業、さらには故障時の修理や交換など、何かと費用がかさむのが一般的です。

これに対してクラウド環境では、インフラの管理をサービスプロバイダーが担うため、企業側での維持管理の負担が軽減されます。

また、クラウドは必要なリソースを利用した分だけ支払う仕組みが一般的で、予算の無駄を抑えることが可能です。セキュリティ更新やサーバーのアップデートも自動化されているため、人手を割く必要がなく、コスト削減だけでなく効率化にもつながります。

データ容量をすぐに拡張できる

従来のローカルサーバーやレンタルサーバーでは、容量が不足した場合、ハードディスクの追加やサーバーの再構築といった手間がかかり、その間に業務が中断するリスクがありました。将来的なデータ量増大を見越して、現状を大きく上回る容量を準備しておくこともコスト要因の一つでした。

一方、クラウド環境では、必要に応じて容量を即時に追加できるため、データ増加にもスムーズに対応できます。

特に、バックアップ用のデータや容量を消費しやすい動画・画像ファイルを保存する際にも、クラウドならストレージ不足を気にすることなく利用できます。また、使わないリソースを減らすことで、コストを抑えることも可能です。

セキュリティ性が高い

従来のレンタルサーバーやローカルサーバーでは、セキュリティ対策を自社で行う必要があり、更新の遅れや設定ミスがリスクを高める要因となっていました。

しかしクラウド環境では、データの暗号化、アクセス制限、二段階認証など、最新のセキュリティ技術が標準装備されており、不正アクセスや情報漏洩のリスクを大幅に低減できます。

さらに、クラウドサービスの提供元が継続的にセキュリティアップデートを実施するため、利用者は常に最新の対策を享受できます。万が一のトラブル時にも、バックアップ機能や復旧プロセスが充実しているため、迅速なデータ復元が可能です。

このようにセキュリティ面だけでなく、事業継続性の観点でも信頼性が高い点が、クラウドストレージやクラウドサーバーを利用する大きな利点と言えるでしょう。

クラウドストレージやクラウドサーバーを利用する際の注意点

クラウドストレージやクラウドサーバーは多くのメリットを持つ一方で、利用時には注意すべき点もあります。ここでは、クラウドの導入を検討する際に押さえておきたい注意点について詳しく見ていきましょう。

導入後のトラブルを未然に防ぎ、より効果的にクラウドを活用するための参考にしてください。

オフラインで利用できない

クラウドストレージやクラウドサーバーの利用には、インターネット接続が必須です。そのため、ネットワークに接続していない状態では、ファイルへのアクセスやサーバー内のデータ操作が行えなくなる点に注意が必要です。

Wi-Fi環境が整っていない場所やネットワークが不安定な状況では、業務が中断するリスクが高まります。

これを防ぐためには、重要なデータや必要なファイルを事前にローカル環境に保存しておくといった工夫が必要です。また、オフライン時でも一部機能が使えるツールやアプリを選ぶことで、リスクを軽減することも可能です。

カスタマイズ性が低く、連携できないシステムがある可能性も

クラウドストレージやクラウドサーバーは、ローカルサーバーと比較するとカスタマイズ性が低い場合があります。特に、業務に特化した独自システムや特殊なカスタム機能が必要な場合、クラウド環境が対応しきれないことがあるため、注意が必要です。

さらに、既存のシステムやソフトウェアとの互換性が低い場合、データの統合や業務プロセスの一貫性が損なわれるリスクもあります。これを避けるためには、導入前にシステム間の連携性を十分に確認し、必要に応じて連携ツールの利用や追加開発を検討することが重要です。

クラウドサービス導入時には、自社の業務要件に適合しているかを慎重に見極める必要があります。

セキュリティリスクに備える必要がある

クラウドストレージやクラウドサーバーはインターネットに常時接続されているため、セキュリティ性の高いツールを選んでも、リスクを完全に排除することはできません。サイバー攻撃やデータ漏洩といった脅威は、クラウド環境を利用する際にも常に考慮すべき課題です。

そのため、利用者側でもセキュリティ対策を徹底することが求められます。例えば、アクセス権限を適切に管理したり、強固なパスワードや二段階認証を導入したりする方法があります。

また、クラウドサービス提供者のセキュリティポリシーやデータセンターの保護体制を確認し、信頼できるプロバイダーを選ぶことも重要です。

まとめ

クラウドストレージやクラウドサーバーは、業務効率化やリモートワークの促進、コスト削減といった多くのメリットを提供します。一方で、利用する際には、オフラインでの利用制限やカスタマイズ性の低さ、セキュリティリスクへの備えといった注意点も考慮する必要があります。これらを踏まえ、自社の業務環境やニーズに適したツールを選定しましょう。

なお、大塚商会では、法人向けクラウドストレージサービス「たよれーる どこでもキャビネット」を提供しています。充実したセキュリティ機能を備え、大容量のファイル共有にも対応しているため、安心してご利用いただけます。クラウドストレージの導入を検討される際には、ぜひ選択肢の一つとしてご活用ください。

著者紹介:水無瀬 あずさ

現役エンジニア兼フリーランスライター。PHPで社内開発を行う傍ら、各メディアでコンテンツを執筆している。得意ジャンルはIT・転職・教育。生成AI×プログラミングでゲームを開発するための勉強にも励んでいる。(編集:株式会社となりの編プロ、ARC影山)

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