2011年 9月

専門家がアドバイス なるほど!経理・給与

「管理会計で経営が“見えるか”?」の巻

テキスト/梅原光彦 イラスト/ 今井ヨージ

厳しい経営環境のなか、経営改革を迫られている会社は多いもの。そして経営改革に不可欠といわれるのが管理会計です。管理会計とは何か? 経営にどのように役立つのか? 大阪のカイゼン商事を舞台に、社長、専務の経理ママたちのトークが始まります。

外出先から帰ってきた社長。意気揚々と経理ママに話しかける。

社長
おい、これからは我が社も管理会計や!
ママ
またどっかで新しい言葉を聞きかじってきたんやな。
社長
てなもんやホームセンターの専務から聞いたんや。管理会計をやったら経営が「見える化」するんやって。
ママ
見えるか? 老眼で新聞の活字も見えへんあんたが、経営が見えるか?
社長
社長そやけど、管理会計って、うちでやってる会計とはまた違うみたいやで。

と、そこに飛び込んできたのが、弁当屋“たらふく”のアルバイト店員、現代知恵蔵くん。公認会計士の資格取得をめざして勉強中の物知り青年だ。

知恵蔵
ちわーすッ!
ママ
いや~、知恵蔵くん、もうお弁当の注文取りにきたんか、熱心やな。
知恵蔵
へへへ、歩合制なもんで。それより聞こえましたよ、管理会計。
ママ
それそれ、会計は私が管理してるんやて、このぼんくら社長に言うてたとこやねん。ちゃんと赤字も出さんとやってるがな。
知恵蔵
いや、管理会計っていうのは会計を管理するんじゃなくて、英語でマネジメント・アカウンティング、つまり経営のための会計ってことなんです。
ママ
てことは? 私がやってる会計は経営のためと違うの?
知恵蔵
知恵蔵というよりも、税務署とか銀行とか株主とか、外部の人に報告するための会計ですね。これは制度会計とか財務会計とかいわれる会計なんですよ。中小企業の場合は、そのなかでも税務会計といって、課税所得を計算するための会計が中心なんです。
ママ
ほな、管理会計って?
知恵蔵
経営管理のために行う会計で、これを作成することが優良企業になるための近道といわれてるんですよ。赤字を出さずにとおっしゃいましたけど、「黒字倒産」という言葉があるように、見かけの利益に油断して気がついたら倒産ってこともあるんですよねえ。
ママ
へーえ、そやったん!
社長
な、わいが言うた通りやろ。

ママ
あんたは黙っとき。ほな、知恵蔵くん、優良会社への近道ってどういう意味なん?
知恵蔵
管理会計を行うことで、社内でいま何が起こっているかを数字で把握し、何が問題であるかの手がかりを得ることができるんです。それが経営の「見える化」ということですね。現状と課題がわかれば改善のための計画が立てられる。だから、財務会計が「過去」を見る会計であるのに対して、管理会計は「未来」を見る会計という人もいるんです。
ママ
優良会社になるためにはまず己を知れってことやな。そやけど、私かて、毎月の大まかな売上は把握してるで。売上はあがってても、何でか利益は増えへんにゃけどなッ。

社長
イタッ!
ママ
これはひとえに社長の努力不足や。
社長
わいはちゃんとやっとるがな。その証拠に売上はあがってるんやから。原因は他にあるんやて。
知恵蔵
まさに、そこなんですよ。その原因を見つけることが経営を「見える化」することで、そのための管理会計なんです。大事なのは帳簿上のあやふやな利益じゃなくて現実のお金、現金です。その現金を安定的に稼げているかどうかが見える会計になっているかどうかです。
ママ
ほほぅ、てことは管理会計というのをやったら、我が社が儲からへん原因が見えるってことやな?
知恵蔵
そうです。たとえば「会社に利益をもたらしているのはどの商品か」とか「利益の出る売上に結びつかない経費は何か」とか、そういうことがわかるようになるんです。
社長
昔は商品の数も量も少なかったし、そういうのはわかったんやけどな。
知恵蔵
ですよね。でも、数や種類、取引先が増えると把握が難しくなりますよね。

社長
しかし、どこから仕入れたどの商品がどれだけ売れてどれだけ儲かったかは、いまでも勘でわかってるつもりなんやけどな。
知恵蔵
たくさん売れたように思っていても、意外に経費がかかっていたり、売上予算を達成するために値引き販売したりして、利益率が下がってたりする場合があるんじゃないですか? そういうのが正確に「見える」ようにするのが管理会計なんです。
ママ
そやけど、うちらみたいな零細企業で、管理会計とかいうのするって難しいんやろ?
知恵蔵
そうですねえ、全国の中小企業で管理会計をきっちりやってる会社は2割前後といわれてます。管理会計をやるってことは月次決算、つまりは毎月決算を行うようなもんですからね。それは大変だと尻込みする人も多いと思います。
ママ
やっぱりなあ。経理の私に負担が重くのしかかるんやわ。くわばらくわばら。
知恵蔵
ただ、管理会計には、財務会計のように決まったルールはないんです。その会社にふさわしい指標、経営するうえで最も大事な数字が何であるかを見つけて、それを見えるようにすることが大事なんです。何か、これは気になるという項目があれば……
ママ
そや! 私が引っかかってるのは、商品別、得意先別、仕入れ先別の売上と経費の関係や。売上の全体はわかっても、個々にどれだけ経費がかかってるのか、いまいち把握できてないし。
社長
そこや。利益率に大きく関わってくる問題やしな、そういう個別の売上と経費の相関関係がわかるような仕組みをつくれるか、税理士の二宮損得先生に相談してみたらええな。

ママ
私が知りたいのはあんたの使うてる接待交際費がちゃんと利益に貢献してるかどうかや。さあ、これから私がしっかり社長の交際費を管理するで~~~ッ。
社長
ひゃ~~~~~、カンベンして~~~~。
知恵蔵
あ、じゃ、ぼくはこれで。お弁当、いつもと同じでいいですね? 毎度あり~~~~~~!