2014年11月 1日公開

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「年末調整で処理できる控除とできない控除」の巻

テキスト: 梅原光彦 イラスト: 今井ヨージ

年末調整ではさまざまな控除を扱います。各種控除には、年末調整で処理できるものとできないものがあり、混乱することもあるようです。そこで今回は年末調整に欠かせない「控除」を中心に基本知識を解説します。

「年末調整で処理できる控除とできない控除」の巻

年末調整の基本

年末調整とは

毎月給料から天引きされている源泉所得税額は所得税法の規定による概算の金額で、ほとんどの場合、天引きした所得税額の合計額は本来納付しなければならない所得税額とは一致しません。そこで毎年12月に、その年の年間給与所得金額に基づいて正しい税額(所得年税額)を求め、過不足が発生した場合は差額を還付または徴収するなどして調整します。これを年末調整と言います。

調整の仕組み

1年の間には給与が変動したり、扶養家族の増減があったりと、さまざまな変化があります。年末調整では、こうした変化を反映させた「正しい税額」を出して、払い過ぎたり、足りなかったりした分を、年末の最後の給与で調整します。

【A. 所得年税額】と【B. 1年間の源泉徴収税額の合計】を比べて調整します。

【A. 所得年税額】

所得年税額は以下の式で求めます。

(給与等収入の収入金額-給与所得控除額-所得控除)×所得税率-税額控除=所得年税額

【B.1年間の源泉徴収税額の合計】

1月から12月までの給与明細書から控除された所得税は、あくまでも所得税法の規定により概算で徴収しているものです。

AとBを比べてBの方が多い場合には差額が還付となり、
AとBを比べてAの方が多い場合には差額が徴収となります。

差額が還付される場合と徴収される場合

年末調整の流れ

年末調整の事務は以下のような流れで行われます。各種控除によって所得年税額は異なってきます。

年末調整の事務手続きの流れ

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給与等収入の収入金額

給与等収入の収入金額とは

簡単に言えば、1月から12月までの給与明細書に記載されている給与の額面額(非課税通勤費を除く)の合計額のことです。

この「給与等収入の収入金額」から給与所得控除、所得控除、税額控除などを控除(差し引き)した額が正しい税額「所得年税額」として確定します。

【各種控除を経て所得年税額が確定】

各種控除をし、所得税額が確定する

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給与所得控除

給与所得控除とは

サラリーマンで言えば個人経費のことです。給与所得控除額は、給与等の収入金額に応じて、以下のとおり定められています。

<平成25年分以後(注)>

給与等の収入金額
(給与所得の源泉徴収票の支払金額)
給与所得控除額
1,800,000円以下収入金額×40%
650,000円に満たない場合には650,000円
1,800,000円超3,600,000円以下収入金額×30%+180,000円
3,600,000円超6,600,000円以下収入金額×20%+540,000円
6,600,000円超10,000,000円以下収入金額×10%+1,200,000円
10,000,000円超 15,000,000円以下収入金額×5%+1,700,000円
15,000,000円超2,450,000円(上限)

(注)平成24年分以前は区分等が異なっています。

参照:国税庁Webサイト-給与所得控除

給与所得の金額は、下の表のように給与等の収入金額から給与所得控除額を差し引いて算出します。収入が増えるほど控除の割合は減っていきます。

給与等の収入金額(a)給与所得控除額(b)給与所得(a-b)給与所得控除割合(b/a)
1,000,000650,000350,00065.0%
2,000,000780,0001,220,00039.0%
3,000,0001,080,0001,920,00036.0%
4,000,0001,340,0002,660,00033.5%
5,000,0001,540,0003,460,00030.8%
6,000,0001,740,0004,260,00029.0%
7,000,0001,900,0005,100,00027.1%
8,000,0002,000,0006,000,00025.0%
9,000,0002,100,0006,900,00023.3%
10,000,0002,200,0007,800,00022.0%

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所得控除

所得控除とは

所得金額が同じでも、扶養家族の数や、障がいの有無などで税の負担額は異なってきます。これは所得税額を計算するときに納税者それぞれの個人の状況を勘案しようとするためです。そこで年末調整では、所得金額から扶養家族などの個人的事情に応じた控除額と社会保険料などを差し引いて、その残額に所得税が課税される仕組みになっています。

年末調整で処理できる所得控除とできない所得控除

所得控除の種類は以下のとおり各種ありますが、年末調整で処理できるものとできないものがあります。社員の方が分からずに年末調整の対象ではない控除の領収書などを提出されるケースも往々にしてあります。年末調整で処理できないものについては個人が確定申告をすることで控除を求めることになります。

 年末調整で処理できる確定申告で処理できる
雑損控除×
医療費控除×
社会保険料控除
小規模企業共済等掛金控除
生命保険料控除
地震保険料控除
寄附金控除×
障害者控除
寡婦(寡夫)控除
勤労学生控除
配偶者控除
配偶者特別控除
扶養控除
基礎控除

注意!

×印の控除は確定申告によってのみ処理できる控除です。年末調整の書類回収時に下記の書類が添付されていた場合には、返却したうえで、それぞれの所得控除を受けるには個人で確定申告をしなければならないことを伝えてください。

  • 災害関連支出の金額の領収を証する書類……雑損控除として
  • 医療費・薬代等の領収書……医療費控除として
  • 寄附した団体などから交付を受けた領収書等……寄附金控除として

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税額控除

税額控除とは

所得税額(課税所得金額×所得税率)から一定の金額を直接控除する制度のことです。所得控除が課税前の所得から差し引くのに対して、税額控除は課税後の金額から差し引きます。

年末調整で処理できる税額控除とできない税額控除

主な税額控除は以下のとおりですが、所得控除と同様、年末調整で処理できるものとできないものがあります。年末調整で処理できないものについては個人が確定申告をすることで控除を求めることになります。

 年末調整で処理できる確定申告で処理できる
配当控除×
外国税額控除×
寄附金特別控除×
住宅借入金等特別控除(初年度)×
住宅借入金等特別控除(次年度)(注)

(注)給与所得者の「(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書」がある場合に限ります。初年度に確定申告をすることにより後日、次年度以降の「(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書」が申告者の住所に送られてきます。この書類があれば2年目以降は年末調整で控除が可能です。

注意!

年末調整の書類回収時に下記の書類が添付されていた場合には本人に返却したうえで、それぞれの税額控除を受けるには個人で確定申告をしなければならないことを伝えてください。

  • 配当金支払計算書……配当控除として
  • 外国所得税を課されたことを証する書類……外国税額控除として
  • 寄附金(税額)控除のための書類……寄附金特別控除として
  • 住宅取得資金等に係る借入金の年末残高等証明書……住宅借入金等特別控除(初年度)として

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テレワークでも対応できる年末調整手続きの電子化

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年末調整手続きの際、従業員が作成する保険料控除申告書などの申告書は、控除証明書などのデータを活用して簡単に年末調整申告書の電子データを作成することができます。また、給与担当者も電子データで提出されることにより、在宅のまま出社する必要がなく年末調整の手続きを進めることができ、書面での年末調整の場合の書類保管コストも削減できます。大塚商会では、年末調整の「効率化のステップアップ」や「運用例」のご紹介と人事労務の電子化でもっと便利にできる情報を無料ガイドブックにまとめました。ぜひご活用ください。

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