2024年11月12日公開

一歩先への道しるべ ビズボヤージュ

滝川市と矢掛町が進める防災対策と地域活性化

企画・編集・文責 日経BP総合研究所

自治体を一歩先へ進める大塚商会の企業版ふるさと納税活用

南海トラフ巨大地震の発生が予想される中、2024年の元旦には能登半島地震が発生。自然災害は頻発化・激甚化の一途をたどり、自治体の間では防災意識が一層の高まりを見せている。こうした中、大塚商会では地方創生応援税制(以下、企業版ふるさと納税)を活用して、全国の自治体に防災資機材の寄贈を続けている。2024年4月~5月、北海道滝川市と岡山県矢掛町で目録受贈と感謝状の贈呈式が行われた。

* 本記事は「一歩先への道しるべ(https://project.nikkeibp.co.jp/onestep/)」の記事を再掲載しています。所属と肩書は取材当時のものであり、現在とは異なる場合がございます。

AI翻訳機や字幕表示システムで災害時の多言語対応を支援

石狩地方の北部に位置する北海道滝川市は、味付けジンギスカンやそば、菜の花畑の景観で知られる道央の町である。札幌市と旭川市の中間に位置し、古くから交通の要衝として栄えた。だが、日本有数の長さと流域面積を誇る石狩川とその支流である空知川に挟まれているため水害も多く、たび重なる河川の氾濫に悩まされてきた。

大塚商会は2023年9月、滝川市と「地方創生の推進に向けた包括連携に関する協定」を締結。同年12月、防災資機材9品目を寄贈した。そして2024年4月17日、滝川市役所で「防災及びDX推進に資する物品の寄付贈呈式」を開催。冒頭、大塚商会の取締役専務執行役員・齋藤廣伸氏が登壇して挨拶した。

「私どもは創業60周年記念事業として、南海トラフ巨大地震の被災が想定される自治体を中心に、防災資機材の寄贈を行ってきました。その取り組みを全国に広げる過程で、滝川市からご要望をいただいたのが寄贈のきっかけです。滝川市では、水害や土砂災害が懸念されると伺っています。このため、今回は避難所運営に欠かせない資機材を中心に寄贈させていただきました。能登半島地震では、多くの自治体の方々が、これらの資機材を持って現地入りされています」

大塚商会 取締役兼専務執行役員の齋藤廣伸氏

今回、滝川市に寄贈されたのは9品目。その内訳は、水循環型シャワー(WOTA BOX)1式、循環型手洗いシステム(WOSH)1式、段ボール製ベビーベッド(Combi避難所用ベビーにこっと)20台、携帯型音声翻訳機(AI通訳機ポケトーク)5台、ポータブルトイレ(ラップポン)20台、ソーラー発電パネル付き蓄電池(ASAGAO AS2000-JP)10台、アシスタントロボット(temi)1台、オールインワンミーティングボード(MAXHUB)4台、字幕表示システム(Cotopat)1台となっている。

滝川市にはベトナムの技能実習生など外国籍の住民が多く、災害時の多言語コミュニケーションに課題を抱えていた。このため大塚商会では、滝川市からの要望に応えて、音声を認識してアクリル板に字幕を表示するCotopatと、外国人との会話をAIが通訳するAI通訳機ポケトークを寄贈品として追加している。

リアルタイムで様々な言語に翻訳できる字幕表示システム(Cotopat)のデモンストレーションの様子

滝川市の前田康吉市長は、今回の寄贈についてこう語った。

「大きな河川の合流地点にある滝川市では、水害対策が最大の課題です。このため、道内で初めて水害タイムラインという早期避難計画を作成し、運用しています。“災害時に誰が誰を助け、どこに一次避難、二次避難を行うのか”という計画を町内会単位で作成するだけでなく、家単位の避難計画としてマイ・タイムラインの作成も進めています。このタイムラインにもとづき、お年寄りや要支援者の早期避難が実現すれば、二次被害の減少にもつながるはず。まずは“自分の命は自分で守る”という意識改革が重要だと考えています」