過半数代表者とは? なぜ必要なのか?
労働者の過半数代表者とは、労使の書面による協定(労使協定)を締結する際に労働者側の締結当事者となる者のことをいいます。企業(使用者)からすると、協定の相手方となる従業員(労働者)ということです。今回はこの過半数代表者がなぜ必要で、どのように選出されれば良いのかのポイントについてお伝えします。
過半数代表者について理解するには、まず、労働者の代表と使用者による協定である「労使協定」とは何かについても知っておく必要があります。労働基準法(労基法)第13条は労基法に反する定めは無効であること(強行的効力)と、無効になった部分は労基法の定める基準が適用されること(直律的効力)を定めています。つまり、労基法に反する条件で労働契約を結んでも労基法通りの内容にしかなりません。ですが、労基法が認める場合には、労使協定を締結することで例外を設定することができるのです。
その例外の典型的な例が時間外労働や休日労働です。原則では1日8時間、週40時間(特例対象事業場は44時間)までしか労働させることはできず(労基法第32条)、法定休日に労働させることは原則的にはできません(労基法第35条)。しかし、労基法は労使協定の締結および届出を条件として、例外的に一定の限度で時間外労働や休日労働を認めています(労基法第36条)。この労使協定は条文番号にちなんだ通称の「36協定(サブロク協定)」と呼ばれています。なお、実際に時間外労働や休日労働が行われるためには、36協定の締結および届出に加えて、就業規則等に時間外・休日労働を命じる根拠規定が必要であることにも注意してください。
36協定に代表される労使協定を締結する際には、労働者側の代表者として労働者の過半数で組織する労働組合(過半数組合)または労働者の過半数を代表する者(過半数代表者)のいずれかが求められます。過半数組合が存在しない場合は、過半数代表者が必要となります。ただ、この過半数代表者が適正に選出されていない例が多く見受けられるのです。
適正に選出されていない過半数代表者と締結した労使協定は無効です。そうなると、たとえ36協定を締結していたとしても、労基法の原則どおりに時間外労働させることが違法となってしまうリスクがあることになります。
過半数代表者との締結が求められる労使協定とは?
労基法上で労使協定について定められているもののうち、主なものを次に掲げます。