2024年 4月16日公開

トラブル解決! 情シスの現場

膨大な未読Ccの処理に困るなら、チャットツールに移行も手

著者:金指 歩(かなさし あゆみ)

長らくビジネスシーンを支えてきて、いまだ最重要ツールと言ってもいいのが「メール」です。チームメンバーとの情報共有や進捗(しんちょく)報告などのため、日々多くのメールが飛び交っています。そのなかで何かと厄介なのが、Ccメールの処理です。大きなプロジェクトに複数参加していると、膨大なCcメールがたちまちメールフォルダーにたまり、どのメールが重要で返信する必要があるのか、一読するだけでいいのか、後で見ておけばいいのかなどを判断しにくいことも多いのではないでしょうか。

もしも社内でこうした「困った!」の声が多いのなら、情シスとして改善策を提案してみるとよいかもしれません。

そこで本記事では、膨大なCcメールが課題になりやすい理由を踏まえ、抜本的な改善案としてチャットツールを導入する際の流れなどを解説します。ぜひ業務円滑化の参考にしてください。

社内で飛び交うCcメールの処理が課題になりやすい理由

そもそもなぜ、Ccメールが課題に挙がりやすいのでしょうか。その背景にある理由について解説します。

プロジェクトが大きいほど、情報共有するべき相手が増加するから

メールのCcは「カーボンコピー」の略称で、To(宛先)以外の受信者にも同じ内容を共有しておきたいときに活用されます。

Ccに含まれやすいのは、プロジェクトメンバーや同じ部署のメンバーなどで、企業によっては、Ccに入れるべきメンバーの範囲が事前に指定されている場合もあります。そのため、プロジェクトの規模が大きくなるほど、自然と受信するCcメールが増え、結果としてメールの管理が煩雑になってしまうのです。

「聞いていないぞ!」といわれないための情報共有が多くなるから

プロジェクトを進行するなかで、「上司に情報が届いていなかった」「関連部署に知らせるのを忘れてしまった」などのミスがあると、後から問題になる可能性があります。そのため、一般社員は特に「念のために多くのメンバーをCcに入れよう」と思いがちです。その結果、プロジェクトメンバーやチームメンバーに届くCcメールがさらに増えてしまいます。

本当に必要なメールが埋もれてしまうから

このような「念のための情報共有」のCcメールによる大きな弊害は、トピックの軽重を知る手だてがメールタイトルに限定されているせいで重要なメールや返信を要するメールが埋もれてしまうことです。「Re:Re:Re:RE:【共有】……」などで始まっているが内容は重要な場面にさしかかっているメールを見逃したためにプロジェクトが遅れたり、業務上の重大なミスにつながったりすることは、何としても避けたい事柄です。

また大型のプロジェクトに参加している場合、1日の受信メール数が100件を超えることも多々あり、メールチェックや整理によって日々の業務効率も落ちてしまいます。

さて、対策は……ヒントはリモートワークで普及したビジネスチャットツール

膨大なCcメールを処理していく手だてとしては、メールフォルダーの振り分けを適切に設定することや、Ccメール宛先に関する社内ルールを変更することなどが(まずは)挙げられます。

しかし、根本的な解決や大きな変革を求めるなら、Ccメールの根本的な原因である「全てのテーマが並列の重み付けで受信されてしまう」点を解決する必要があるでしょう。ここで着目したいのが、リモートワークですっかりビジネスソフトの一角を担うようになったビジネスチャットツールです。ビジネスチャットツールはメールと比較して、以下のようなメリットがあります。

複数メンバーでのコミュニケーションがとりやすい

ビジネスチャットツールはそもそもの成り立ち上、複数メンバーでのコミュニケーションをとりやすく、メンバーグループをテーマ別に立ち上げられるように作られています。よって、ToやCcをつけなくても複数メンバーにメッセージを一斉送信できたり、不要なメッセージを後から取り消すことができたりと、何かと使いやすい機能が充実しています。

スタンプ、リアクションアイコンを使って簡単に反応できる

受信・送信するメールの件数をムダに増やしがちなのが、「承知いたしました」などの応答です。もし相手からメールの返信がなかった場合、相手がメールを受け取っているのかを確認するメールを送ることになり、さらに業務効率が下がってしまいます。

しかしビジネスチャットツールなら、SNSのようにスタンプをつけたり、ミニアイコンでリアクションしたりするだけで、メッセージを読んだことと、おおざっぱな感想を伝えられます。日頃メールの返信が遅い人でも反応しやすいので、確認作業にかかる工数を削減できるでしょう。

セキュリティ性が高く、特定のメンバーだけでやりとりできる

ビジネスチャットツールでは前述のように、特定のメンバーだけが参加できるチャンネルやスレッドを簡単に複数作成できます。うかつなCcメールなどが生む「メンバー以外に情報が漏れる可能性」が格段に下がるため、セキュリティ性が高まります。また、メールのように外部からハッキングなどの攻撃を受ける可能性も低く、安心です。

テーマごとに流れを追いやすく、会話の内容を振り返りやすい

メールは原則、着信順に、なんの重み付けもなく受信フォルダーに入ってくるため、会話の内容や流れをすぐに把握するのが難しい場合もあります。

一方のビジネスチャットツールでは、そのテーマや話題ごとにスレッドを立てて、その続きをスレッドにぶら下げていくことができます。よって、効率的に話題をキャッチアップし、的確なメッセージを返しやすくなります。

ビジネスツールを選ぶ前に整理しておきたいこと

コロナ禍で多くの企業がリモートワークを実施したことをきっかけに、ビジネスチャットツールは急速に普及しました。そのため現在では何種類ものツールが登場していて、導入する際の選定が難しくなっているともいえます。

そこで、ビジネスチャットツール選びの準備として、事前に整理しておいたほうがよい事柄を説明します。

ビジネスチャットツールに参加するメンバーの範囲

まずは、ビジネスチャットツールに参加するメンバーの範囲を明確化します。その人数によって、ツールの費用感が変わってくるからです。例えば、利用するメンバーが20名程度の場合、あるツールでは「エンタープライズ向け」に、別のツールでは「中小企業向け」のプランに該当し、提供される機能も変わります。

ビジネスチャットツールの使用目的

次に、ビジネスチャットツールの利用目的も確認します。プロジェクト進行の用途に限定するのか、それとも社内メンバーが普段からさまざまな目的で利用できるようにするのか、ファイル共有は必要か、などによって、必要な機能が異なるからです。

また、社外メンバーの参加を前提とするなら、セキュリティ性の高いビジネスチャットツールを選ぶ必要もあります。

導入時・利用時にかけられるコスト

利用人数や利用者の範囲、使用目的などが明確になったら、その条件に合うプランの費用感を確認します。もし想定よりも高額になるのなら、譲歩できる条件はないか検討してもよいでしょう。おそらく多くの企業では、メールを並行して利用するため、「なるべく安く導入する」といった視点が必要かもしれません。

ビジネスチャットツールを導入する際の流れと注意点

実際にビジネスチャットツールを導入する際は、以下の流れで検討を進めます。

  1. 複数のビジネスチャットツールを比較し、相見積もりをとる

    複数のビジネスチャットツールの機能面や費用感などを比較するために、相見積もりをとります。特に大人数での利用を想定した「エンタープライズ向け」のプランは、機能の詳細やオプション、費用感などが非公開であることが多いので、まずはツールの提供元や販売元に問い合わせてみてください。

  2. 可能ならトライアルを実施する

    導入するビジネスチャットツールの当たりをつけたら、一定期間トライアルで利用してみます。トライアルができない場合は、デモ画面で使用感を確かめてみるのがおすすめです。実際にツールに触れてみた実感を元に、検討し直してもよいでしょう。

  3. 本契約、導入する

    試用した結果が好印象であれば、社内調整の末に本契約を行い、社内に導入します。契約時には、社内の法務部などに契約書を確認してもらいましょう。そして導入時には総務部などと連携して、利用メンバーの範囲やグループの作成フロー、チャット運用時の注意点など、初期に必要なルールを作って社内に周知します。事前に最低限のルールを決めておくと、直後のトラブルが少なくなるのでおすすめです。

  4. 利用状況を確認し、必要に応じて管理・調整する

    ビジネスチャットツールの導入後は、メンバーの利用状況を定期的に確認して、利用できずに困っている人や、不適切な利用をしている人がいないかをチェックします。事前に取り決めたルールが実態にそぐわない場合は、よりよいものに改善していくことも大切です。社内全員でツールを活用し、企業全体の業務効率が向上するよう改善していきましょう。

まとめ

大きなプロジェクトに参加している人や、日頃から関わるメンバーが多い人など、膨大なCcメールに頭を悩ませているメンバーが多いのなら、ビジネスチャットツールの導入を検討してみてはいかがでしょうか。複数メンバーでの利用を前提としているため、業務効率の改善に貢献できる可能性があります。

導入する際は複数のツールで相見積もりをとって諸条件を比較し、トライアル利用の上で導入することをおすすめします。自社のニーズに合ったツールを見つけて、業務効率を向上させてみてください。

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