Microsoft 365 Copilotの活用が進まない理由
Microsoft 365 Copilot(以下、Copilot)は、日々の業務を効率よく進めるうえで、非常に頼もしい存在です。一方で、「どう使えば効果的なのか分からない」「導入したものの、うまく生かせていない」と感じる利用者も少なくありません。そこで今回は、Copilotが活用されにくい理由を整理しながら、実際の業務に取り入れるためのヒントをお伝えしていきます。
どんな用途に使えるのか、具体的なイメージが持てない
Copilotが便利だと聞いてはいるものの、具体的にどのような業務で活用できるのか分からず、結局使わずにいる人もいるでしょう。
例えば「文書作成を効率化したい」と思っても、要約やリライト、文章構成の提案など、Copilotの支援範囲がはっきりしないと、利用しにくくなります。また、データ分析やプレゼン資料作成のように専門的な知識が必要だと思われる作業では、「本当にCopilotで対応できるのかな?」と思うかもしれません。
大切なのは、まずどの業務と相性が良いのかを知ることです。記事の後半では、実際の活用例も紹介しているので、使い方のヒントとして参考にしてみてください。
やりたいことを簡潔に明文化する必要がある
Copilotを生かすには、「やってほしいこと」を具体的に伝えることがポイントです。日常の業務は無意識にこなしていることが多いため、その工程を改めて言葉にするのが意外と難しく感じるかもしれません。
例えばWordで文書を読みやすく整えたいとき、「この文を分かりやすくして」などと曖昧に指示すると、意図が十分に伝わらず、期待通りの結果が得られないこともあります。そんなときは、「この段落を200文字以内に要約して」など、より具体的な形で依頼するのがコツです。
思い通りに反応してくれないこともありますが、伝え方を少しずつ調整していけば、次第にやり取りがしっくりくるようになります。
生成AIがなかなか信用できない
生成AIはまだ新しい技術であるため、「本当に正しい情報が得られる?」や「根拠がなくて不安」と感じる方も少なくありません。特に、はじめてCopilotを使った際に納得のいく回答が得られなかった経験があると、その印象が後まで残ってしまうかもしれません。
Copilotとうまく活用する方法は、すべてを任せきりにせず、あくまで補助的なツールとして利用することです。たとえば、文章を書き始めるときのアイデア出しや、考えを整理したいときなどで活用すると、思考のきっかけや新しい視点を得られることがあります。
そのうえで大切なのは、AIが出した内容をうのみにしないことです。自分の目でしっかり確かめ、必要に応じて内容を見直したり手を加えたりすることが大切です。
Copilotを企業で活用するにはルールが必要となる
Copilotを企業で導入する際、従業員が自由に使える環境を整えるだけでは不十分です。例えば「どの業務でCopilotを活用するか」「どこまでAIに任せてよいか」を明確にしておかなければ、従業員ごとに判断が異なり、品質にばらつきが出る可能性があるからです。
よって、社内で利用する前に、Copilotの利用ルールを整備する必要があります。また「Copilotが生成した内容をそのまま使うのではなく、必ず人の目で確認する」といったルールも入れるとよいでしょう。
また、セキュリティや情報管理の観点からも注意が必要です。従業員が機密情報を不用意にAIへ入力しないよう、あらかじめルールを定めておき、従業員全体に浸透させておく必要があります。
文書作成から定型業務の自動化まで、Copilotの業務活用事例13選
Copilotは、文書作成やデータ分析、メール対応、会議の効率化など、実にさまざまな業務で活用できます。しかし、具体的にどのようなシーンで使えばよいのかをイメージしにくいという人は多いかもしれません。
そこで、Copilotの活用事例を具体的にご紹介します。日常業務にすぐに取り入れられるものばかりなので、まずは実際に試してみて、自分の業務に合う使い方を探っていきましょう。
文書作成・整理
Wordの下書きを作成する
文章を一から書こうとすると、なかなか筆が進まず、思いのほか時間がかかることがあります。そんなときはCopilotを使えば、簡単な指示を入力するだけでWordの下書きを素早く生成してくれ、執筆の負担を大きく減らしてくれます。
一例として、「新製品の紹介記事を作りたいので、必要そうな項目名を列挙して」と入力すれば、製品の概要や特長を整理した項目案がすぐに生成されます。他にも「会議の議事録を要約して」や「お礼メールの文章を考えて」といった依頼にも対応できるため、ビジネス文書や報告書のように形式が定まった文書でも、短時間で的確な草案がまとまります。
Wordの長文を要約する
長文の文書を要約する作業は、時間がかかる上に、重要なポイントを抜き出すのが難しいこともあります。ここでCopilotを活用すれば、文章全体の要点を自動で抽出し、簡潔にまとめることができます。
また、会議の議事録やレポートなど数千字に及ぶ文書でも、「この文書を200文字以内で要約して」「三つのポイントに分けて要約して」と指示すれば、重要なポイントを凝縮した要約を作成できます。ただし、生成文を一度はチェックすることをお忘れなく。
Wordの文章の一部をテーブル化する
Wordで作成した文書の中に、複数の項目や比較データが含まれている場合、表(テーブル)に整理するのも一つの方法です。手作業で表を作成するのは手間がかかりますが、Copilotを活用すれば、文章の一部を簡単にテーブル化できます。
例えば「この文章を表に変換して」と指示すると、文中の情報を適切に分類し、表の形で出力してくれます。会議の議事録や報告書に明確なデータが含まれている場合、表へ変換することで見やすくなります。
データ分析・計算
Excelの数式を生成する
Excelでデータを分析する際に、「どの関数を使えばよいのか分からない」「複雑な計算式を組むのが難しい」と感じる人は多いかもしれません。しかしCopilotを活用すれば、簡単な指示を入力するだけで、最適な数式を自動で作成できます。
例えば売上データを分析する際には、「この売上データの合計を求める数式を作成して」と入力することで、SUM関数を用いた数式が提案されます。さらに、「この列のデータの平均を求めて」「A列とB列の差を計算して」などの指示を出せば、AVERAGEやSUBTRACTといった関数を使った式がスムーズに生成されます。
Excelのデータを分析する
Excelで大量のデータを扱う際、どのように分析すればよいか分からず、手作業で集計や比較を行っていませんか? ここでCopilotを活用すれば、データの傾向を素早く把握し、適切に分析できます。
例えばCopilotに「この売上データの傾向を分析して」と指示すれば、データの増減や特徴的なパターンを示してくれます。「このデータの中央値と標準偏差を求めて」「前年と比較して売上の伸びを分析して」など、より具体的な依頼にも対応可能です。
メールの効率化
Outlookのメールスレッドを要約する
業務のやり取りが続くと、メールのスレッドが長くなり、過去の内容を振り返るのに時間がかかります。特に複数人が参加するメールのやり取りでは、必要な情報を探すのに手間がかかり、重要なポイントを見落とすこともあるでしょう。しかしCopilotを活用すれば、メールスレッドの内容を簡潔に要約し、全体の流れを素早く把握できます。
例えば「このメールスレッドを要約して」と指示すると、やり取りの重要なポイントが抜粋され、内容の概要をひと目で確認できます。また「決定事項と次のアクションをまとめて」と依頼すれば、具体的な結論やタスクを整理してくれるため、対応漏れの防止にもつながります。
Outlookのメールの下書きを作成する
メールの作成には意外と時間がかかるものです。特に、丁寧な表現が求められるビジネスメールでは、適切な言い回しを考えるのに時間を要することも。しかしCopilotを活用すれば、簡単な指示を入力するだけで、その状況に合った下書きを素早く作成できます。
例えば「取引先への会議日程調整のメールを書いて」と指示すれば、ビジネス文書形式での下書きが作成できます。また「お礼のメールを作成して」「クレーム対応の返信文を考えて」などの具体的な指示を出すことで、その状況にふさわしい文面を提案してくれます。
Outlookの外国語メールを翻訳する
海外の取引先や顧客とのやり取りでは、翻訳ツールを使っても不自然な表現になったり、微妙なニュアンスが伝わらなかったりすることがあるものです。Copilotを活用すれば、Outlook上でスムーズにメールを翻訳し、やり取りの精度と効率が高まります。
例えば「この英語のメールを日本語に翻訳して」と指示すると、全文を違和感なく翻訳できます。「簡潔な日本語に要約して」と依頼すれば、内容を簡潔に整理した翻訳も生成可能です。
逆に、「このメールをビジネス向けの英語にして」と指示すれば、フォーマルな英文メールを作成してくれます。場面に応じた適切な言い回しも提案してくれるので、メール作成の手間を大幅に削減できます。
プレゼン・資料作成
PowerPointでプレゼンテーションを作成する
プレゼン資料の作成には時間と手間がかかり、スライドの構成やデザインを考えるだけでも大きな負担になるものです。しかしCopilotを活用すれば、簡単な指示を入力するだけでプレゼンテーションの下地を自動生成し、作業効率を大きく高められます。
例えば新製品のプレゼン資料を作成する際に、Copilotに指示を出すだけで、タイトルスライドや製品概要、特長、競合比較などの基本的なスライド構成をすぐに生成してくれます。また「このWord文書の内容をスライドにまとめて」と依頼すれば、既存の文書をもとに適切なスライドが生成され、情報整理の負担を減らせます。
さらに「視覚的に分かりやすく」「シンプルなデザインで」などの追加指示を出すことで、より洗練されたスライドに仕上げることもできます。
参考データが載っているであろうページを列挙する
プレゼン資料やレポートを作成する際、信頼できるデータや統計情報を探すこと自体に時間がかかることがあります。Copilotを活用すれば、関連情報が掲載されている可能性の高いページを素早くリスト化してくれるので、情報収集の効率を高められます。
例えば「最新のIT市場動向に関するデータが載っているページを探して」と指示すると、関連する公的機関や業界レポートのサイトが提案されます。また「競合他社の売上推移に関する情報があるページを列挙して」と依頼すれば、企業の公式サイトや財務報告書のリンクを提示してくれることもあります。
会議・情報共有の効率化
Teams会議の議事録を作成する
会議の議事録作成は、発言内容を整理し、重要なポイントを抜き出す必要があり、時間と手間のかかる作業です。特に長時間の会議や複数人が発言する場では、内容を正確にまとめるのが難しいことも。ここでCopilotを活用すれば、Teams会議の内容を自動で要約し、簡潔な議事録としてまとめてくれます。
例えば「この会議の議事録を作成して」とCopilotに指示すれば、発言の要点や決定事項、アクションアイテムが整理された状態で出力されます。また、「発言者ごとにまとめて」「決定事項を箇条書きにして」といった指示を追加すれば、より見やすい形に仕上げることもできます。
Power Automateと連携して定型業務を自動化する
日常業務の中には、メールの転送、ファイルの整理、データの入力など、繰り返し行う定型業務が多く含まれています。これらの作業を手作業で行うと時間がかかり、業務効率が落ちてしまいますが、CopilotをPower Automateと連携させれば、これらを自動化することで負担を大きく減らせます。
例えば、「メールの添付ファイルを自動で特定のフォルダーに保存するフローを作成して」と指示すれば、Power Automateが適切なワークフローを自動で作成してくれます。「Teamsに新しいタスクが追加されたら通知を送る」「特定の条件を満たしたデータをExcelに記録する」といった業務も、簡単な指示で自動化できます。
定型業務の自動化
OneNoteで会議メモを自動整理する
会議のメモは大切な記録ですが、整理が面倒で後回しにされ、結果的に生かされていないこともよくあります。Copilotを活用すれば、OneNoteの会議メモを自動で整理し、必要な情報をスムーズに管理できます。
例えば「この会議メモを要点ごとに整理して」と指示すれば、議題ごとに内容を整理し、見やすく保存できます。また「決定事項を強調して表示」「アクションアイテムをリスト化して」などの指示を追加することで、メモの構成をより明確にすることも可能です。さらに、CopilotとPower Automateを組み合わせることで、「会議終了後、自動でメモを共有フォルダーに保存する」といった作業も自動化できます。
まとめ
Microsoft 365 Copilotは、文書作成、データ分析、メール対応、会議記録の整理など、日々の業務を効率化する強力な支援ツールです。
まずは自分の簡単な業務から試し、Copilotの操作に慣れ、少しずつ活用の幅を広げていきましょう。企業で導入する際は、適切なルールを整備し、活用を推進することも重要です。
大塚商会では、Microsoft 365 Copilotの導入や運用のサポートを行っています。「業務にどのように生かせるか分からない」「活用方法を具体的に知りたい」という方は、お気軽にご相談ください。Copilotを上手に活用し、業務の質と生産性の向上につなげていきましょう。
著者紹介:水無瀬 あずさ
現役エンジニア兼フリーランスライター。PHPで社内開発を行う傍ら、各メディアでコンテンツを執筆している。得意ジャンルはIT・転職・教育。生成AI×プログラミングでゲームを開発するための勉強にも励んでいる。(編集:株式会社となりの編プロ、ARC影山)