動画制作で痛い思いをした経験も? よくあるトラブル
動画を制作したい、となった場合、かつては専門の制作会社に丸ごと依頼するのが一般的でした。しかし「品質は良かったけれど、予算を大幅にオーバーした」「完成までに時間がかかりすぎた」「思った内容と違う仕上がりになった」など、苦い経験をした方もいるかもしれません。
まずは、動画制作の“よくあるトラブル”を振り返ってみましょう。
どうしてこうなった? 想定と違う動画が納品された
動画制作を外部の制作会社に依頼したものの、完成した動画を見て「こんなはずでは……」と感じた経験はないでしょうか。例えば、訴求したいポイントがずれていたり、ナレーションのトーンが社風に合っていなかったりと、完成イメージと異なる仕上がりになることがあります。
その主な原因は、発注時に動画の目的やターゲット、構成のイメージなどが十分に共有されていなかったことや、制作会社側の理解が不十分だったことなどが挙げられます。特に初回発注時は「お任せ」にしすぎてしまい、確認やすり合わせが不十分になりがちです。結果として、修正のやり取りが増え、スケジュールや費用に影響が出てしまうケースもあります。
期末までに欲しかったのに……動画が期日までに納品されない
最近ではコストを抑えるため、個人や小規模な制作チームに動画制作を発注するケースも増えています。そうした背景から「期末までに消化したい予算が余っているから、動画を発注してみよう」と個人のクリエイターに依頼したものの、納品が間に合わなかった――そんな経験がある方もいるかもしれません。
個人や小規模チームへの依頼は、プロジェクト管理の面で不安が残ることもあります。進行スケジュールの把握や進捗確認を怠ると、修正対応が長引いたり、作業の遅延に気づけなかったりして、結果として納期に間に合わなくなる事態を招いてしまうのです。
変更に次ぐ変更で、制作コストが大幅に増加
納品された動画を社内でレビューした際、別の関係者から「もっとこうしたほうがいい」という意見が出てくることがあります。それを制作に反映したところ今度は、当初は関与していなかった役員などから「やはりこうあるべきだ」と異なる意見が出て、再び修正が発生……。そんな“変更の連鎖”を経験した方もいることでしょう。
動画はテキストや画像に比べて編集に手間がかかるため、修正のたびに時間とコストがかさみます。特に、意見の集約や方向性の決定が曖昧なまま制作を進めると、制作費用が想定以上に膨らんでしまう可能性があります。
今ならできる! 簡単・安価に動画を作る方法
かつては専門技術が必要だった動画制作も、今ではツールや技術の進化により、社内で手軽に取り組める時代になりました。高額な制作費や外注先とのやり取りに悩まされることなく、既存の資料や社内リソースを活用しながら、簡単かつ低コストで動画を作ることが可能です。
ここでは、現実的かつ再現性の高い動画制作の方法をご紹介します。
【撮影】スマートフォン撮影で十分
一昔前までは、動画撮影には専用のビデオカメラが必要とされていました。しかし、現在では、スマートフォンのカメラ・ビデオ性能が大きく向上しており、社用スマホでも十分な撮影が可能です。
撮影する際の解像度は、「フルHD」と呼ばれる1920×1080ピクセルで十分だとされています。これ以上の高画質にするとデータ容量が大きくなり、編集や共有が煩雑になることもあるため注意しましょう。
ただ、「手ぶれ」の防止には工夫が必要です。どれだけ画質が良くても、映像が揺れていると視聴体験が大きく損なわれるからです。安価なもので構いませんので、スマホ用の三脚を用意するのがおすすめです。
【素材】Teams動画やPowerPointを活用
近年はTeamsなどのオンライン会議ツールが普及しています。そこで、Teams会議の録画データや、会議中に使用したPowerPointスライドを素材として活用すれば、新たな撮影を行わずに動画を作成することが可能です。
特にPowerPointは、スライドにナレーションやアニメーションを加えることで、そのままビデオファイルとして書き出すこともでき、簡易的な解説動画として活用できます。
なお、Teams録画を利用する場合、ノイズキャンセル機能の影響で音声が聞き取りにくくなることがあるため、録画する前に確認しておきましょう。
【ナレーション】安価・無料の音声ソフトを活用
動画にナレーションを加えると、より分かりやすく、印象に残るコンテンツに仕上がります。近年、無料または低価格で利用できる音声読み上げソフトが数多く登場しており、ナレーションの外注に比べて手軽に導入できるのが魅力です。
さらに音声合成ソフトを使えば、テキストを入力するだけで自然なナレーションを作成でき、修正対応も簡単です。サービスやソフトによって対応している音声の種類や読み上げの精度、イントネーションの品質、商用利用の可否、費用などが異なるため、動画の内容や目的に応じて使い分けると良いでしょう。
【編集】スマホアプリで簡単動画編集
動画編集はパソコンで行うイメージが強いかもしれませんが、最近ではスマートフォンでも十分に対応できる編集アプリが多数登場しています。
トリミングやテロップの挿入、BGMの追加といった基本的な編集は、無料や低価格のアプリでも簡単に行えるため、ちょっとした動画の編集に最適です。移動中やスキマ時間に作業できる点も、スマホ編集のメリットといえるでしょう。
ただし、複雑な編集やブランドルールに沿った仕上がりが求められる場面では、やはりパソコン向けの編集ソフトを活用するのがおすすめです。例えば、直感的に使用できる「Adobe Express」は、動画制作が初めての方でも手軽に利用できます。
社内での動画制作で注意したいポイント
動画を社内で制作・運用する場合、手軽に始められる反面、進め方によってはトラブルや手戻りが発生しやすいのも事実です。制作後に「こんなはずではなかった!」とならないよう、社内で動画を制作する際に押さえておくべき注意点を紹介しましょう。
著作権に配慮する
社内で動画を制作する際に、特に注意したいのが著作権に関するトラブルです。BGMや画像、映像素材などをインターネット上から取ってきて安易に使用すると、気づかないうちに著作権を侵害してしまう恐れがあります。
こうしたトラブルを防ぐためには、著作権フリーの素材や、ライセンスが明記されたものを使用するのが基本です。
また近年では、生成AIを活用した画像や音声を動画に取り入れるケースも増えています。この場合には、AIツールの利用規約を確認し、商用利用が可能かどうかを事前に把握しておくことが大切です。
なお、画像生成や動画生成に対応した「Adobe Firefly」は、商用利用が可能なため、社内動画でも安心して活用できます。
肖像権リスクに備える
社内で動画を制作・公開する際に、見落としがちなのが肖像権に関するリスクです。特に社外向けに公開する動画では、映像に不要な映り込みがないかを事前によく確認しておきましょう。
例えば、オフィス外で撮影した動画に他社の社員や一般の通行人が映り込んでいたにもかかわらず、それに気づかず社内ポータルやSNSにアップしてしまうと、思わぬ肖像権の侵害に発展する可能性があります。
また、他社の社員や外部の協力者に出演してもらう必要がある場合には、簡単な書面などであらかじめ同意を得ておくと安心です。こうした小さな配慮が、大きなトラブルの防止につながります。
関係者と目的・イメージを共有
動画制作を円滑に進めるためには、制作に着手する前に、動画の目的やターゲット、伝えたいメッセージ、全体のトーンやイメージなどを、関係者やプロジェクトメンバーと共有しておきましょう。
こうしたすり合わせが不十分なまま進めると、完成後に「イメージと違う」「目的に合っていない」といった指摘が入り、修正対応が必要になるケースも少なくありません。
結果としてスケジュールの遅延や制作コストの増加につながる恐れがあるため、初期段階から丁寧なコミュニケーションを心がけましょう。
予算と制作期間の見通しを立てる
社内で動画を制作する場合でも、撮影や編集にかかる時間、人員の確保、必要なツールの導入など、一定の工数やコストは発生します。そこで重要なのが、あらかじめ予算と制作期間の見通しを立てておくことです。
どの程度の時間と費用をかけるのかを事前に明確にしておけば、他の業務との調整がしやすくなり、スケジュールに無理のない進行が可能になります。なお、予算や制作期間は、やや余裕を持って見積っておくと安心です。
迷ったら外注も視野に
動画の目的や内容によっては、社内で制作するのが難しいケースも考えられます。そうした場合には、外部の制作会社に依頼することも選択肢の一つです。特に品質や納期が重視されるプロジェクトでは、専門家の手を借りることで安心して進めることができます。
外注を検討する際は、複数の制作会社に相談し、制作スケジュールや対応範囲、費用の見積りを比較検討することが大切です。撮影から編集までパッケージプランで提供している制作会社もあります。自社のニーズに合った依頼先を見つけましょう。
まとめ
動画活用のニーズが高まる中、社内で簡単・低コストに動画を制作する手段も確実に増えてきました。スマートフォンやPowerPoint、無料・安価な音声ツールなどを活用すれば、特別なスキルがなくても十分に伝わる動画を作れます。
ただし、著作権や肖像権への配慮、関係者との事前のすり合わせなど、注意点がいくつかあることも確かです。場合によっては、品質や工数の面から、外部の制作会社に依頼する判断が必要になることもあるでしょう。
大塚商会では、社内での動画制作を支援するツールとして、直感的に使える「Adobe Express」や、ナレーション制作に役立つ音声ソフトなどを取り扱っています。まずは身近なところから、動画活用を始めてみてはいかがでしょうか。
著者紹介:水無瀬 あずさ
現役エンジニア兼フリーランスライター。PHPで社内開発を行う傍ら、各メディアでコンテンツを執筆している。得意ジャンルはIT・転職・教育。生成AI×プログラミングでゲームを開発するための勉強にも励んでいる。(編集:株式会社となりの編プロ、ARC影山)
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