急なアウトソーシングに気をつけて! よくあるトラブル
情シス業務の外部委託は負担軽減や業務効率化につながる一方で、準備が不十分なまま進めると、トラブルを招くリスクもあります。ここではまず、実際によくあるトラブルのパターンをご紹介します。
依頼したつもりのセキュリティ設定が未実施
従業員の入れ替え時期にあわせて、パソコンやデジタル機器のキッティング作業を外部に委託するケースは少なくありません。しかし、急な依頼だったために設定内容の伝達が不十分となり、セキュリティ設定の漏れが発生してしまうことがあります。
たとえば、BitLockerによるドライブ暗号化を依頼したものの設定されていなかったり、ウイルス対策ソフトのインストールが抜けていたりと、後になって重大な抜け漏れに気づくケースもあり、注意が必要です。
スキル不足? アウトソーシング先からたびたび質問が……
唐突にアウトソーシングが決まり、業務の背景や運用ルールを慌ただしく共有した直後に、外部委託がスタートしました。
すると、外注先から「操作マニュアルはどこですか?」「支店によって運用ルールは異なりますか?」といった質問が次々と寄せられ、対応に追われる日々に。中には「それくらい自分で確認できるのでは?」と感じるような初歩的な内容もあり、想定以上に時間と工数を奪われてしまいました。
結果として、本来取り組むべき業務がまったく進まず、かえって負担が増えるという本末転倒な状況に陥ってしまったのです。
ただ、この経験を通じて「業務が属人化していた」「共有ルールやドキュメントが整備されていなかった」と気づくことができれば、一つの学びといえるかもしれません。
社内ヘルプデスクを外注したら、伝達ミスが発生
社内システムに関するヘルプデスク業務をアウトソーシングしたことで、一時的に情シスの負担が軽減されたものの、すぐに社内から「VPNがつながらない」「ファイルサーバーに入れない」といった問い合わせが続出する事態となりました。
調査の結果、外注先が接続手順や証明書の運用ルールを正しく把握しておらず、誤った対応を案内していたことが判明。その影響で社内に混乱が広がり、最終的には情シスが再び業務を引き取る事態に発展しました。
ヘルプデスク業務は一見単純に見えても、社内固有のルールや背景知識が求められる場面が多く、適切な引き継ぎや情報共有を怠ると、かえって対応コスト・工数が膨らんでしまうリスクがあります。
アウトソーシング費用が想定以上の金額に
あるアウトソーシング会社に見積りを依頼したところ、費用が安く見えたため、サーバーやシステムの監視業務を委託しました。しかし運用が始まってみると、「障害発生時の一次対応」「定期レポートの作成」「通知先の変更」など、通常業務に含まれると考えていた項目がすべてオプション扱いとなっており、その都度追加費用が発生することが判明しました。
その結果、当初想定していた予算を大きく上回り、費用対効果の見直しを余儀なくされる事態に。最終的には、契約を早期に打ち切る判断に至りました。
トラブルを未然に防ぐ、上手なアウトソーシングのコツ
ここまでにご紹介したようなトラブルは、少しの工夫と準備次第で未然に防ぐことができたはずのものです。ここでは、情シス業務を安心して外部に委託するために押さえておきたい、実践的なポイントを解説します。
「準備に時間がかかる」と社内に認識させる
急なアウトソーシングが発生する背景には、社内に「外注すればすぐに対応してもらえる」「簡単に手間が省ける」といった楽観的な認識があることも少なくありません。
しかし実際に外注する際は、業務内容の整理や依頼事項の明確化、契約条件の検討、情報共有の準備などに、一定の時間と手間がかかります。こうしたプロセスを省略して外注を急ぐと、伝達ミスや対応漏れを招き、結果的にトラブルへと発展してしまいます。
アウトソーシングは決して「丸投げ」で済むものではなく、事前準備があってこそ円滑に進められます。そのため「アウトソーシングには準備時間が必要である」という認識を社内であらかじめ共有しておくことが重要です。
ボリュームの小さい業務から段階的に委託
情シスが多忙なときほど、つい工数の大きいメイン業務からアウトソーシングしたくなるものです。しかし、ボリュームのある業務を一括で任せてしまうと、外注先との認識ズレや対応漏れが発生しやすく、かえってトラブルを招くことがあります。
そこでまずは、普段は手が回っていないものの、本来は対応が必要だと考えている業務――たとえば、ログの定期チェックや機器の棚卸し、設定マニュアルの整備など、比較的工数が少なく成果が見えやすい業務から委託してみるのがおすすめです。
小さな業務から始めることで、外注先のスキルや対応品質を見極めながら、少しずつ信頼関係を築いていくことができます。
対応範囲のすり合わせでトラブルを防ぐ
アウトソーシングを円滑に導入するためのカギは、事前準備と情報共有にあります。依頼する業務内容を正確かつ具体的に伝えるには、業務の流れや作業項目をリスト化し、丁寧な説明資料を用意するなど、情報を整理してから共有することが重要です。
また、依頼内容を伝えるだけでなく、外注先が対応可能な範囲についても事前に確認しておかなければなりません。「この作業は自社での対応が必要」「このツールには対応できない」といった制約が後から判明すると、再調整や巻き取りが発生し、結果として情シスの負担が増えてしまいます。
あらかじめ丁寧にすり合わせを行い、双方の認識を一致させておくことが、トラブル防止につながります。
見積りの内訳で追加費用を見逃さない
アウトソーシングでよくあるトラブルの一つが、当初の見積りよりも費用が膨らんでしまうケースです。これを防ぐには、契約前に項目ごとに詳細が記された見積りを取得しておくことが重要です。
たとえば「月額○万円」というざっくりとした提示ではなく、どの業務にいくらかかるのか、対応内容や作業単位ごとに明記してもらうことで、後の認識ズレを防ぐことができます。
また「障害対応」「時間外対応」「レポート作成」など、別料金が発生する業務がある場合は、事前にリストを提示してもらいましょう。
追加料金の有無を把握しておくことで、予算オーバーや想定外の請求にも落ち着いて対処できます。
吟味する時間がないときに! 依頼したいアウトソーシング先の特徴
日々の業務に追われる中で、外注先をじっくり選ぶ余裕がないというケースも少なくありません。そんなときのために、限られた時間でも安心して依頼しやすいアウトソーシング先の特徴を紹介します。
セキュリティレベルの高い事業者
アウトソーシングを行う上で、最も慎重に確認すべきポイントの一つがセキュリティ体制です。情報漏洩などの重大なトラブルにつながるリスクを回避するためにも、委託先がどのようなセキュリティ対策を講じているかを、事前にチェックしておきましょう。
たとえば、Pマーク(プライバシーマーク)やISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)といった認証を取得している事業者は、一定レベル以上のセキュリティ体制を整えていると判断できます。
あわせて、社内での情報管理ルールや社員教育の実施状況なども確認できると、より安心して業務を任せることができます。
包括的にアウトソーシングできる事業者
アウトソーシング先の対応範囲が限られていると、業務ごとに別の事業者へ依頼せざるを得ず、調整や管理の手間が増えてしまいます。その点、複数の業務を一括してカバーできる事業者であれば、窓口を一本化できるため、やり取りがスムーズになり、管理工数も削減できます。
業務が増えた際や新たな対応が必要になった場合でも、同じ事業者には追加で依頼しやすいものです。将来的な拡張性や体制変更を見据えても、幅広い業務に対応できるパートナーを選ぶことが、安定運用につながる重要な要素です。
請負実績の多い事業者
アウトソーシング先を選定する際は、これまでの請負実績を確認しておくと安心です。実績が豊富な事業者は多くの現場を経験しており、対応の正確さやスピード、柔軟性にも信頼が置けます。
特に同業他社での対応実績があれば、業務の背景を理解してもらいやすく、説明の手間も省けます。
加えて、実績だけでなく、実際に利用した企業の口コミや評判をチェックすることで、サービス品質を客観的に判断できます。信頼できるパートナーを見極めるためにも、こうした情報収集は積極的に行いたいところです。
まとめ
アウトソーシングは情シスの負担軽減や業務効率化に大きく役立ちますが、準備不足や情報共有の不十分さから、思わぬトラブルを招くこともあります。事前に業務を整理し、依頼範囲を明確にした上で、信頼できる事業者を選定することが、トラブルの回避につながります。
大塚商会では、情シス業務を幅広くサポートする「たよれーる らくらくオフィスシリーズ」や、ネットワークの運用監視を包括的に任せられる「マネージドネットワークサービス(MNS)」など、多彩なアウトソーシングサービスをご用意しています。自社の状況や課題にあわせて、導入を検討してみてはいかがでしょうか。
著者紹介:水無瀬 あずさ
現役エンジニア兼フリーランスライター。PHPで社内開発を行う傍ら、各メディアでコンテンツを執筆している。得意ジャンルはIT・転職・教育。生成AI×プログラミングでゲームを開発するための勉強にも励んでいる。(編集:株式会社となりの編プロ、ARC影山)
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