入退社ラッシュで情シスに起きがちなトラブル
4月や10月など、入社・異動・退職が重なる時期は、PCキッティングやアカウント管理を中心に、情シス業務が一気に繁忙を極めます。限られた人員と時間の中で対応を進めるため、作業の遅延や設定ミス、確認漏れといったトラブルが発生しやすくなるのが実情です。
まずは、入退社ラッシュ時に情シスで起こりがちな代表的なトラブルを整理していきましょう。
キッティング・アカウント設定が同時多発する
キッティングとは、従業員がPC(パソコン)を使用する前に、OSや各種ドライバーの設定、業務アプリやセキュリティソフトのインストール、ポリシー適用など一連の作業を行うことです。機種や利用者、業務内容によって設定内容が異なることも多く、想像以上に工数を要します。
入退社者が多い時期には、このキッティング作業に加え、メールや社内システム、SaaSなどのアカウント発行や権限設定が同時並行で発生します。通常業務と並行して対応する情シスの負担が一気に高まると、対応遅れや設定ミス、残業の常態化といった問題につながりやすくなります。
操作レクチャー対応で、他の業務が止まる
新入社員の入社に伴い、PCの基本操作や社内システムの使い方、セキュリティに関する注意点などについて、情シスが操作レクチャーを行う場面は少なくありません。1件あたりは短時間の対応でも、対象者が多くなると工数は積み重なり、大きな負担となります。
効率化を意識せず個別対応を続けていると、その都度作業の手を止めることになり、問い合わせ対応や通常業務に支障が出ることもあります。結果として業務全体が滞り、情シスの負荷をさらに高めてしまいます。
退職者PCの処分が後回しになりがち
退職者が使用していたPCが老朽化しており、廃棄や入れ替えが必要な場合でも、入退社対応に追われる繁忙期には後回しになりがちです。データ消去や資産管理の手続きなど、処分前に行う作業が多いことも、対応を先送りにしてしまう要因と言えるでしょう。
その結果、処分待ちのPCが執務室や倉庫の片隅に積み上がり、物理的にスペースを圧迫してしまうケースもあります。資産管理の不透明化や情報漏えいリスクにつながる恐れもあるため注意が必要です。
アカウント・ライセンス削除漏れによるムダなコスト
退職者が発生した際、業務に追われてアカウントやライセンスの削除対応を失念してしまうケースもあります。そのまま気づかずにいると、利用されていないアカウントのライセンスが自動更新され、不要な費用を払い続けることにもなりかねません。
1件あたりの金額は小さくても、積み重なれば無視できないコストになります。「忘れずに対応しておけばよかった」と後悔する前に、確実に対応できる仕組みを構築することが重要です。
繁忙期を乗り切るために、情シスが今やっておきたいこと
入退社対応が重なる繁忙期を少しでも余裕をもって乗り切るためには、入退社対応が集中する前の段階で準備を進めておくことが重要です。ここでは、次の繁忙期に備えて取り組みたい、情シス業務の負担を軽減するための具体的な方法を紹介します。
問い合わせを減らすためのセルフサービス化
繁忙期に通常業務で手一杯の中、社内からの問い合わせが頻繁に入ると、情シスの業務はさらに逼迫(ひっぱく)します。特にPCの初期設定やシステムの操作方法など、内容が重なりやすい質問が複数人から何度も寄せられると、心理的なストレスにもつながるでしょう。
そこで有効なのが、問い合わせ対応のセルフサービス化です。よくある質問や操作手順をマニュアル化し、社内イントラネットなどに掲載しておくことで、社員が必要な情報を自分で確認できるようになります。問い合わせ件数を抑えられるだけでなく、情シス・社員双方の時間を有効に使える点も大きなメリットです。
入退社者への案内をペーパーレスで効率化
入退社者が発生するたびに、PCや社内システム、情報の取り扱いについて同じ説明を繰り返すのは、情シスにとって大きな負担になります。
そこで、入退社時に案内する内容をドキュメントやファイルにまとめ、社内イントラネットなどに掲載しておく方法が有効です。対象者がいつでも確認できる環境を整えておけば、説明の手間を大幅に削減できます。
あわせて、入退社者向けのレクチャーやガイダンスの時間を可能な限り集約するよう、事前に各部署へ協力を依頼しておくことも重要です。対応が分散するのを防ぐことで、情シス業務全体の効率化につながります。
PC・アカウント・ライセンスを一元管理
PCやアカウント、ライセンス情報といったIT資産は、専用のIT管理ツールやExcelなどを活用して一元的に管理することが重要です。情報を集約して可視化することで、必要な情報をすぐに確認でき、入退社対応や問い合わせ対応もスムーズになります。
また、管理ルールを明確にしておくことで、情報の抜け漏れや更新忘れを防ぎ、正確かつ安全な運用が可能になります。特定の担当者しか状況を把握できない属人化や、管理状況が不透明になるブラックボックス化を防ぐうえでも、平時からの一元管理は有効な取り組みと言えるでしょう。
手作業を減らし、定型業務を自動化する
繁忙期の情シス業務を圧迫する要因の一つが、手作業で行う定型業務の多さです。ITツールやAIを活用し、可能な業務から自動化を進めることで、作業時間と心理的な負担の両方を軽減できます。
たとえばMicrosoft Power Automateを活用すれば「Microsoft Formsで受け付けた問い合わせ内容をTeamsのチャットに自動通知する」といった仕組みを構築できます。また、Active Directoryのユーザー登録や特定フォルダーのバックアップなどは、PowerShellやバッチファイルでスクリプト化することで、作業の標準化と効率化が可能です。
キッティング業務などのアウトソーシング
キッティングをはじめとする情シス業務の中には、専門の事業者へアウトソーシングできるものも多くあります。外部の力を借りることで、業務の平準化も可能です。
特に、入退社が集中する繁忙期だけ人員を増やしたい場合や、一時的に対応件数が増えるタイミングでは、短期間で利用できるアウトソーシングが有効です。情シスが本来注力すべき業務に集中するためにも、アウトソーシングを選択肢の一つとして検討するとよいでしょう。
アウトソーシングを失敗しないために押さえるポイント
キッティング業務などをアウトソーシングしたいと考えていても、「どこまで任せられるのか」「何を準備すればよいのか」と悩む情シスも少なくありません。ここでは、アウトソーシングを検討する際に押さえておきたい重要なポイントを紹介します。
依頼先のセキュリティ管理体制を事前に確認する
アウトソーシングでは、キッティング作業やアカウント設定を通じて、自社の業務情報や個人情報を外部事業者に預ける場面が発生します。そのため、依頼先のセキュリティ管理体制を事前に確認しておくことが重要です。
具体的には、情報セキュリティに関する認証取得の有無や、作業環境・データの取り扱いルール、インシデント発生時の対応体制などを確認しておくと安心です。あわせて、同様の業務を請け負った実績が十分にあるかどうかも重要な判断材料になります。
業務範囲と責任の分担を事前に明確にする
アウトソーシングを行う際は、事業者に依頼する業務範囲や内容をできる限り具体的に定めましょう。どこまでを委託し、どこから自社で対応するのかを曖昧にしたまま進めると、認識のズレが生じやすくなります。
また、あらかじめ業務範囲や責任の分担を整理し、契約書や作業指示書などの文面として残しておくことで、トラブル発生時に「どちらが対応すべきか」を客観的に判断できます。スムーズな連携と安定した運用のためにも、事前の取り決めは欠かせないポイントと言えるでしょう。
作業内容がブラックボックス化しないようにする
アウトソーシング事業者にさまざまな業務を一括で委託する場合、詳細な作業内容を把握しないまま任せ続けると、何がどこまで対応されているのか分からず、業務がブラックボックス化する恐れがあります。
そのため、事業者には実施した作業内容や対応範囲、設定内容などを具体的に文面で報告してもらうことが重要です。記録を残しておけば、後任者への引き継ぎやトラブル発生時の原因特定もしやすくなります。アウトソーシングであっても「任せきりにしない姿勢」を意識しておきましょう。
まとめ
入退社が集中する繁忙期は、キッティングやアカウント管理、問い合わせ対応などが一気に重なり、情シスに大きな負担がかかります。こうした状況を毎回その場しのぎで乗り切るのではなく、セルフサービス化や一元管理、自動化、アウトソーシングなどを組み合わせ、繁忙期を見据えて平時から備えておくことが重要です。
大塚商会では、PCの導入から運用、入れ替え・廃棄までを支援する「PCライフサイクルサポート」を提供しています。繁忙期の負担軽減や体制見直しを検討する際には、こうしたサービスの活用も考えてみてはいかがでしょうか。
PCライフサイクルサポート
著者紹介:水無瀬 あずさ
現役エンジニア兼フリーランスライター。PHPで社内開発を行う傍ら、各メディアでコンテンツを執筆している。得意ジャンルはIT・転職・教育。生成AI×プログラミングでゲームを開発するための勉強にも励んでいる。(編集:株式会社となりの編プロ、ARC影山)
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