2026年 3月17日公開

トラブル解決! 情シスの現場

紙の顧客管理を卒業するには? よくある失敗と正しいデジタル化の進め方

著者:水無瀬 あずさ(みなせ あずさ)

DX推進が声高に叫ばれる一方、いまだ紙で顧客情報などを管理している企業は少なくありません。しかし紙での情報管理には紛失や持ち出しミス、情報の属人化といったリスクがつきまといます。そこでこの記事では、紙管理で起こりがちなトラブル事例を紹介し、その解決策について解説します。

紙で顧客情報を管理していたら……よくあるトラブル事例を紹介

紙による顧客情報の管理を続けていると、いつしか日常業務の中で起こるトラブルに慣れてしまう……そんなことはありませんか? また、特に情シスにとっては、現場での運用状況が見えにくい点も課題です。まずは、実際の現場で起こりやすい事例を通して、紙での情報管理が抱える課題を具体的に見ていきましょう。

顧客情報管理の内容がばらつき、データが不十分に

紙で顧客情報の管理を行っている場合、収集すべき顧客情報の項目を社内で決めていても、次第に運用が形骸化しやすくなります。営業担当者ごとに記入項目を省略したり、独自のメモを書き加えたりすることで、内容や情報の粒度にばらつきが生じるケースも少なくありません。

その結果、顧客の課題や過去のやり取りといった、本来蓄積すべき情報が十分に残らず、営業活動に生かせない状況に陥ることがあります。また、デジタルデータへ移行しようとした際、必要な情報がそろっておらず、再入力や追加の情報収集に多くの手間がかかる点も課題です。

違う取引先のデータを持ち出してしまい、商談で失敗

重要な商談がある日に、誤って別の取引先の資料を持ち出してしまった――。紙で顧客情報を管理している現場では、こうしたヒューマンエラーも起こりやすくなります。必要な情報がどこにあるのか分かりづらく、商談先で本来参照すべき顧客情報を確認できないまま話を進めた結果、商談がうまくいかなかったというケースもあります。

紙資料は検索性が低く、必要な情報に即座にアクセスしづらい点が大きな課題です。また、顧客情報を紙で持ち出せる量には限界があるため、状況に応じた柔軟な対応ができず、貴重な商談機会を逃してしまうリスクも高まります。

こっそり紙で情報を持ち出したら取引先に忘れた……

全社的に顧客情報管理システムを導入しているものの、運用が十分に浸透していないA社。担当者の中には、従来のやり方に慣れていることから、いまだに紙で顧客情報を持ち歩いている人もいました。

ある日、その担当者がいつものように紙で情報を持ち出したところ、取引先に置き忘れてしまい、社内でだけ共有していたその取引先に関する所感や苦心点などが丸わかりに。後日上司とともに回収に向かい、陳謝する事態になってしまいました。

システム導入後の運用や社員へのフォローが伴わない場合、現場では慣れた紙管理に戻りやすくなります。その結果、顧客情報を紛失するリスクが高まるだけでなく、取引先から「情報管理が不十分な会社」という印象を持たれてしまうリスクもあるのです。

紙での顧客情報管理をやめ、ペーパーレス化する方法

紙での顧客情報管理による課題を認識していても、「蓄積量が膨大すぎて、何から始めればよいのか分からない」と感じている情シスや管理部門も多いのではないでしょうか。ここでは、紙での情報管理をやめるための代表的な二つの方法を紹介し、それぞれのメリット・注意点も整理してお伝えします。

Excelによる顧客情報管理

Excelを使った顧客情報管理は、日常業務で使い慣れているツールをそのまま活用できる点が大きなメリットです。新たなシステムを導入する必要がなく、基本的に無料で始められるため、小規模な組織や個人単位での管理には取り入れやすい方法と言えるでしょう。

一方で、入力する顧客情報の項目を決め、入力用のフォーマットを自作したり、運用ルールを定めたりする必要がある点には要注意です。加えて、入力の手間があり、記入漏れも発生しやすいと言えます。ファイル共有時にはデータの上書きや「巻き戻り」、誤消去といったリスクも伴うほか、データ分析・活用の面でも限界があり、管理規模が大きくなるほど運用負荷が高まるでしょう。

SFA導入による顧客情報管理

SFA(Sales Force Automation)とは、営業活動を支援するためのシステムです。顧客情報や商談履歴、対応履歴などをデジタルで一元管理できる点が大きな特徴で、情報を社内で共有しやすくなる点が主なメリットです。

また、営業部門内に限らず、マーケティングやサポート部門とも情報連携が進むことで、顧客理解が深まり、提案や商談の幅が広がります。もともと情報共有や分析を前提に設計されているため、データ活用や商談管理を組織的に進めたい企業には適した仕組みです。

一方で、システム導入にあたって初期費用や運用コストがかかる点はデメリットと言えます。また既存の顧客情報を整理・見直したうえでシステムに移行する必要があり、運用が定着するまでには一定の時間と労力が求められます。

SFAを導入する際の流れ

SFAは「導入が大変そう」「現場に定着するまで時間がかかりそう」といったイメージを持たれがちですが、ポイントを押さえて段階的に進めれば、決して難しいものではありません。ここでは、SFA導入をスムーズに進めるための基本的な流れを分かりやすく紹介します。
なお、これらの工程を自社だけで進めるのが難しい場合には、ベンダーの導入支援を活用するという選択肢もあります。

1. 導入の目的を明確化し、要件定義を行う

SFA導入で最初に行うべきなのが、導入目的の明確化です。「営業情報を一元管理したい」「商談の進捗(しんちょく)を『見える化』したい」など、現場が抱えている課題を洗い出し、SFAで何を実現したいのかを整理します。

そのうえで、必要な機能や管理項目、利用人数、他システムとの連携有無などを具体的に定義する要件定義を行いましょう。定義が曖昧なまま進めてしまうと、導入後に「使いにくい」「想定と違う」といった不満が生じやすくなります。

2. 相見積りを取得し、ツールを選定する

導入目的と要件が定まったら、それに合致するSFAツールを複数ピックアップし、ベンダーに相談して相見積りを取得します。比較検討の際は、初期費用や月額費用といった価格面だけでなく、操作のしやすさ、カスタマイズ性、導入後のサポート体制、将来的な機能拡張のしやすさなども重要な判断基準です。

特に現場で使われるツールであるため、デモ画面を確認し、実際の利用イメージを持つことが大切です。複数の視点から比較することで、選定ミスを防ぎやすくなります。

3. ツール契約、環境を構築する

導入するSFAツールが決まったら、契約手続きを行い、利用環境の構築に進みましょう。

クラウド型SFAの場合は、アカウント発行や利用権限の設定、初期画面の準備などが主な作業です。併せて、管理者の選定や運用ルールの制定など、体制面の整理も重要です。

環境構築の段階で基本設定を丁寧に行っておくことで、その後のカスタマイズや運用がスムーズになります。ベンダーのサポートを活用しながら進めるのも有効です。

4. カスタマイズ設定、データ移行を実施する

次に、自社の営業プロセスに合わせたカスタマイズ設定と、既存データの移行を行います。商談ステータスや入力項目、画面構成などを現場の業務に沿って調整することで、使いやすさが大きく向上します。

紙やExcelで管理していた顧客情報を移行する際は、データの重複や表記揺れを整理し、形式を整えることも重要です。この工程を丁寧に行うことで、SFA上のデータ品質が高まり、後々の分析や活用にもつながります。

5. テスト運用、研修を行う

本格運用に入る前に、一部の部署やチームでテスト運用を実施するとよいでしょう。実際の業務で使用することで、入力しづらい項目や運用上の課題が明確になり、改善点を洗い出すことができます。

併せて、営業担当者や関係部署を対象に研修を行い、操作方法や運用ルールをしっかりと周知することも重要です。研修が不十分なまま運用を開始すると、「結局使われない」「紙管理に戻ってしまう」といった事態を招きかねません。定着を意識した準備こそが、SFA導入を成功させる鍵となります。

6. 運用を開始する

テスト運用と改善を経て、いよいよ全社での本格運用を開始します。運用開始後も、入力状況や活用度、トラブルの有無などを継続的にモニタリングし、必要に応じてルールや設定を見直していきましょう。

SFAは導入して終わりではなく、運用を通じて育てていく仕組みです。現場の声を取り入れながら改善を重ねることで、顧客情報の活用が進み、営業活動全体の質を高められます。

まとめ

紙による顧客管理には、情報の属人化や紛失リスク、データを十分に活用できないといったデメリットがあります。Excel管理という選択肢もありますが、情報共有やデータ分析を組織的に進めたいのであれば、SFAの導入が有効です。導入の目的を明確にし、段階的に運用を定着させることで、顧客情報を「営業活動の強力な資産」として活用できるようになります。

大塚商会では、企業規模や課題に応じたさまざまなSFAソリューションを取り扱っています。紙での情報管理からの脱却を検討している場合は、ぜひ導入を進めてみてはいかがでしょうか。

著者紹介:水無瀬 あずさ

現役エンジニア兼フリーランスライター。PHPで社内開発を行う傍ら、各メディアでコンテンツを執筆している。得意ジャンルはIT・転職・教育。生成AI×プログラミングでゲームを開発するための勉強にも励んでいる。(編集:株式会社となりの編プロ、ARC影山)

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