2026年 8月18日公開

トラブル解決! 情シスの現場

人事部門の“平常運転期”がチャンス。情シス主導で進める「人事DX」とは

著者:水無瀬 あずさ(みなせ あずさ)

人事部門のデジタル化が進んでいない中小・中堅企業では、入退社対応や権限変更の漏れなどのトラブルに見舞われがちです。そこで本記事では、情シスが巻き込まれやすい社内トラブルと、人事部が繁忙期を抜けた時期に進めたい「人事DX」の要点を解説します。

人事部門の混乱が情シスに波及……よくある社内トラブル

人事部門の業務は社内システムやアカウント管理と密接に関わっているため、情報共有や対応に漏れがあると大きなトラブルに発展しかねません。

まずは、人事関連で起こりがちな社内トラブルを見ていきましょう。

もっと早く教えて……入退社者対応で残業続き

入退社が増える3〜4月や9〜10月は、情シスの業務対応が集中しやすい時期です。しかし、人事部門から対象者の情報がなかなか共有されず、月末ぎりぎりになってから「来週入社者がいます」「今月末に退職者が出ます」と連絡が入るケースも少なくありません。

そうなると、PCのキッティングやアカウント作成、必要なライセンスの付与・削除などを短期間で進める必要があり、通常業務が圧迫されます。その結果、情シスが連日残業で対応することになり、設定ミスや作業漏れのリスクが高まります。

散らばる社員情報。正解はどれ?

社員情報をExcelや紙で管理していると、情報が複数の場所に散らばり、どれが最新なのかが分からなくなることがあります。

例えば、社員から「システムの所属部署が実際と違う」という問い合わせが入った場合、人事部は台帳を、情シスはシステム側をそれぞれ確認しなければなりません。どのデータが正しいのかを突き合わせるだけで時間がかかり、問い合わせた社員を長時間待たせてしまうこともあります。

このように情報が一元化されていないと、本来なら人事部門内で完結するはずの作業に情シスまで巻き込まれ、対応の遅れや入力ミスにつながってしまいます。

「人事部門秘伝のExcel」が開けない

ある日、人事部門から「以前から使っていたExcelが開けない。評価情報が載っているので、今すぐ確認したい」と連絡が入りました。確認してみると、長年使い続けてきたマクロがWindows 11への移行後に動かなくなっていたことが発覚しました。

重要なデータが含まれているため、対応を後回しにするわけにもいきません。情シスはランチ返上で、急きょ修正対応に追われることになりました。

このように、属人化したファイルが部門内で長年受け継がれている場合、復旧や修正対応のために情シスが巻き込まれ、通常業務を圧迫してしまうことがあります。

組織変更・人事異動に伴うアクセス権限の変更が大量発生

社内で大規模な組織変更が行われると、通常の人事異動に加え、各種システムのアクセス権限変更も大量に発生します。部署異動に伴う権限追加・削除や共有フォルダーの設定変更など、対応範囲は多岐にわたり、情シスの負担は一気に増大します。

しかも、こうした情報は直前になって共有されるケースが少なくありません。「もっと早く教えてくれれば効率的に対応できたのに……」と感じながら、限られた期間の中で対応に追われることになるのです。

人事部門にこそ「DX」が必要な理由

ここまで紹介したようなトラブル事例は、その場しのぎの対応で乗り切ることはできても、根本的な解決に至るかはまた別の問題です。なぜなら、多くの原因が「情報の属人化」や「紙・Excel中心の運用」といった、人事業務そのものの構造にあるためです。

そこで、そもそも「人事部門にこそDXが求められる理由」について解説します。

重要な社員情報を扱っているから

人事部門では、氏名や住所、給与、評価など、機密性の高い社員情報を日常的に扱っています。そのため、情報管理が属人的だったり、紙やExcelで分散管理されていたりすると、情報漏洩や誤送信、不正アクセスのリスクが高まりかねません。

特に近年は、内部不正やサイバー攻撃による情報漏洩も増えており、人事情報の管理体制強化は企業にとって重要な課題となっています。人事DXを推進して情報を適切に一元管理することは、業務効率化だけでなく、セキュリティ対策の観点からも大きな意味があります。

慢性的な人手不足の影響を受け、常に忙しいから

かつての人事部門では、採用活動や新人研修の時期がある程度決まっており、繁忙期と閑散期が比較的はっきりしていました。しかし近年は、慢性的な人手不足を背景に通年採用を行う企業も増え、採用活動や研修対応が常態化しています。

その結果、人事部門は日々の業務に追われやすくなり、情報整理や業務改善に十分な時間を割けないケースも少なくありません。だからこそ、人事DXによって定型業務を効率化し、限られた人員でも安定して業務を回せる体制づくりが求められているのです。

データに基づいた人材管理が必要になっているから

社員のスキルや評価履歴、保有資格、配属希望といった情報がExcelや紙に散在していると、人事異動や配置の判断が属人的になりがちです。「誰がどんな経験を持っているのか」をすぐに把握できず、適材適所の配置が難しくなるケースもあります。

こうした人材データを一元管理・分析し、活用する考え方として注目されているのが「ピープルアナリティクス」です。大掛かりな分析までは行わなくても、まずは情報を一カ所に集約するだけで、スキルの可視化や離職リスクの把握、人材配置の最適化につなげやすくなります。

閑散期の今こそ始めどき! 「人事DX」を進めるポイント

人事部門は年間を通して多忙になりやすい部署ですが、一般的に7〜10月は、入社・退職対応が集中する春先に比べて比較的落ち着きやすい「平常運転期」と言われています。人事DXを進めるなら、この時期が絶好のタイミングです。

人事DXを具体的に進めるには、どのような準備や仕組みが必要なのでしょうか。導入を検討したいシステムや、人事部と連携しながらスムーズに進めるためのポイントを解説します。

人事システムによる一元管理

人事DXでまず着手したいのが、人事情報の一元化です。Excelや紙、個別のファイルに散らばっている情報を人事システムに集約すれば、入退社や異動、評価、勤怠などの情報を管理・共有しやすくなります。情シスにとっても、アカウント発行や権限変更に必要な情報を確認しやすくなり、対応漏れの防止につながります。

人事システムを選ぶ際は、まず自社に必要な機能を洗い出すことが大切です。例えば、以下のような機能が活用されています。

  • 人事業務のコアとなる情報を管理する機能:社員の氏名、住所、家族構成、職歴、学歴などのマスターデータや、過去・現在・未来の組織図、異動・昇格の履歴などの情報を管理する機能
  • 労務・オペレーション業務に必要な機能:勤怠管理、給与計算・年末調整、各種手続き・申請(ワークフロー)など
  • タレントマネジメント(人材活用)に必要な機能:人事評価・目標管理、スキル・経歴の可視化、採用、eラーニング・研修の管理などに関連する機能

必要な機能をリストアップできたら、既存システムとの連携可否、操作性、セキュリティ、サポート体制などを確認しましょう。

打ち合わせを通じてベンダーが自社の課題をどれだけ理解してくれるかを確認し、継続的に支援してくれる企業かどうかを見極めることも重要です。

導入メリットの社内共有

人事システムの導入には、コストや作業時間の確保が必要です。そのため、情シスだけで必要性を訴えても、人事部門や経営層の理解を得られなければ、なかなか前に進みません。導入をスムーズに進めるには、人事部門や会社全体にとってのメリットを分かりやすく共有することが大切です。

例えば、人事部門には「社員情報の確認時間を減らせる」「入退社手続きの漏れを防げる」、会社全体には「情報漏洩リスクを抑えられる」「適材適所の人材配置につながる」といった効果を示すと、前向きに検討してもらいやすくなります。

人事DXは人事部門の業務改善ではありますが、システム導入を伴う場合は、情シスが導入を主導することも有効です。

人事部門だけでベンダーとやり取りをすると、機能やセキュリティ、既存システムとの連携など、技術的な確認が十分に行えない可能性があります。しかし情シスが間に入れば、要件整理やベンダーとのコミュニケーションが円滑になり、自社に合ったシステムを選びやすくなります。

人事部門の業務課題を把握しつつ、情シスが技術面を支えることで、導入後の運用まで見据えた人事DXを進められるでしょう。

まとめ

人事DXは、人事部門の業務効率化だけでなく、情シスに波及しがちな入退社対応や権限変更、情報管理のトラブルを防ぐうえでも重要な取り組みです。人事部門の業務が落ち着きやすい時期を活用し、社員情報の一元管理やシステム導入を検討してみましょう。

大塚商会では、人事DXに活用できる各種システムやソリューションを多数取り扱っています。自社に合った進め方に迷う場合は、ぜひ一度ご相談ください。

著者紹介:水無瀬 あずさ

現役エンジニア兼フリーランスライター。PHPで社内開発を行う傍ら、各メディアでコンテンツを執筆している。得意ジャンルはIT・転職・教育。生成AI×プログラミングでゲームを開発するための勉強にも励んでいる。(編集:株式会社となりの編プロ、株式会社アークタンジェント)

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