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1.ハンコって何?
ハンコ(判子)、印鑑、印章、印影などの言葉があります。一般的には同じような意味で使われますが、モノとしてのハンコは正式には印章といいます。印影はハンコに朱肉をつけて紙に押した跡のこと。そして印鑑は公式に届け出て登録された印影のことをいいます。日常的には区別しないで使っていても、実は少しずつ意味は違うのです。
混乱しやすいハンコの名称
- ハンコ(判子)…文字を刻んだもの。印章、印判、判ともいわれます。
- 印影…ハンコで押した跡のこと。
- 印鑑…官公署などにあらかじめ届け出た印影のこと。ただし、日常的にはハンコと同義語として使われます。
以下、本文ではモノとしての印章はハンコという言葉で統一します。
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2.ハンコを押す意味は?
ハンコを押すということは、押した本人が何らかの意思を示したことの証拠になるということです。日々のビジネスにおいては、売り買いの約束やお金の受け渡しをするときに契約書や領収書などの文書を交わします。そこに書かれた「いくらで買います」「受け取りました」という意思表示の証拠として、ハンコのあるなしが重要になってくるのです。契約書などでは、押印したかどうかで法的拘束力に違いが出てきます。
もう一つは、ハンコを押すことが法的な手続きとして求められているという理由があります。例えば税務署に提出する確定申告書や法務局に申請する手続きにはハンコが必要です。約束手形や小切手もハンコを押すことが法律上求められています。こういう場合、ハンコがなくては手続きできません。
押印と捺印
押印(おういん)、捺印(なついん)と読みます。どちらもハンコを押すという意味ですが、一般的には「署名捺印」「記名押印」というように、署名に対しては捺印、記名にたいしては押印という使い分けをすることが多いようです。
証拠としての意味、そして法的な意味で、ハンコは重要な役割を果たすのです。では、以下の流れで、ハンコの基礎知識を紹介していきます。
2-1.ハンコの種類と用途
会社には用途に合わせてさまざまな種類のハンコがあります。代表者印と銀行印は特に取扱注意です。
1.代表者印
代表取締役印ともいいます。登記所に届け出た、いわば会社の実印です。契約書を交わすときや融資を受けるとき、不動産を売却するとき、官公庁への届けなどに使用します。場合によっては、このハンコが、全社員の運命を左右することもあるだけに重要です。
代表者印の規格
大きさは1辺の長さが1cmを超え、3cm以内の正方形に収まるものでなければなりません。
個人の実印と異なる点は?
印鑑登録を行う機関は、個人の実印が市区町村役場なのに対して、代表者印は法務局になります。また、個人には1個の実印しか認められませんが、代表者印は、代表取締役が2名以上いる場合、複数が持てます。さらに印鑑証明も、本人以外の代理人が「印鑑登録カード」(印鑑登録証)を本人から預かって取りに行くことができ、委任状も不要です。
2.銀行印
金融機関に届け出たハンコで、銀行関係の書類、預金、手形、小切手の取引に使います。直接金銭を動かせるだけに重要なハンコです。銀行印は代表者印を一回り小さめにつくるか、もしくは代表者の個人印を使うケースもあるようです。
3.会社印
会社全体のことを示すハンコです。見積書や請求書、納品書、企画書などに用い、会社のハンコの中では最も使用頻度が高いといえます。「株式会社○○之印」などという文字を正方形に彫ったものが多く、社判、社印、角印とも呼ばれます。書類に記名された社名の上に重ねて押印したり、代表者印と合わせて使われたりすることもあります。
4.訂正印
事務処理として使われる小さめのハンコです。訂正者の名前のハンコを押すことで、だれがどのように訂正したのかを明らかにします。帳簿や伝票などに記入した文字の誤りを訂正する場合に使用するため、「簿記印」ともいわれます。契約書などの重要文書における「訂正印」とは別物です。
5.ゴム印
社名・住所・電話番号・代表者名が入ったもの、「速達」「書留」「請求書在中」「見本誌」などと表記されたものなど、目的に応じてつくられます。社名と住所、電話番号だけのものもあります。通常の事務の中では使用頻度が高いハンコです。
6.その他
役職者印(役職印)
役職者が職務上の権限として使うハンコです。「○○部長之印」などと彫られています。稟議書など社内の職務に関する文書を出すとき、注文書など対外的な取引に使用する文書などに押印されます。あとで問題が起こったときに、責任の所在を明らかにするために押されます。
社会保険印
労働・社会保険諸手続き用に代表者印と別のものを作成し、使用します。社長が忙しく飛び回り、ほぼ毎日代表者印を持ち出しているような会社で必要とされます。労働基準監督署や社会保険事務所への届出は必要ありませんが、公共職業安定所(ハローワーク)に提出する書類に関しては、あらかじめ「改印届」を提出しなければなりません。
認印(みとめいん)
「認めたしるし」に押すハンコのことで、「認印」という種類のハンコがあるわけではありません。一般的には、実印や銀行印以外のハンコを指します。日常の業務や家庭で、郵便物や宅配便の受領、会社の伝票、稟議書、出勤簿などの確認に使用されます。ただし、捺印すると法的な効力は実印と変わらないので注意が必要です。既製の安価な「三文判」や「浸透印」(シャチハタなど)を認印として用いることが一般的です。
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2-2.ハンコの押し方の基本
1.ハンコを押す位置
署名捺印する場合は、氏名のすぐ後ろに押します。その文書の内容を確認したという意味でハンコを押すわけですから、あまり離れた場所に押したのでは、別人が押したのでは? という疑いを招きかねません。このため、ハンコの位置は氏名と一体となるかたちで、氏名のすぐ後ろに押します。
2.重ならないように押す
ハンコは、押された印影と印鑑証明書などの印影とを照合する場合があります。このため、ハンコは文字やほかの印影と重なることがないように押すのが原則です。ただし、会社名の上に押されるハンコのように、照合が不要の場合は重ねて押しても問題ありません。
3.ハンコを押し間違えたとき
間違ったハンコを押したとき、あるいは印影がはっきり写らなかったときは、ボールペンで消して(バツ印をつけるなどして)、その横に押し直します。薄かったのでもう一度上から押すというのは、さらに印影がぼけるのでやめること。
4.朱肉はつけ過ぎない
朱肉をつけ過ぎると印影がにじんでしまいます。また、これを写し取ってほかに転用するという不法行為が可能になるため、朱肉は適量を心がけてください。
ハンコを押すのは本人でなくてもOK?
ハンコの意味は、本人の意思の確認にあります。したがって、本人がハンコを押すのが原則ですが、本人がその内容や押印する場所を承知していて、本人の承諾があれば第三者が押してかまいません。書類によってはハンコの種類が違っていたり、押す場所がいくつもあったり、素人には難しい場合もあるからです。銀行の窓口でも、本人の了承を得て行員が代わりに押印することがあります。
拇印(ぼいん)の効力は?
指先に朱肉をつけて押す拇印。よく「拇印でもけっこうです」などと言われることがありますが、法令上の規定は特にありません。したがってハンコと同等の効力はないのですが、署名のあとに押すことで証拠能力を高める程度の意味合いはあります。拇印は右手の人差指、または親指で押すのが一般的です。
署名捺印と記名押印の違いは?
捺印と押印は、ハンコを押すという意味では同じですが、署名と記名は違います。署名は自筆のサイン、記名は自筆以外の方法で書かれた氏名です。例えば印刷された氏名、ゴム印で押された氏名、他人に代筆してもらった氏名などが記名ということになります。
署名の場合は筆跡で分かりますが、記名の場合はだれが書いたのか分かりません。しかし、法律では記名のあとに押印があれば署名と同じ価値があるとしています。これが記名押印の意義で、この押印が実印であれば、より価値は高まります。
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2-3.さまざまなハンコの使い方と押し方
ハンコの使い方によって、さまざまな押し方があります。以下の使い方では、一部の例外を除き、ハンコは署名捺印(記名押印)に使ったものを用います。
また契約書など文書に関わる当事者が2人以上いる場合は全員がハンコを押すのが原則ですが、人数が多いときは双方の代表者1名ずつが押します。
1.楔印(くさびいん)
複数のページにわたる綴じられた契約書の2枚の用紙の間にまたがって押します。これは複数ページが同一の契約書であること、そして書類が一定の順序で綴じられていることを示すためのハンコです。書類の一部が抜き取られたり、入れ替えられたりすることを防ぐ意味があります。
(左)「文書のページが少ない場合」、(中)「文書が袋綴じの場合」、(右)「文書が分厚い場合」
2.割印(わりいん)
目的は楔印と同じですが、こちらは正本、副本などに分かれた2通の同一の契約書の間にまたがって押します。つまり文書が2通以上独立して存在し、当事者が1通ずつ保管する場合に、それぞれが同時に作成されたものであることを証明するためのハンコです。楔印の同義語として使われることも多いようです。
3.訂正印
訂正があったページの欄外に、書類に関わる当事者全員のハンコを押します。訂正印は、文書を書いた本人自らの手によって訂正されていることを示す意味があります。
まず訂正する文字に二本線を引き、縦書き文書の場合は、訂正した行の右に、横書きの場合は上に正しい文字を書き入れます。訂正印は訂正箇所に押すか、または欄外に「○字末梢、○字加筆」や「○字削除、○字加入」と書いて、その横に押します。
(左)「訂正箇所の下に訂正印を押す場合」、(右)「欄外に訂正印を押す場合」
4.捨印(すていん)
文書の中の文字を訂正してもよいという許可を前もって出しておくときに押すのが捨印です。「あらかじめ押しておく訂正印」というような意味です。契約書の特定ページの余白の部分に押す場合や、すべてのページに押す場合がありますが、いずれにしても文書の内容を変更できる許しを与えるものなので、なるべく使わないようにするのが理想です。
5.止印(とめいん)
契約書などに余白ができた場合、文章の末尾に押します。これは余白の部分に、勝手に文字を記入されることを防ぐためのハンコです。「以下余白」と書くか、余白部分に斜め線を引くのも有効です。
6.消印(けしいん)
契約書などに貼りつけた印紙があるときに、印紙と用紙の間にかかるように押します。消印には印紙の再使用を防ぐ意味があります。したがって、署名捺印に使ったハンコでなくともよく、ハンコがなければボールペンで印紙と文書にかけて二重線を引くだけでもかまいません。
もしも消印をしない文書が税務当局に発見された場合は、印紙と同額の過怠税を取られますが、それで文書が無効になることはありません。
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2-4.ハンコの管理
ハンコが目的を離れてみだりに使われたりすると会社にとっては信用に関わり、大きな損失となります。このためハンコは適切に管理されなければなりません。特に代表者印、銀行印は重要なので、保管には注意が必要です。金庫や鍵のかかるロッカーに厳重に保管することです。
中小企業の場合は社長が保管していることが多いのですが、ハンコが必要なときに社長が不在で業務に支障が出るようなことが続くようであれば、「印章管理規定」をつくり、だれがどこに保管しておくか、どんなときにハンコを使うのかなど、しっかりとルールを定めておく必要があります。
実印、印鑑証明書、印鑑登録カードは別々に保管
実印と印鑑証明書は二つそろって意味があるもの。したがって不正使用が起こらないように、実印と印鑑証明書、そして印鑑証明書をもらうための印鑑登録カードは別々に保管し、証明書はできるだけ、必要なときに必要な部数だけ取るようにします。
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