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2012年 6月 1日公開
【連載終了】専門家がアドバイス なるほど!経理・給与
【アーカイブ記事】以下の内容は公開日時点のものです。最新の情報とは異なる可能性がありますのでご注意ください。
テキスト/梅原光彦 イラスト/ 今井ヨージ
6月に入ると年金事務所から送られてくる「報酬月額算定基礎届」「算定基礎届総括(調査)表」。提出期限は7月1日から7月10日までとなっています。毎年のこととはいえ、1年もたてば知識も曖昧になってくるもの。ここで改めて、提出までの流れと、注意点についておさらいしておきましょう。
「またまた分厚い封筒が届いたで。年金事務所から?」と怪訝な顔の経理ママに「もう年金もらえるんか?」と呑気に答える社長。「それは社会保険の定時決定ですよ」と公認会計士試験をめざす現代知恵蔵君が割って入った。「定時決定というのは……」
目次
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健康保険や厚生年金保険といった社会保険の保険料は、会社が社員に支払った給与の額をもとに算定した「標準報酬月額」(注1)から算出します。この給与額は昇級などで年々変化するので、これに対応するため、毎年届出をして、その後1年間の標準報酬月額を決定します。このときの届けを「算定基礎届」といい、標準報酬を毎年定時(7月1日)に見直す(決定する)ことから「定時決定」と呼ばれています。
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6月に入ると年金事務所から「報酬月額算定基礎届」「算定基礎届総括(調査)表」が送られてきます(注2)。用紙に印刷されている会社名など記載内容に誤りがないか確認しましょう。定時決定の大まかな流れは以下の通りです。
4月・5月・6月に支払われた報酬額と支払基礎日数などを、賃金台帳や出勤簿などをもとに確認します。報酬額は通貨支給と現物支給のそれぞれの額を確認しておきます。支払基礎日数は給与体系によって異なります。月給制の場合は休日や有給休暇の日数も含まれます。
7月1日現在の被保険者で、以下に該当する人たちです。
ただし、以下の人は除かれるため、算定基礎届に記載する必要はありません。
2社以上の会社から給与の支払いを受けている場合は、「被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」を提出します。そして所属選択した事業所で算定をすることになります。そのときは、複数の会社で受けた給与の総額を、所属選択した事業所の算定に記載します。もちろん複数の会社で勤務しても、健康保険証は1枚しか発行されません。
定時決定で決められた標準報酬月額は、通常その年の9月から翌年の8月までの1年間は変わりません。ただし、給与の定期昇給や昇進・降格などによって給与水準に大幅な変動があったときは年1回の見直しでは実情に合わなくなってしまいます。このため、月額変更(随時改定)という方法で変更されることがあります。
4月に昇給があった場合は、現在の標準報酬額と4~6月に支払われた報酬を確認して随時改定が必要かどうかを確認してください。7月に随時改定を行う者は定時決定を行わず、月額変更届を提出します。
次の3つの要件すべてを満たした場合に随時改定を行います。1つでも要件に該当しない場合は届出の必要はありません。
支払った給与をもとに新しい標準報酬月額を決定するために作成します。以下の1)2)の流れで行います。
1)4月・5月・6月に支払われた報酬額と支払基礎日数などを記載し、標準報酬月額の総額(注5)と平均額を計算します。支払基礎日数が17日未満(注6)の月がある場合はこの月の分は除いて計算します。ただし、月の途中で入社した被保険者で、給料額を日割り計算している場合、その額は本来の支給額ではないので、このような場合は入社月の翌月以降から対象となります。また、パートタイマーの場合は扱いが異なりますので注意が必要です。
2)決定後の標準報酬月額を標準報酬月額表にあてはめて、その年の9月から翌年の8月までの標準報酬月額を決定し、これを記載します。
被保険者が労働の対価として事業主から受けるものが報酬です。「賃金」「給与」「報酬」「賞与」「手当」など名称とは関係なく、原則としてすべて報酬となります。金銭だけでなく現物で支給されるものも含んでいます。報酬となる支給、ならない支給は次の表の通りです。なお、報酬と認定されるかどうかは、名称ではなく、実体で判断されます。下の表は、あくまでも例示として参考にしてください。
交通費(通勤手当)は、支給額の全額が報酬となります。また、定期券を1年単位で支給している場合は、12で割って1ヵ月当たりの額を求め報酬とします。なお、通勤手当を算定基礎届に記入する場合、現金か現物かで欄が異なります。
報酬を計算する基礎となる日数をいいます。給与制度によって異なります。
その月に何日休んでも給与の額が変わらないため、出勤日数に関係なくカレンダー通りの日数が支払基礎日数となります。
就業規則や給与規程などに定められた欠勤控除の規程に基づいて、会社が定めた日数から欠勤日数を差し引いた日数が支払基礎日数となります。
出勤日数(有給休暇を含む)が支払基礎日数となります。時給制で、出勤している時間が短くても(たとえ1日1時間でも)支払基礎日数とされます。
定時決定の対象となる4月、5月、6月の3ヵ月間はいずれも支払基礎日数が17日以上あることが要件です。17日未満の月がある場合は、その月を除いて平均額を出します。
育児休業などで3ヵ月とも給与の支払がない場合は、休業直前の標準報酬月額で決定されます。会社が手当などを支給していたとしても、報酬支払基礎日数が17日未満であるため、これまでと同じ標準報酬月額となります。また、病気欠勤、休職などで、報酬支払基礎日数が17日未満の月がある場合は、17日未満の月を除いて算定します。さらに3ヵ月間とも欠勤した場合は、「保険者算定」として、休業直前の標準報酬で決定します。
休業中の社員に給与は支払われませんが、社会保険料は保険に加入している限り会社負担分も従業員負担分も徴収されます。ただし、3歳に達するまでの子の育児で休業している場合は、会社負担分も従業員負担分も免除されます(注7)(この規定は介護休業には適用されません)。
次のように扱われます。
「算定基礎届総括表」は、保険者が各事業所の被保険者の現況や報酬の支払状況などを包括的に知るため、事業主が算定基礎届と一緒に提出するものです。算定基礎届総括表には、事業所整理番号、事業所番号、5月中旬現在の被保険者数などがプリントされています。事業所や給与支払の情報を該当する欄に記載して、算定基礎届と一緒に提出します。
7月1日から7月10日までに、「被保険者報酬月額算定基礎届」に以下の書類を添付して、郵送・持参など指定された方法で届出書を提出します。
提出先は、政府管掌事業所は管轄年金事務所、組合管掌事業所は管轄年金事務所および健康保険組合、厚生年金基金に加入している事業所はその厚生年金基金です。
標準報酬月額が決定されると「標準報酬月額決定通知書」が年金事務所より送付されてきます。これに基づき9月からの保険料を計算します。新しい標準報酬月額は、9月より適用されます(実務上は10月支給分の給与からとなります)。
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