2012年 5月 1日公開

【連載終了】専門家がアドバイス なるほど!経理・給与

【アーカイブ記事】以下の内容は公開日時点のものです。
最新の情報とは異なる可能性がありますのでご注意ください。

「6月になれば労働保険の年度更新で大忙し!?」の巻

テキスト/梅原光彦 イラスト/ 今井ヨージ

  • 経理

毎年、労働保険の年度更新の時期が来ると、説明書類を含む申告書類一式が送られてきます。提出期限は6月1日から7月10日まで。労働保険事務組合に事務委託をしていない事業所(注1)の場合、その手続きを自ら行わねばなりません。提出にあたって気をつけるポイントとは? 今回は「労働保険の年度更新」についての知識を基本から学ぶことにしましょう。

  • (注1) 労働保険事務組合に事務委託している事業所は、労働保険事務組合から「賃金等の報告書」が送付され、賃金等を報告書に記載して事務組合に提出することになります。

「労働局ってとこから封筒が届いたんやけど……」と困惑気味に社長に話す経理ママ。「労働局? さっぱり心当たりないなぁ」と首をかしげる社長に、「それは労働保険の年度更新ですよ」と公認会計士試験に挑戦中の現代知恵蔵君が解説を始めた。「労働保険というのは……」

【お知らせ】がんばる企業応援マガジン最新記事のご紹介

1.労働保険とは

雇用保険と労災保険の二つを合わせて、労働保険と呼びます。

雇用保険

雇用保険は政府による強制保険制度です。労働者が失業したときに条件に応じて一定の給付金を受け取れる仕組みで、かつては失業保険と呼ばれていました。ハローワークが事務を取り扱い、保険料は事業主(会社)と労働者(社員)が原則折半して負担します。

労災保険

労働者災害補償保険法の略で、業務上または通勤によって労働者がケガや病気、あるいは死亡などした場合に、必要な保険給付をするための保険制度です。保険料は、全額事業主負担となっています。労災保険の事務は、都道府県労働局および労働基準監督署が取り扱っています。

目次へ戻る

2.年度更新とは

労働保険の年度更新とは、1)前年度にすでに支払っている保険料の精算をするための「確定保険料」の申告・納付と、2)新年度の「概算保険料」を納付するための申告とを同時に行う手続きのことをいいます。

この労働保険の保険料は、4月から翌年3月までの1年間の賃金総額に、定められた保険料率をかけて算出し、概算で前払いするのが原則となっています。前払いなので、実際に支払った賃金の総額が決まったときにあらためて精算する必要があり、これを翌年度分の保険金納付時に合わせて行うこととされています。

目次へ戻る

3.年度更新の流れ

申告納付書の用紙は、毎年春(5月末ごろまで)に送られてきます。用紙に印刷されている会社名などの情報に誤りがないかどうかまず確認しましょう。
年度更新の大まかな流れは以下の通りです。

3-1.確定保険料の計算

労働保険の保険料は、毎年4月1日から翌年3月31日までの1年間を単位として計算します。保険料は概算で前払いしているので、実際に支払った賃金に対して正確な保険料が出せるようになった時点で精算しなければなりません。

そこでまず前年度で支払った賃金総額に保険料率をかけて算出した保険料を確定する作業を行います。もしも前年度に納付している保険料がこの確定保険料より多い場合は、原則として新年度の保険料に充当します。逆に少ない場合は、追加納付しなければなりません。

保険料計算の対象となる賃金総額とは?

基本給、手当、賞与はもちろん通勤定期券なども含みます。賃金総額は、保険料や税金控除前の支払金額です。ただし、退職金や出張旅費、結婚祝金、死亡弔慰金などはこれに含まれません(注2)。

  • (注2)賃金総額に参入するもの、しないものは厚労省HPに例示されています。

参照:労働保険料等の算定基礎となる賃金早見表(例示)(厚生労働省)

ここに注意!
注意したいのは、末締め翌月払いの給与の取り扱いです。例えば3月末締め4月15日払いの給与は、労働保険では「3月分」となります。つまり、支給日ではなく締め日で考えるということです。

保険料計算の対象となる労働者とは?

雇用保険と労災保険とでは対象者の範囲が異なります。年度更新では、労働保険つまり労災保険と雇用保険の両方を同時に計算するので、それぞれに対象者をピックアップしておくようにしましょう。

労災保険の場合

労働者全員が対象となります。従って、外国人や学生アルバイト、日雇労働者も対象に含まれます。

雇用保険の場合

被保険者が対象となります。パートタイマーの場合は、31日以上引き続いて雇用される見込みがあり、1週間の所定労働時間が20時間以上であれば被保険者になります。また、4月1日現在で64歳以上の高齢者については、雇用保険の保険料が免除されるので、別に集計するようにしましょう。

労働保険料の計算法

平成24年4月から保険料率が改定されます。従って今年の場合、前年度の確定保険料と新年度の概算保険料を算定するための保険料率が異なるので注意してください。以下は、新年度の概算保険料の算定するための例で、かつ卸売業または小売業を営んでいる事業者の場合の料率を使った計算法です。

労災保険率表

労災保険率は年間賃金総額の1000分の3~103と定められていて、業種ごとに細かく分類されています。一般に、業務の危険度に応じて高くなるものと考えてよいでしょう。卸売業・小売業の場合で1000分の3.5となっています(平成24年4月1日改定)。

雇用保険率表

雇用保険率は大きく三つの事業で分かれています。平成24年度の料率は前年度から引き下げられています。

平成24年度の雇用保険料率

育児休業期間中の社員の労働保険料は?

育児休業期間に賃金を支払っているかどうかによります。賃金の支払いがない場合は、会社負担分と本人負担分、共に発生しません。育児休業期間中に関わらず、介護休業期間中や休職期間中などの賃金の支払いがない期間についても同様です。賃金の支払いがある場合は、通常通り保険料がかかることになります。

目次へ戻る

3-2.新年度の概算保険料の計算

新年度の概算保険料は、新年度に支払う予定の賃金総額から計算します。このときに、新年度の賃金総額の予定が前年度の100分の50以上100分の200以下(前年度の半額~2倍)の場合を除き、前年度の確定賃金総額を新年度の賃金総額として保険料を計算することになっています。

つまりよほど大きな変動がなければ前年の賃金総額で保険料を算定するのが原則ということです。

なお、雇用保険の社員負担分(被保険者負担分)は毎月の給料から天引きします。計算の結果、1円未満の端数が出たときは、50銭以下は切り捨て、50銭超は切り上げて処理します。

目次へ戻る

3-3.申告納付

「概算・確定保険料申告書」を所轄の労働基準監督署などに提出します。提出期限は6月1日から7月10日までです。申告書の1枚目のOCR用紙は労基署に提出(注3)し、2枚目が会社控になります。下段の納付書(領収済通知書)はそのまま返却され、後日、最寄りの金融機関で保険料を納付します。なお、概算保険料額が40万円以上の場合、または労働保険事務組合に労働保険事務を委託している場合には、3回の分納(注4)ができます。

  • (注3)金融機関で申告書提出と保険料納付を一気に済ますこともできます。会社控に受理印はもらえませんが、受理印がなくても特に支障はありません。
  • (注4)分割納入(延納)は、7月、10月、1月の3回払いとなります。

年度更新申告書計算支援ツール

厚生労働省のHPには、エクセル形式で賃金集計や労働保険料の申告書が作成できる「年度更新申告書支援ツール」が公開されています。

年度更新申告書支援ツール

目次へ戻る

【お知らせ】がんばる企業応援マガジン最新記事のご紹介