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電子手形とは?
電子手形は、紙の手形に替わる新たな支払方法として2009年11月からスタートし、普及が進んでいます。政府が施行した「電子記録債権法」に基づく決済サービスで、現物の手形を発行・保管する必要がなくなるので管理が楽で、印紙税の負担もなくなります。
「電子手形割引」「電子手形譲渡」「期日決済」のほか、従来の紙の手形ではできなかった「分割割引・分割譲渡」といった取引が、パソコンやFAXでできるといったメリットがあり、中小企業にとっては資金繰りの新たな手段として注目されています。
電子手形は略して「電手(でんて)」、または電子債権、電子記録債権を略して「電債(でんさい)」とも呼ばれます。
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1)紙の手形との違い
手形を発行する(振り出す)企業が当座預金を持つ点や、決済時に口座に資金がないと不渡りになるといったルールは、紙の手形と変わりません。電子手形が生まれたのは、紙の手形のデメリットを解消するため。では、紙の手形にはどんなデメリットがあるのでしょうか。
デメリット(1)紛失、盗難、偽造の問題
紙の手形の場合、盗難されたり紛失したりする可能性が常にあります。そのことを知らない第三者(善意の第三者)に手形が渡ると、もとの所持人は手形上の権利を失うこともありえます。 また偽造手形については、それが偽造だと証明できれば、発行したとされる企業が責任を問われることはないのですが、現実には社員による偽造が多く、そういったケースでは使用者責任を問われることになります。
デメリット(2)受け渡しや持参、輸送が必要
紙の手形では、物理的な手渡しが必要です。従って手形割引を受けたり、支払ってもらったりする場合は、銀行に手形を持参しなければなりません。さらに遠くの企業と手形取引をする場合は郵送・搬送が必要となります。
デメリット(3)保管などコストの問題
手形の作成・保管にかかるコスト、印紙税の負担などが必要になります。
以上のデメリットから近年は、手形の利用が大幅に減少し、代わって2009年11月に登場した電子手形の導入が拡大しています。電子手形のメリットは次のとおりです。
メリット(1)手間もコストもカット
ペーパーレスで管理できるので、手形を保管する金庫がいらなくなるなど、発行・保管の手間・費用を低減できます。輸送の問題も発生しませんし、印紙税の負担もなくなります。また資金を受け取る決済口座は送金と同様、普段取引している全国の預金取扱金融機関の口座が利用できます。
メリット(2)紛失・盗難リスクもなし
電子手形の場合、紙の手形のような紛失・盗難リスクがありません。災害などで手形を失うというようなこともなくなります。
メリット(3)期日になれば自動的に入金
銀行へ取立依頼に行かなくても口座に自動的に入金されます。この点は、電子手形の大きなメリットです。電子手形では、支払期日の2営業日前に記録機関から受取人(売り手)にFAXまたは電子メールで知らせてくれます。また受領した電子手形は、パソコンまたはFAXで簡単な申請をするだけで、無審査で現金化できます。
紙の手形だと……
手形の支払有効期限は期日日を含め3営業日内で、通常は期日前に取立依頼を銀行に出します。もしも経理担当者がうっかり取立依頼を忘れて有効期限を過ぎてしまうと最悪の場合、入金がなくなります。また取立依頼をしても、銀行で審査が行われるので現金化は翌営業日になります。
メリット(4)1円単位で分割できる
電子手形は、記録機関へパソコンやFAXで送信するだけで、1000円以上1円単位で分割することができます。このため電子手形の一部を割引して資金調達にまわし、残額はそのまま持っておくことや、一部を譲渡(従来の裏書)することもできます。こうした使い勝手の良さが中小企業の資金繰りに有効とされる理由です。
紙の手形だと……
例えば100万円の手形を銀行に持ち込んで手形割引によって現金化することはできますが、そのうち30万円だけ現金化して残額を手形のまま残すということはできません。
!電子手形の課題
メリットが多い電子手形ですが、課題もあります。偽造を防ぐためログイン時の厳重な個人認証や、企業・記録機関・金融機関の通信途中での不正アクセス防止の仕組みが必要となります。パソコン操作で申込みなどが簡単にできるため、利用企業ではセキュリティ対策がこれまで以上に必要となります。
以上、電子手形の導入効果を一覧でまとめてみました。
導入効果 | 支払企業 | 納入企業 |
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紙の手形との比較 | - 発行手続等における事務負担が軽減される。
- 手形の保管・管理負担が軽減される。
- 搬送代・郵送代が不要。
- 印紙税の課税対象外。
- 盗難・紛失リスクを回避できる。
| - 受取・集金が不要。
- 取立・割引の持込が不要。
- 必要な分だけ分割譲渡・分割譲渡割引が可能。
- 支払期日当日に資金化できる。
- 受取証が不要(印紙代不要)。
- 盗難・紛失リスクを回避できる。
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振込との比較 | - 納入企業に対して、割引手形と同様の資金調達手段を提供できる。
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2)電子手形の流れ
電子手形の仕組みを見ていきましょう。手形を発行する企業、受け取る企業、それぞれの取引銀行があり、その中心で電子債権記録機関が重要な役割を果たします。
電子債権記録機関とは
電子債権を記録、管理する機関で、民間の登記所ということになります。電子債権記録機関は、電子記録債権法に基づく指定を受けて業務を行います。現在のところ、メガバンクが設立した「日本電子債権機構株式会社」「SMBC電子債権記録株式会社」「みずほ電子債権記録株式会社」が電子債権記録機関としての業務を行っています。 また全国の金融機関が参加をする全国銀行協会による「全銀電子債権ネットワーク(でんさいネット)」も今後サービスを提供する予定です。利用者は「でんさいネット」に参加している取引金融機関を通じて間接的に「でんさいネット」を利用できるため、地方の信用金庫なども含め、これまで以上に幅広い金融機関や企業が電子手形の取引に関われるようになります。
電子手形の流れ
電子手形の発生から決済までの流れは以下のとおりです。
電子手形の発生(振り出し)
支払企業が電子手形を振り出す場合は、まず納入企業(売り手=受け取り企業)を債権者とする電子手形(電子記録債権)の発生依頼を請求事務代行会社(金融機関)に行い、電子債権記録機関において電子記録債権の発生が確定すると、その旨が代行会社から支払企業と納入企業に通知されます。
期日決済の場合
電子手形を支払期日まで保有していた場合、納入企業側での手続きは不要です。納入企業の指定口座には、債権額から所定の手数料を差し引いた金額が自動で振り込まれます。振り込まれた資金は、当日から使用可能です。
期日前に資金化(割引)する場合
取得した電子手形を支払期日前に資金化(手形の割引に相当)する場合は、納入企業から代行会社に期日前資金化(債権買取会社への譲渡)の依頼をします。記録機関で譲渡が確定すると、代行会社から納入企業に電子記録債権の譲渡(期日前資金化)の通知があります。
譲渡する場合
納入企業が取得した電子手形を、紙の手形の裏書譲渡のように取引先に譲渡する場合は、譲渡先を指定して代行会社に譲渡依頼をします。記録機関で譲渡が確定すると、納入企業と取引先の双方に代行会社から電子手形の譲渡が通知されます。
決済
支払企業(買い手)では、電子記録債権の支払期日には、発生させた電子記録債権の資金決済が必要となります。支払企業には、事前に代行会社から資金決済についての通知があり、決済に必要な資金を指定口座に入金しておかなければなりません。
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3)利用方法
電子手形の利用にあたっては、事前に利用契約を結ぶ必要があります。法人向けインターネットバンキングや電子債権決済サービスなどの利用申込書を金融機関に提出するなどして一定の審査を受け、利用契約締結といった手順となります。契約内容・利用料金などは金融機関ごとに定められています。
新規契約時の提出書類は、電子手形決済サービスを利用するための基本契約書、利用者登録票などのほか、商業登記簿謄本や印鑑証明書、本人確認記録表(運転免許証など担当者の住所確認ができる公的証明書の写し)などとなっています。金融機関・利用状況などにより提出書類も異なります。
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4)利用にあたっての注意
紙の手形を受け取ったら、まず署名など記載事項が完全であるかを確認しますが、電子手形の場合は、利用者からの記録請求をコンピュータで処理しているため、記載事項を手形のように細かく確認する必要はありません。しかし、額面、支払期日が契約のとおりであるかどうかは、当然、確認が必要です。
既にインターネットバンキングを行っている企業では当然のことですが、会社のパソコンで簡単に操作できるので、セキュリティ対策が重要です。ウイルス対策ソフトを最新にする、個人認証システムを導入するなど、考えられる手はすべて打っておくこと。出所のあやしいソフトはダウンロードしないといったことも従業員に徹底しましょう。
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