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2013年 3月 1日公開
【連載終了】専門家がアドバイス なるほど!経理・給与
【アーカイブ記事】以下の内容は公開日時点のものです。最新の情報とは異なる可能性がありますのでご注意ください。
テキスト: 梅原光彦 イラスト: 今井ヨージ
会社の活動と切っても切れない消費税。課税・免税の判定や、課税方式の選択など、消費税ではいくつかの岐路があります。選択によっては納税額に大きく差が出る場合も! そんなときに損をしないために知っておきたい消費税のアウトラインをご紹介します。
目次
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消費税は商品を購入したり、サービスの提供を受けたりしたときに課される税金です。実質的に消費税を負担するのは消費者ですが、これを納税するのは事業者となっています。このため消費税は、税の負担者(消費者)と納税者(事業者)が異なる「間接税」の一種とされ、預かり金的な性格がある税金として捉えられています。
税金を消費者から預かり、消費者の代わりに事業者が納付するというのが消費税です。事業者が売上などで預かった消費税から、仕入などで預けた消費税を差し引いて、残った金額を納税する仕組みとなっています。 消費税が法人税と違うのは、会社が赤字でも税金が発生するという点です。赤字企業は消費税を滞納することがあり、その場合は税務署に差し押さえられるため、消費税未納で倒産というケースもありえます。
日本国内ではほとんどの事業者が消費税の課税対象となる取引を行っています。しかし、すべての事業者に納税義務があるわけではありません。売上の少ない事業者は税額の計算の難しさも含めて、税金を負担する能力がないということで免税事業者とされます。
課税事業者か免税事業者かの判定は複雑です。
免税事業者となるための条件は、
ただし、
と定められています。
以下のチャートでご確認ください。
平成23年度の税制改正で、平成25年1月1日以後に開始する事業年度から、事業者免税制度が変わりました。免税事業者であるためには従来の基準期間に加えて、特定期間においても、課税売上高が1000万円以下であることが求められるようになりました。
消費税は、売上にかかる消費税額よりも仕入にかかる消費税額の方が大きいときには、その差額が戻ってきます(消費税の還付)。設立したばかりの会社は、事業を始めるにあたって建物を取得したり、機械や備品などを購入したりしますが、その投資に見合うだけの売上がいきなり上がるわけではありません。こういう場合は、還付の受けられる課税事業者を選んだ方が有利ということになります。
取引の中には課税取引と非課税取引があって、それぞれの取引により課税売上・非課税売上を判定します。会社の売上がすべて課税対象であれば問題はないのですが、ここに非課税取引が含まれていると課税売上高に対する仕入高を求める計算事務が複雑になってしまいます。 そこで特例として、年間の課税売上高が5億円以下の小規模事業者の場合*は、年間の売上高に占める課税売上高の割合が95%以上であれば、支払った消費税が全額控除されることになっています。これを「95%ルール」と呼びます。
非課税とされる主な取引
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消費税額の計算には原則的な方法(原則課税方式)と簡単な方法(簡易課税方式)の2種類があり、どちらを選ぶかは事業者の判断に任されています。会社の状況で変わりますが、選択によって納税額に大きな差が出ることもあるので注意が必要です。 ただし、すべての事業者が簡易課税方式を選べるわけではありません。簡易課税方式の適用を受けられるのは、基準期間における課税売上高が5000万円以下の事業者に限られます。適用を受けるには簡易課税制度選択届出書を提出期限までに提出しなければなりません。
消費税の本来的な計算方法です。売上にかかっている消費税から、仕入・経費にかかっている消費税を差し引いて納税額を算出します。
簡易課税方式では、課税売上高に「みなし仕入率」をかけて計算します。これにより税額を計算する手間はかなり軽くなります。 みなし仕入率は事業内容によって異なり、仕入割合が高いと考えられる業種ほどみなし仕入率も高くなっています。
例えば小売業*であっても、実際は事業者**に販売している場合があるとします。あるものは消費者に、あるものは事業者にと、売上をきちんと分けられれば、事業者に対する売上の分には卸売業としてのみなし仕入率90%を使うことができます。
*消費税法上では「仕入れてきた商品を形状など変えずに事業者に売るのが卸売業」で、「一般消費者に売るのが小売業」とされています。**会社のすべてと個人事業者のこと
業種ごとにみなし仕入率を区分けするという原則に対しては特例があります。いわゆる75%ルールというものです。一つの業種で75%以上の課税売上高があれば、他の業種にもそのみなし仕入率を適用することができるのです。高いみなし仕入率が適用される方が、その分支払った消費税を多く計算できるので、節税という観点からは有利ということになります。
例えば卸売業がメインの会社が副業として不動産経営もやっていたとします。そして不動産部門の売上が全体の25%未満であれば、卸売業の売上高が全体の75%以上を占めています。従って不動産部門も含めてすべての売上にかかる消費税額を卸売業のみなし仕入率で計算できることになります。
原則課税方式か簡易課税方式か、どちらを選ぶと有利になるかは、実際に計算してみなければ分かりません。
卸売業を例にとって考えてみましょう。
売上 1050000円(消費税50000円)仕入 840000円(消費税40000円)
原則課税方式で計算すると納付額は50000円-40000円=10000円
簡易課税方式で計算すると納付額は50000円-50000円×90%=5000円
というように、簡易課税方式の方が納付額は低くなります。ところが、どんな場合でも簡易課税方式の方が有利とは限りません。次期以降で多額の設備投資をした場合は、課税仕入高(消費税がかかった支出)が多くなり、原則課税方式だと多めに支払った消費税の還付を受けることができるのです。従って、今後の事業展開や売上を予測しながら、税理士など専門家の助言を受けて有利な方を選択するとよいでしょう。安易に簡易課税方式を選択すると、そのあと2年間は変更ができないので慎重に検討しましょう。
簡易課税方式を選択する場合には、「消費税簡易課税制度選択届出書」を所轄の税務署に届けなければなりません。提出期限は翌期になる前日まで。すなわち適用する次年度が始まる前に届け出なければなりません。何も届出書を提出しない場合は、原則課税方式となります。
消費税の会計処理は、税抜処理と税込処理の2通りあります。これもどちらを採用するかは事業者の判断に任されています。ただし、免税事業者は税込処理でなければな りません。また、売上は税抜処理で、仕入・経費は税込処理でというように使い分けることも可能です。
消費税額を除いて計上する方法です。売上では、消費税は相手からの預かり金と考えて「仮受消費税」として処理し、仕入では「仮払消費税」という勘定科目で処理します。 交際費や少額減価償却資産などは消費税分が除かれるので、限度額いっぱい使えるというメリットがあります。
売上、仕入、経費に消費税をのせて計上する方法です。消費税額は会社の経費として損金になり、租税公課として計上することになります。逆に還付金は雑収入として益金に計上します。 メリットとしては計算の仕方が簡単ということですが、交際費や少額減価償却資産では消費税額が加算されるため不利になります。
両者を比べると、多少複雑でも税抜処理の方が、より適正な会計処理といえるでしょう。消費税が費用や収入として全く発生せず、損益に無関係となるからです。いずれにしても、どちらの会計処理を選択するかは会社の状態によって考慮すべきことが異なります。税理士など専門家の助言を受けて判断してください。
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