2013年 4月

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「パートタイマーの雇い入れ:知っておきたい法律・手続き」の巻

テキスト: 梅原光彦 イラスト: 今井ヨージ

いまやどんな規模・業種の会社でも貴重な戦力として欠かせないパートタイマー。もちろんパートであっても労働者の権利は法律で保護されています。パートさんに気持ちよく働いていただけるよう、雇用にあたってのポイントを整理しておきましょう。

「パートタイマーの雇い入れ:知っておきたい法律・手続き」の巻

パートタイマーとは?

パートタイマーとは「1週間の所定労働時間が、同じ事業所で雇用されている通常の労働者に比べて短い労働者」です。ほかに「アルバイト」「準社員」「嘱託」「契約社員」「臨時社員」などの呼び方がありますが、法律上はすべて同じ扱いで、区別はありません。従ってパートタイマーにも、労働基準法、最低賃金法、労災保険法、男女雇用機会均等法、育児介護休業法などの法律の適用があります。

パートタイマー=パートタイム労働者は増加する一方で、平成18年の厚生労働省の調査では、1205万人に達していることが明らかにされています。これらパートタイム労働者が安心・納得して働ける就業環境を整えるため「パートタイム労働法」が定められています。

改正パートタイム労働法
平成6年10月1日から施行されている「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」のことを、一般にパートタイム労働法と呼んでいます。その後、大きな法改正があり、現在では改正パートタイム労働法となっています(平成20年4月1日から施行)。少子高齢化や労働力人口が減少していく中で、パートタイム労働者が、よりいっそう能力を発揮できるよう雇用環境を整えることが改正の目的です。改正により、職務が正社員と同じ場合などにはパートタイム労働者と正社員を差別的に取り扱うことを禁じ、パートタイム労働者の正社員への転換を進めることも企業に義務づけられました。

1) 社会保険・雇用保険

パートタイマーであっても一定の条件を満たしている場合は、社会保険に加入しなければなりません。
加入が義務づけられる条件は以下の通りです。いずれも(1)と(2)の両方を満たす場合には加入しなければなりません。

●健康保険と厚生年金

  1. 1日または週の所定労働時間が社員の4分の3以上であること
  2. 1カ月の所定労働日数が社員の4分の3以上であること

●雇用保険

  1. 1週間の労働時間が20時間以上であること
  2. 31日以上の雇用が見込まれること

なお労災保険についてはパートタイマーも含めてすべての従業員が加入しなければなりません。

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2) 雇用通知書

パートタイマーを採用するときには、給料などの雇用条件などは事前に定めておき、契約時に提示しなければなりません。あいまいな口約束では後々トラブルになりやすいからです。このためパートタイマーの採用に際しては雇用通知書を作成して交付するのが一般的となっています。ただし、パートタイマーの就業規則がある場合は雇用通知書を交付する必要はありません。

雇用通知書の明示事項

  1. 契約期間
  2. 仕事をする場所と仕事の内容
  3. 就業時間(始業・就業の時刻や所定時間外労働の有無)
  4. 休日・休暇
  5. 賃金
    さらに改正パートタイム労働法では、上記に加えて次の3つの事項を、文書を交付するなどして、速やかにパートタイム労働者に明示*することが義務づけられています。
  6. 昇給の有無
  7. 退職手当の有無
  8. 賞与の有無
  • * 3つの事項についてはパートタイム労働者が希望した場合は電子メールやFAXでも可能

退職金や賞与の支給については法律上の義務はありません。支給額や支給方法、支給日、支給対象者は原則として会社が自由に決めることができます。ただし、パートタイム労働法に基づき通常の社員との均衡を図ることが求められています。

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3) 就業規則

パートタイマーを雇用する企業では、パートタイマーに適用される就業規則を作成するのが一般的です。一般社員とは違ってパートタイマーには適用しない項目(慶弔休暇、休職など)や、労働条件が異なる項目(出退勤の時間や賃金の構成など)がある場合は必ずパートタイマー就業規則に定めなければなりません。パートタイマー就業規則がなければ、パートタイマーにも一般社員と同じ就業規則が適用されます。
以下は就業規則を作成するうえで気をつけるべきポイントです。パートタイマーだからといってもおろそかにできない項目です。

●労働時間の決定

パートタイマーの事情を考慮して労働時間を決定します。生活上のさまざまな制約から短時間労働を選択している人も多いので、特に時間外労働や休日労働が可能かどうかについては採用面接でしっかり確認しておく必要があります。

●年次有給休暇

パートタイマーであっても有給休暇は与えなくてはなりません。年次有給休暇は、事業所の規模や雇用形態に関わらずすべての労働者に適用されます(労働基準法第39条)。たとえ、週1回の勤務でも同様です。
パートタイマー(週所定労働時間が30時間未満の者)に対する年休の付与日数は、その割合に応じて計算された日数となります。これを、比例付与方式と言います。
比例付与日数は、労働基準法施行規則において定められています。例えば週4日勤務の場合、雇入れの日から起算した継続勤務期間が6カ月を超えると7日の年次有給休暇が与えられます。
なお当然のことながら使用者は、年次有給休暇の取得を拒否することはできません。

パートタイム労働法による年次有給休暇の比例付与日数

週所定
労働日数
1年間の
所定労働日数
勤続年数
6カ月1年
6カ月
2年
6カ月
3年
6カ月
4年
6カ月
5年
6カ月
6年
6カ月
以上
4日169日~216日7日8日9日10日12日13日15日
3日121日~168日5日6日6日8日9日10日11日
2日73日~120日3日4日4日5日6日6日7日
1日48日~72日1日2日2日2日3日3日3日

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4) その他の注意

●女性パートタイマーの場合

産前6週間について女性が請求した場合および産後8週間については労働基準法に基づき、就業させることはできません。母性保護の観点によるものです。同じく、妊娠中の女性が請求した場合には、負担の軽い業務に転換させなければなりません。

さらに母性保護措置として、労働基準法により次の規制があります。

  1. 妊産婦などの妊娠、出産、哺育などに有害な一定の業務には就業させないこと
  2. 変形労働時間制が採られる場合であっても、妊産婦が請求した場合には、1日および1週間の法定労働時間を超えて労働させることはできないこと
  3. 妊産婦が請求した場合には、時間外労働・休日労働・深夜業が制限されること
  4. 生後満1年に達しない子を育てる女性は、1日2回各々少なくとも30分の育児時間を請求できること

●雇止め

使用者は、パートタイム労働者*を雇止めにする場合は、少なくとも契約の期間が満了する日の30日前までにその予告をしなければなりません。

  • * この場合のパートタイム労働者とは、1年を超える契約期間を締結しているか1年以下の契約期間の労働契約が更新あるいは反復更新され、最初の契約を締結してから継続して1年を超えて雇用されている人のことを言います。

また、使用者は、雇止めを予告した後、あるいは雇止めの後にパートタイム労働者から雇止めの理由について証明書を請求された場合は速やかにこれを交付しなければなりません。

なお、この証明書で明示すべき雇止めの理由は単に「契約期間の満了」というだけでなく、別の理由が必要です。次のような理由が例として考えられます。

  • 前回の契約更新時に、本契約を更新しないことが合意されていたため
  • 契約締結当初から、更新回数の上限を設けており、本契約は当該上限にあたるため
  • 担当していた業務が終了・中止したため
  • 事業縮小のため
  • 業務を遂行する能力が十分ではないと認められるため
  • 職務命令に対する違反行為を行ったこと、無断欠勤をしたこと等勤務不良のため

●パートタイム労働者を正社員に

改正パートタイム労働法により、使用者には正社員への転換を推進するための措置を講じることが義務化されました。

具体的な措置の例としては次のようなものがあげられます。

  • 正社員を募集する場合、その募集内容を既に雇っているパートタイム労働者に周知する
  • 正社員のポストを社内公募する場合、既に雇っているパートタイム労働者にも応募する機会を与える
  • パートタイム労働者が正社員へ転換するための試験制度を設けるなど、転換制度を導入する

ただし、既に雇っているパートタイム労働者を優先的に正社員に採用しなければならないというわけではありません。また、応募の機会はすべてのパートタイム労働者に平等に与える必要がありますが、選考基準は企業側で定めればよいということになります。

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