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2013年 5月 1日公開
【連載終了】専門家がアドバイス なるほど!経理・給与
【アーカイブ記事】以下の内容は公開日時点のものです。最新の情報とは異なる可能性がありますのでご注意ください。
テキスト: 梅原光彦 イラスト: 今井ヨージ
役員報酬は会社の損金になり、節税に有利になるよう考えられることも多いようです。それだけに制約もあるので、いくつか注意すべき点も出てきます。今回は役員報酬のポイントをご紹介します。
目次
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ひと口に役員といっても、会社法と税法ではその範囲が異なります。税法上では、会社法に定める取締役や監査役以外であっても、経営に従事していれば役員とみなされます。経営者が一線を退いたとして「相談役」や「顧問」などの名称に変えても、実質的にその会社の経営にタッチしているかどうかが問われます。また同族会社の場合には、使用人であっても会社の持株割合が5%を超える場合や、「使用人兼務役員」(後述)の場合は、税法上の役員に含まれます。
税法上の役員と会社法上の役員
役員(経営者)の職務とは
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役員に対して会社が支払うものにはいくつかの種類があります。まずは(1)従業員の給与にあたる役員報酬、そして(2)役員賞与、(3)役員退職金です。会社法では(1)~(3)をまとめて「報酬等」と呼んでいますが、税法では(1)と(2)を合わせて「役員給与」として、一定の要件を満たしたものだけを損金として扱うものとしています。
そのほかに、会社が役員から金銭を借り入れた場合に支払う支払利息や、役員社宅の家賃など、会社から役員への支出には、さまざまなものがあります。ただし、平成18年に会社法が改正され、役員への支払いは原則として職務執行の対価として位置づけられるようになりました。これにともなって、税法上でも役員に対する「職務執行の対価としての役員給与」という考え方で一本化されています。
役員への支出
役員への支出、すなわち役員給与は、税法上の要件を満たすもの以外は損金に算入できないので注意が必要です。 損金算入が認められているのは下の6つです。いずれも社会的な常識からみて不当に高額な場合、その常識的な額を超えた部分については損金算入が認められません。
役員報酬の額を決める際の参考に――。平成24年度税額改正において、給与が1500万円を超える場合、給与所得控除は245万円が上限と定められました(平成25年分以後適用)。したがって、改正によって給与等の収入が1500万円以下の場合には所得税額等の変更はありませんが、1500万円超の場合は増税となります。
中小企業では、資金繰りの都合で、役員の報酬を運転資金に使うことがありえます。しかし、役員報酬は「定期的に支給されるもの」。報酬の支給状況に波がある(不定期に支払われる)と、役員賞与とみなされ、損金に算入できなくなることがあります。
役員報酬が未払金として処理されているときには、後からまとめて支払っても問題にはなりません。そうでないときにまとめて払った場合は役員賞与とみなされ、会社の損金に算入できません。社長に支払われる役員報酬があまりに長期間未払いのままだと、「その社長はいったいどうやって生活しているのか」と不審がられ、会社の費用全般が怪しまれることになりかねません。
監査役の報酬は、会社が軌道に乗るまで支払わないということでも税務上は問題ありません。監査が年に数回程度であれば、報酬の支給を年1回にすることも例外的に認められています。
特に中小企業の場合、役員に社長の妻や子どもが名前を連ねるのは、よくあることです。しかし、経営者としての職務を遂行していないにもかかわらず、役員報酬だけを支給することはできません。例えば、大学生の息子を監査役にしたり、未成年者の子どもを役員にしたりといった事例では、役員報酬が否認されるケースがあります。実質的に役員としての責務を果たせているか否かがポイントになります。
役員限定の人間ドックや旅行などの費用は、役員に対する経済的利益の供与ということで、役員賞与にあたります。この場合は当然、源泉徴収しなければなりません。
社宅の取得や保有にかかる支払いはすべて費用として会社の所得から控除できるので、節税メリットが大きい役員社宅。しかし、家賃なしで貸し出すと役員賞与とされる場合があります。また、家賃を取るにしても極端に安い家賃設定の場合は、会社の所得から控除する費用とは認められません。国税庁ホームページの「タックスアンサー」に「役員に社宅などを貸したとき」という項目があります。このガイドラインを参考に家賃を設定するとよいでしょう。
国税庁ホームページ「役員に社宅などを貸したとき」
役員のなかでも、使用人として職制上の地位があり、常時使用人としての職務に従事する者は、役員も兼ねている使用人=「使用人兼務役員」と呼ばれ、法人税法上の役員に含まれます。中小企業ではよくあることで、「取締役営業部長」や「取締役経理部長」などといった肩書きを持っている人のことです。
使用人兼務役員の場合、毎月支払われる給与(使用人部分)+役員報酬が損金になるだけでなく、その使用人部分に対して支払われた賞与も損金になります。このため使用人兼務役員として認められると、会社の節税という面では有利になってきます。ただし、一方で、中小企業の場合などは特に、経営の実権を握る役員が思い通りに報酬などを決めやすいという状況もままあります。このため課税の公正性を図るという面から、使用人兼務役員の報酬については規制が設けられています。また税務署のほうでも、役員報酬が租税回避行為に利用されることがないよう、使用人兼務役員にあたるかどうかをシビアに見ています。
使用人兼務役員として認められるには、原則次の要件を満たす必要があります。
同族会社の場合、使用人兼務役員として認められるには、さらに原則次の要件を満たすことが求められます。
使用人兼務役員の賞与であれば無条件に損金になるわけではありません。損金として認められる要件は次の通りです。
対外的に聞こえがいいからという理由で肩書きを「常務取締役」などとすると、使用人兼務役員とは認められないこともあります。誤解を招く肩書きは避けることです。
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