2013年11月

専門家がアドバイス なるほど!経理・給与

「経理担当者が見落としがちな年末調整」の巻

テキスト: 梅原光彦 イラスト: 今井ヨージ

年末調整の時期は毎年やってくるので何度か経験すると慣れてくるもの。ただし、経験者でも、ついうっかり確認をし忘れる作業もあります。今回は年末調整で、見落としがちなポイントに絞って解説します。

「経理担当者が見落としがちな年末調整」の巻

1) 見落としがちな所得控除

年末調整のときに配布する「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」にはいくつも気をつけたいチェックポイントがあります。
申告書の現物はこちらになります。

「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」記載例

国税庁HP 平成26年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書

この中で、生命保険料控除や社会保険料控除についてはしっかりチェックする人が多いのですが、ついつい見落としがちになってしまうのが、

障害者
寡婦(寡夫)
勤労学生

といった項目です。
これらの控除を受けるためには該当する事項を扶養控除等の(異動)申告に記載する必要があります。

障害者、寡婦(寡夫)、勤労学生の記入欄(下記資料より抜粋)

国税庁HP 平成26年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書

扶養控除等の(異動)申告

※画像をクリックすると大きなサイズでご覧いただけます

a.障害者控除

ひと口に障害者と言っても外見からは全く分からない人もいます。中には障害者であることを知られたくないと考えている人もいます。しかし、そういう方々も申請すれば必ず控除が受けられる制度がある、ということは知っておく必要があります。

障害者控除とは

納税者自身または控除対象配偶者および扶養親族*(子どもや親など)が所得税法上の障害者にあてはまる場合には、所得控除を受けることができます。これを障害者控除と言います。

*納税者が扶養している配偶者および扶養親族で、合計所得金額が38万円以下の人です。給与年収で言うと103万円以下の人になります。

所得控除できる金額は

障害者1人について27万円
特別障害者は40万円

なお、障害者控除は、扶養控除の適用がない16歳未満の扶養親族(年少扶養親族)を有する場合においても適用されます。

※ワンポイント解説

ここで言う障害者は本人以外も含まれます。例えば、納税者が扶養している親族が障害者手帳を持っているのであれば、それによって障害者控除を受けることができます。この制度の場合、対象範囲がかなり広く、「自分以外が障害者であるとき」も控除が受けられるということがあまり知られていないので、見落とされるケースはかなり多いと言えます。

特別障害者の場合の加算

控除対象配偶者または扶養親族が特別障害者に該当し、かつ、納税者または納税者の配偶者もしくは納税者と生計を一にするその他の親族のいずれかとの同居を常況としている場合は、障害者控除の額に35万円が加算されます。

※ワンポイント解説

妻または親族が特別障害者に該当していても「同居を常況としている場合」でなければ控除は受けられません。

障害者控除の対象となる人の範囲

障害者控除の対象となる人の範囲は国税庁のサイトにある通りです。特別障害者についても各項目で定められています。
見落としがちなポイントとして気をつけたいのは、1.障害者手帳を持っているかどうか、2.寝たきりの家族(要介護・要支援認定高齢者)の介護をしているかどうか、です。

国税庁ホームページ

1.身体障害者手帳を持っている人

障害者控除の対象となる人の中で該当者が多いのがリストの4番目、身体障害者手帳を持っている人です。

(4) 身体障害者福祉法の規定により交付を受けた身体障害者手帳に、身体上の障害がある人として記載されている人

このうち障害の程度が身体障害者手帳に1級または2級と記載されている人は、特別障害者になります。経理担当者は確認のために納税者から障害者手帳のコピーをもらっておくとよいでしょう。

2.寝たきりの家族(要介護・要支援認定高齢者)の介護をしている人

同じくリストの8番目の該当者も多いと言えます。

(8) その年の12月31日の現況で引き続き6ヶ月以上にわたって身体の障害により寝たきりの状態で、複雑な介護を必要とする人、この人は特別障害者となります。
このように障害者手帳がなくても、高齢の両親などが「寝たきり」状態になった場合でも身体障害者等に準ずる者として控除対象となります。控除を受けるには、自治体が発行する障害者控除対象者認定書が必要です。

※ワンポイント解説

要介護・要支援認定高齢者以外にも軽度・重度な障害がある人で障害者手帳の交付を受けていない方についても、地方自治体や福祉事務所長の認定を受けた場合には障害者控除・特別障害者控除の対象になります。

障害者控除対象者認定書

自治体は介護認定の資料等を参考に本人の身体状況等を確認し、障害者控除対象者認定書を交付します。この認定書を年末調整の際に、提出すると税法上の障害者控除が受けられます。

自治体は介護認定の資料等を参考に本人の身体状況等を確認し、障害者控除対象者認定書を交付します。この認定書を年末調整の際に、提出すると税法上の障害者控除が受けられます。

認定の要件は厚生労働省が取り扱いを定めていますが、原則としてどこの自治体でも同じです。

障害者控除対象者の認定基準

 認定基準
障害者(1) 知的障害者(軽度・中度)に準ず。知的障害者の障害の程度の判定基準(重度以外)と同程度の障害の程度であること
(2) 身体障害者(3級~6級)に準ず。身体障害者の障害の程度の等級表(3級~6級)と同程度の障害の程度であること
特別障害者(1) 知的障害者(重度)等に準ず。知的障害者の障害の程度の判定基準(重度)と同程度の障害の程度であること
または
精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者と同程度の障害の程度であること
(2) 身体障害者(1級、2級)に準ず。身体障害者の障害の程度の等級表(1級、2級)と同程度の障害の程度であること
(3) 寝たきり高齢者常に就床を要し、複雑な介護を要する状態であること
(6ヶ月程度以上臥床し、食事・排便等の日常生活に支障のある状態)

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b.寡婦・寡夫控除

寡婦(寡夫)は、チェックし忘れる人が多い項目です。何より寡婦(寡夫)という言葉になじみがなく、自分とは関係ないものとしてスルーしがちです。
また、プライベートな領域のことでもあるので、あえてマルをつけない人もいます。もちろんプライバシーについては配慮が必要ですが、控除があるのとないのとでは税額に大きく差が出ますので、所得控除のメリットを周知しておくことは大切です。

寡婦(寡夫)とは

  1. 夫(妻)と死別した人
  2. 離婚した後、婚姻をしていない人
  3. 夫(妻)の生死が明らかでない人

のいずれかの人については税法上の寡婦(寡夫)になる可能性があります。

※ワンポイント解説

寡婦(寡夫)に該当する人で最も多いのが、2.のケースです。特に男性の場合、自分は関係ないと思っている人も多いのではないでしょうか。しかし、税法上は男女の区別なく寡婦(寡夫)として認定されます。
3.の夫(妻)が災害などで行方不明になったケースも同様です。
税法上は男女に区別はないというものの、控除を受けるには男女で要件や控除額が異なる点も要注意です。女性の場合、「寡婦」と「特別寡婦」の二つの控除があることもポイントです。

寡婦控除とは

寡婦控除は、女性の納税者が所得税法上の寡婦にあてはまる場合に受けられる所得控除です。
所得控除できる金額は27万円です。

寡婦の要件

寡婦とは、納税者本人が、その年の12月31日現在で、次のいずれかにあてはまる人です。寡夫とは少し要件が異なります。

  1. 夫と死別、もしくは離婚した後婚姻をしていない人、または夫の生死が明らかでない一定の人で、親など扶養親族がいる人、または生計を一にする子*がいる人
  2. 夫と死別した後婚姻をしていない人、または夫の生死が明らかでない一定の人で、合計所得金額が500万円以下の人

*この場合の子は総所得金額等が38万円以下で、他の人の控除対象配偶者や控除対象扶養親族となっていない人に限られます。

※ワンポイント解説

1.か2.か「いずれか」にあてはまる人は寡婦と認められます。1.は扶養の範囲内の親や子どもがいる場合で、年収の制限はありません。2.は扶養の範囲内の親や子どもがいなくても合計所得金額が500万円以内であれば認められます。
さらに女性の場合、「特別寡婦」という特例も設けられています。

特別寡婦とは

寡婦に該当する人が次の要件のすべてを満たすときは、特別寡婦に該当します。
寡婦控除の額は35万円となります。

  1. 夫と死別し、または離婚した後婚姻をしていない人や、夫の生死が明らかでない一定の人
  2. 扶養親族である子がいる人
  3. 合計所得金額が500万円以下であること

※ワンポイント解説

寡婦の要件1.に「500万円以下」と「扶養親族である子がいる人」という制限をつけ加えたところがポイント。離婚した女性でこの制度を知らない人がまだまだ多いのが現状です。所得金額の制限が500万円以下というのは、給与所得だけの人の場合だと給与年収が6,888,889円以下ということになります。

合計所得金額とは

純損失、雑損失、居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失および特定居住用財産の譲渡損失の繰越控除を適用する前の総所得金額、特別控除前の分離課税の長(短)期譲渡所得の金額、株式等に係る譲渡所得等の金額、先物取引に係る雑所得等の金額、山林所得金額、退職所得金額の合計額を言います。

寡夫控除とは

寡夫控除は、男性の納税者が所得税法上の寡夫にあてはまる場合に受けられる所得控除です。控除できる金額は27万円です。

寡夫の要件

寡夫とは、納税者本人が、その年の12月31日の現況で、次の1.~3.の要件すべてにあてはまる人です。

  1. 合計所得金額が500万円以下であること
  2. 妻と死別、もしくは離婚した後婚姻をしていないこと、または妻の生死が明らかでない一定の人であること
  3. 所得金額等が38万円以下でほかの人の控除対象配偶者や控除対象扶養親族になっていない生計を一にする子がいること

※ワンポイント解説

女性の場合は子どもがいなくても控除が受けられますが、男性の場合は上の三つの要件すべてに該当しないと控除が受けられないことになります。

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c.勤労学生控除

勤労学生控除は、納税者本人が所得税法上の勤労学生にあてはまる場合に受けられる控除です。いわゆる学生アルバイターで以下の要件にあてはまれば勤労学生となります。所得控除額は27万円です。

勤労学生とは

その年の12月31日の現況で、次の三つの条件のすべてにあてはまる人です。
最近では9月に卒業するケースもありますが、当然ながら、そういう人はあてはまりません。

1.給与所得などの勤労による所得があること

2.合計所得金額が65万円以下(年収で言うと額面で130万円)*で、しかも1.の勤労に基づく所得以外の所得が10万円以下であること

3.特定の学校の学生、生徒であること

*給与所得だけの人の場合、収入金額が130万円以下であれば給与所得控除65万円を差し引くと所得金額が65万円以下となります。

特定の学校とは

次のいずれかの学校です。

イ. 学校教育法に規定する小学校、中学校、高等学校、大学、高等専門学校など

ロ. 国、地方公共団体、学校法人等により設置された専修学校又は各種学校のうち一定の課程を履修させるもの

ハ. 職業能力開発促進法の規定による認定職業訓練を行う職業訓練法人で一定の課程を履修させるもの

勤労学生控除を受けるための手続き

特定の学校のロ、およびハの専修学校、各種学校、またはいわゆる職業訓練学校の生徒等は、在学する専修学校から必要な証明書を受けて扶養控除等の(異動)申告に添付をしなければいけません。

※ワンポイント解説

必要要件ではありませんが、経理担当者は念のため、本人から学生証のコピーをもらっておくとよいでしょう。
各種学校や専修学校の生徒、職業訓練法人の認定職業訓練を受けている人については、その学校や法人から交付される上記の証明書が必ず必要です。
学生であるかどうかに年齢は関係ありません。勤務しながら大学院で学ぶ社会人学生も増えていますが、合計所得金額が65万円を超えているかどうかがポイントです。多くの場合は、ファーストフード店やコンビニエンスストアなどで継続的に働く学生が対象となります。

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2)忘れがちな扶養控除の異動申請

扶養控除等(異動)申告書の回収

役員・従業員の中には、主たる勤務先であっても「確定申告をするので扶養控除等の(異動)申告を提出しない」という人がいます。しかし、仮に確定申告するとしても必ず回収をしてください。扶養控除等の(異動)申告の提出がないと、甲欄ではなく乙欄で毎月の給与に係る源泉徴収税額を徴収しなければいけなくなります。

参考までにこの表(給与所得の源泉徴収税額表)を見てください。

国税庁HP 給与所得の源泉徴収税額表(平成26年分)

※ワンポイント解説

社会保険料等控除後の給与等の金額が10万円の場合、扶養親族が0人だと源泉徴収税額は720円、20万円の場合、扶養親族が0人だと4,770円、1人だと3,140円、2人だと1,530円となっています。
そして一番右の乙欄を見ると、20万円の場合で2万900円を徴収することになります。扶養控除等(異動)申告書を提出しないのであれば強制的に乙欄の税額になるので必ず回収しましょう。
もちろん、確定申告をすれば多めに徴収されたぶんは還付されて返ってくるのですが、そういう人でも、少ない源泉徴収税である甲欄の額をイメージしている人が大多数です。扶養控除等(異動)申告書は原則通り、回収しておくにこしたことはありません。

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