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税額控除の基本
企業が当期純損失であれば、原則として法人税および復興特別法人税は課されません。特に中小法人*などでは、当期に利益が発生していても、過去の事業年度に生じた青色欠損金があれば、その金額を控除して法人税等を計算することができます。また、法人税が課税される黒字企業であっても、次のような税額控除の制度があります。
*資本金の額が1億円以下で資本金の額が5億円以上の法人の100%子会社でない法人を言います。
税額控除とは
税額控除とは法人税から直接控除ができる制度です。かつてOA機器を購入した場合に一定の税額控除が受けられた時期がありました。このように税額控除は、内需拡大や雇用創出など、その時々の政策目的で制定されることが多い制度と言えます。
主な税額控除
主な税額控除には次の三つがあります。概要のみ記します。
a.所得税額の控除
法人が支払いを受ける利子等、配当等から源泉徴収される所得税の税額は、法人税の税額から控除することができます。
b.外国税額控除
外国税額控除とは、国際的な二重課税を調整する目的で、外国で納付した外国税額を一定の範囲で税額から控除する仕組みです。
c.試験研究費にともなう税額控除
その事業年度において損金の額に算入される試験研究費の額がある場合に、その試験研究費の一定割合の金額をその事業年度の法人税額から控除することが認められています。
以上のように、法人税から直接控除ができる制度が主にあります。続いて、平成25年4月1日から開始する事業年度から適用*される、アベノミクスの目玉である雇用促進税制と所得拡大促進税制、すなわち雇用を増やし、所得を上げることを目指した二つの税額軽減の制度を紹介しましょう。
*措置法のため、一定の期間が過ぎると適用が終了となります。
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雇用促進税制の拡充
一定の期間に雇用者の数が増えた法人に税額控除が認められる制度です。適用年度中に、中小企業者等の場合は雇用者数を2人以上(大企業は5人以上)、かつ10%以上増加させるなど一定の要件を満たした事業主が、法人税の税額控除の適用が受けられます。
適用までの流れ
ポイント1
雇用の一層の確保を図る観点から改正され、税額控除額を増加雇用者数1人当たり20万円から40万円に引き上げられました。
ただし、中小企業者等の場合は当期の法人税額の20%(大企業は10%)が限度になります。
ポイント2
平成25年4月1日から平成26年3月31日までの間に開始する事業年度に適用されます。
ポイント3
適用を受けるためには、あらかじめ「雇用促進計画」をハローワークに提出する必要があります。
ポイント4
所得拡大促進税制とは選択適用となります。
適用要件
次の1.から5.までの要件をすべて満たしている必要があります(適用年度開始の日の前日における雇用者数が0である場合、3.の要件は不要となります)。なお、若年層の雇用増を主たる目的としているため、高年齢雇用者の数は含まない旨の但し書きが各要件に添えられています。
1.前期および当期に事業主都合による離職をした雇用者および高年齢雇用者がいないこと
[前期とは]
当期開始の日前1年以内に開始した各事業年度のこと。
⇒例えば「当期」が平成25年4月1日始まりだとすると、「当期開始の日前1年以内」とは平成24年4月1日~平成25年3月31日の間ということになります。
2.基準雇用者数が2人以上(大企業については5人以上)であること
[基準雇用者数とは]
当期末の雇用者の数から適用年度開始の日の前日の雇用者(当期末において高年齢雇用者に該当する者を除く)の数を引いた数です。
⇒例えば「当期」が平成25年4月1日始まりだとすると、平成26年3月31日の雇用者数から平成25年3月31日の雇用者数を引いた数になります。
[中小企業者とは]
次の二つの要件に該当する法人を言います。
・資本金の額等が1億円以下の法人
・同一の大規模法人に一定の株式を保有されていない法人
3.基準雇用者割合が10%以上であること
[基準雇用者割合とは]
基準雇用者数を適用年度開始の日の前日雇用者(当期末において高年齢雇用者に該当する者を除く)の数で除した数です。
⇒例えば、雇用者が3人から5人に増えたとすると、基準雇用者は5-3=2人、適用年度開始の日の前日雇用者=3人、基準雇用者割合は2÷3=66%となり、10%を超えます。
4.給与等支給額が比較給与等支給額以上であること
[給与等支給額とは]
当期の所得の金額の計算上損金の額に算入される給与等(雇用者に対して支給するものに限り、当期末に高年齢雇用者に該当する者に対して支給するものを除く)の支給額を言います。
[比較給与等支給額とは]
次の算式により計算した額を言います。なお、前期の給与等の支給額には、当期末に高年齢雇用者に該当する者に対する支給額は含まれません。
前期の給与等の支給額 + (前期の給与等の支給額×基準雇用者割合×30%)
また、適用年度開始の日の前日における雇用者数が0である場合は、次の算式により計算した額が比較給与等の支給額となります。
前期の給与等の支給額 + (前期の給与等の支給額×30%)
前期の月数と当期の月数が異なる場合には、所要の調整が必要です。
5.雇用保険法第5条第1項に規定する適用事業(一定の事業を除く)を行っていること
⇒「雇用保険法第5条第1項に規定する適用事業を行っている」企業は、従業員を雇用保険に加入させている法人または個人事業主という意味です。
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所得拡大促進税制の創設
個人所得の拡大を図るために創設されたのが所得拡大促進税制です。
ポイント1
基準年度と比較して2~5%以上、給与等支給額を増加させた場合、当該支給増加額の10%を税額控除できる制度です。
ポイント2
平成25年4月1日から平成30年3月31日までの間に開始する事業年度に適用されます。
ポイント3
中小企業等の場合、控除額は法人税額の20%(大企業は10%)が限度となっています。
ポイント4
雇用促進税制とは選択適用になります。
ポイント5
平成25年10月1日に発表された民間投資活性化等のための税制改正大綱の内容が国会で採決されることを前提としています。
所得拡大促進税制の概念図
*基準年度とは、平成25年4月1日以後最初に開始する事業年度の直前の事業年度を言います。
適用対象法人
次の1.から3.までの要件をすべて満たしている必要があります。
以下のすべてを満たすこと。
- 基準年度と比較して2~5%以上給与等支給額が増えていること
- 給与等支給額が前事業年度を下回らないこと
- 平均給与等支給額が前事業年度を下回らないこと
注意!
雇用促進税制と所得拡大促進税制は両方適用されることはありません。従業員の給与を上げると同時に新規に雇い入れもするという中小企業はそうそう多くはないでしょう。いずれの税制を選択するかで迷う場合は、具体的にシミュレーションしてみるか、税理士に相談されることをお勧めします。
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