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2017年 5月 1日公開
【連載終了】専門家がアドバイス なるほど!経理・給与
【アーカイブ記事】以下の内容は公開日時点のものです。最新の情報とは異なる可能性がありますのでご注意ください。
テキスト/梅原光彦 イラスト/今井ヨージ
請求書や契約書にハンコ(押印)があるのは当たり前。とは思うけれど、ハンコって本当に必要? という疑問もわいてきます。というわけで、今回はハンコの意義や効力について法的な立場から考えてみました。
目次
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請求書、契約書、発注書、見積書……などなど、事業者間で取り交わす書類には、当たり前のようにハンコが押されています。毎回の押印は、求めるのも求められるのも面倒なこと……。では、こうしたハンコは法的に必要なのでしょうか。請求書等を受け取る側の視点から考えてみましょう。
ハンコがなければ書面の法的効力が発生しないというケースはもちろんあります。ただし、そうしたケースは公的機関に提出する書面など一部に限られます。民間の企業や個人の間で交わす書面の多くは、ハンコがなくても書面自体が無効になるわけではありません。従って、法律的な観点から言えば、請求書等にハンコは必要不可欠ということはないのです。
ではなぜ現実の取り引きでハンコが求められるのでしょうか。その理由は「取引事務を円滑にするための慣習」にあると言えるでしょう。会社の印が押してある請求書と押していない請求書がもしあれば、どちらが信頼されるかというと、圧倒的に前者というのが日本社会です。請求書に会社印があれば、その会社が正式に発行した請求書であると推定され、受け取った側は安心して、そこに記載された口座等に支払うことができるのです。請求書等にハンコは法的には不要だと言っても、それを必要とする社会があり、その中で企業や個人はさまざまな取り引きを行っている以上、無視することはできません。
「印鑑」「印章」「印影」
日常用語としての「印鑑」はハンコを意味します。けれども、ハンコの正式名称が「印鑑」というわけではありません。ハンコにまつわる言葉には「印鑑」「印章」「印影」などがあり、どれも同じことのように思ってしまいますが、下記のとおり、正式にはそれぞれ違う意味があります。
「押印」と「捺印」
「押印」と「捺印」は"印を押す"という行為を表す言葉で、意味に違いはありません。
なお本文中では、印章(ハンコそのもの)、押印すること、押印した「印影」も含めて「ハンコ」と表記しています。
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ハンコが法的に不要だからと言って、法的に意味がないかと言うと、そうではありません。実は法的にもハンコがあった方が良い積極的な理由があるのです。
発注書を例に取りましょう。そもそも発注自体は口約束でも法的に有効です。しかし、取引先の担当者が代わるなどして、発注そのものがあったかどうかで争いになることがあります。その場合、口約束だけでは発注事実を証明することが難しいので、通常は発注書などの書面を作るのが商習慣となっています。
ただし、その発注書にハンコが押していなければ、それは「誰にでも作成できる文書」となり、発注事実を証明する助けとしては弱くなります。逆にハンコがあれば発注事実を証明する助けとなるのです。なぜなら「自分のハンコは自分で管理するもの」という社会常識があるため、もし発注書に相手のハンコが押してあれば、ハンコがない場合に比べて、「相手がその発注書を作成した」=「発注事実があった」ことを証明しやすくなるのです。つまり、ハンコは万が一、裁判などで争いになったときの「保険」としてあった方が望ましいということです。
ハンコが押されている請求書を偽造した場合は「有印私文書偽造罪」で3カ月以上5年以下の懲役が科せられます。ハンコのない請求書を偽造した場合は「無印私文書偽造罪」で1年以下の懲役または10万円以下の罰金となります。従って「有印私文書偽造罪」の方が罪は重いということになります。それゆえ、ハンコが押されている請求書の偽造の方が厳しく罰せられるので、不正が行われにくいと考えられています。
前述のとおり、請求書などについてハンコの必要性が法律で定められているわけではありませんが、ハンコについて社内ルールを設けている会社が一般的と言えます。社内に規定があれば、取引先に対しても書面への押印が求めやすいと言えます。何より社内ルールがあることによって、担当者の勝手な使用や誤用を防ぐことにつながり、会社として統一的なハンコの管理・運用が可能になります。
長年の付き合いで「ハンコなし」が慣例化していたり、当事者同士の立場関係もあったりで、いきなり「ハンコのルールを決めましたからこのとおりに」とは言いにくい場合もあることでしょう。またハンコがないことによるリスクの程度も書面ごとに異なります。実際の対応は取り引きの実情や取引相手との関係に応じて決めるほかはないかもしれません。まずは社内ルールができた時点で、取引先に対してはこれを周知し、協力を求めていきましょう。
日々多くの請求書を発行する会社は、請求書に押印をする代わりに、ハンコ(印影)を請求書に印刷している場合があります。こうした印刷された印影の場合でも請求書の法的な効力に違いはありません。ただ、取引先によっては、印刷された印影は不可としている場合もあります。印影が印刷された請求書を使用する際には、請求書を渡す相手方に確認してから行うとよいでしょう。
ハンコ(印章)にはさまざまな種類があります。ここでは会社で主に用いられる重要な3種類のハンコ(丸印、銀行印、角印)について、適切な使い方を紹介します。
注意!
丸印・銀行印は重要な申請や契約の場合に使われるので、印章の摩耗防止のためにも、請求書に押印するのは避けるようにしましょう。
最近では、ハンコ(印影)をスキャンし、パソコン上で請求書等に貼り付けてPDFなどの電子ファイル形式でメール送信する例も増えています。これを通称「電子印鑑」と言います。この「押印」の効力も法的には、先に述べた「印刷された印影」と変わりはありません。
実際の押印と電子印鑑の違いを強いて言えば――。印影をスキャンして貼り付けただけなので、より偽造されやすいという意味では、リアルな押印のある書面に比べて信用度が落ちます。一方で、通常そうした書面は、取引先からの電子メールに添付されて送られてくるため、逆に送信者が明確と言えます。従って、押印と電子印鑑の信用度にそこまで顕著な差はないとも言えます。
いずれにしても「電子印鑑」でよいとする合意が双方にあるのであれば問題はないのですが、その場合でも念のために、請求書ファイルだけでなく、その受信メールも含めて保存しておくことをお勧めします。
自社のハンコ(印影)がスキャンされるリスクも考え、印は文字に掛かるように押すことで貼り付けを困難にするという当たり前のルールも徹底することが望ましいと言えます。
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