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2019年 2月12日公開
【連載終了】専門家がアドバイス なるほど!経理・給与
【アーカイブ記事】以下の内容は公開日時点のものです。最新の情報とは異なる可能性がありますのでご注意ください。
テキスト/梅原光彦 イラスト/今井ヨージ
オフィスや倉庫などの賃料を巡る「高過ぎる」「安過ぎる」の争い。昨今の相場や周辺の状況に比べて高過ぎるから減額してほしい、安過ぎるから増額してほしいということで賃料の増減を求めるには、どんな手続きを踏めばよいのでしょうか。今回は、賃料の増減を求める手続きの概要を解説します。
目次
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賃料を払う側(賃借人)、あるいは賃料を受け取る側(賃貸人)、いずれの当事者も賃料の増減を相手方に求めることができます。ただし、それには順序を踏んで事を運ぶ必要があります。
賃料を巡るトラブルで多いのは……
といった問題です。
いずれも突き詰めると、「現在の賃料が不相当に高い/安い」ということになります。しかし、一度は双方が合意して決めた賃料ですので、一方的な変更はできないのが原則です。従って、まずは話し合いによる解決を目指すことになります。
まずは賃料の増減を求める意思を相手方に伝えます。話し合いの結果にもよりますが、その後の大まかな流れは以下のとおりです。
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流れに沿って、具体的な手続きを紹介します。
まず相手方に対して賃料の増減額を請求する通知を送り(通常は配達証明付きの内容証明郵便を送付)、相手方と協議の場を持ちます。その際、適正な賃料がいくらなのか、その算定根拠や事情の変更について相手方に説明し、理解を求めます。とはいうものの、賃料を少しでも増額したい賃貸人と、少しでも減額したい賃借人の利益は真っ向から衝突するため、話し合いが円滑に進むとは限りません。
これから交渉を始めるという段階で、なぜわざわざ賃料の増減額を請求する通知を送る必要があるのか、疑問に思われる方もいるかもしれません。賃料増減請求の効果は「通知時」から将来に向かって発生し、過去にさかのぼることはありません。そのため、できるだけ早い時点で通知を出し、賃料の増減額を請求した形を残しておくことにより、将来の調停・裁判で賃料増減が認められた場合、通知を出した時点までさかのぼってその効果を受けることができるのです。
ただし、内容証明通知を出したことにより相手の態度が硬直化してしまわないよう、文面を工夫したり、通知を出す前に一言伝えておいたりすることを検討してみてもよいでしょう。
万が一、話し合いがまとまらなかった場合は、裁判所における調停・裁判を通じての解決を図ることになります(詳細は後述の「調停・裁判の概要」を参照)。従って、話し合いに当たっては、裁判所がどのような場合に賃料増減を認めてくれるのか、本件ではどの程度認めてもらえる見通しがあるのかを頭に入れておく必要があります。
賃料増減請求が認められるための要件は次のように定められています。
「賃料増減請求」をした場合でも、請求がどの程度の確率で認められるかの予測はなかなか難しいものです。計算式はいろいろありますが、実際のところは、賃貸借契約を結んだときの特殊な事情の有無・内容、賃貸期間の長さ、権利金・敷金等の一時金の支払いの有無などを考慮しつつ、近隣の家賃相場についての不動産業者の意見書、不動産鑑定士の作成した報告書なども参考にしながら見通しを立てるとよいでしょう。
賃料増額請求の場合、単純に現在の賃料がその地域の相場より安いから、相場との差額分の増額が認められるということにはなりません。賃料増額請求で問題になるのは「新規賃料」ではなく、「継続賃料」であるからです。
新たに物件を貸し借りする場合の賃料。需要と供給との関係によって市場で決まる賃料で、いわばその地域の「相場」です。賃貸人と賃借人の関係などは考慮されません。
既に賃貸借契約が成立している特定の物件についての賃料です。従って、単純に相場で決まるのではなく、過去に支払った賃料額、現在の賃料額、当事者間のこれまでの関係や契約に至った経緯、事情などが考慮されます。
例えば、継続賃料の増額を請求する場合、一般的には、近隣の相場に比較して安いというだけでは足りず、「相当に安い」ということまで証明できなければ、認められにくいのが実情です。
話し合いがまとまらない場合は、賃料増減額を求める調停を簡易裁判所に申し立てます。裁判所を間に挟みはしますが、調停も話し合いの延長線上の制度といえます。原則として物件の所在地を管轄する簡易裁判所に調停の申立を起こすことになります。申立をすると、双方が簡易裁判所に出頭して、適切な家賃がいくらなのかを話し合います。
調停でもまとまらないときは、裁判所に賃料増減額を請求する訴訟を提起することになります。当事者の合意による和解も試みられますが、それでもまとまらなければ最終的には裁判所が判決という形で最終判断を下すということになります。
裁判になった場合、裁判所はほぼ間違いなく専門家(不動産鑑定士など)による鑑定を実施させます。この鑑定費用は高額になることも多々あるのですが、これは賃料増減を求める側が負担するのが一般的ですので、その点も頭に入れて裁判までやるかどうかを判断しましょう。
賃料増減請求を巡る争いで対応を誤ると、最悪の場合、契約を解除されるリスクもあるので慎重に行動しなければなりません。
賃料減額を求めている借主が、裁判で最終判断がなされる前段階で、現行の賃料より少ない額の支払いしかしないと、判決で減額請求が否定された場合、「賃料一部不払」として契約を解除されるリスクがあります。契約解除(解約)されてしまったら、借主は何のために減額請求をしたのか分からなくなってしまいます。従って最終判断が出るまでは、原則として、現行の賃料を支払っておくのが無難だといえます。
その代わり、最終的に賃料減額を認める判決が出た場合には、賃貸人はもらい過ぎた賃料分に年10%の利息をつけて賃借人に返金しないといけません。その意味では、賃料減額請求がなされた場合、賃貸人側もまた、漫然と現行賃料を受け取り続けるのではなく、賃料としていくらを受け取るのが相当なのかをきちんと検討しなければなりません。
賃料の改定について、あらかじめ契約に特別な条項を入れて取り決めておくことも可能です。ただし、内容によっては定めたとおりの効力とならない場合があります。
一定期間賃料を増額しないとの条項は、借主に不利とならない内容なので有効です。ただし、その特約の期間が長期にわたり、その間に経済事情が激変した場合は、特約は効力を失い、賃料増額を請求することができるとされた例もあります。
一定期間賃料を減額しないとの条項は、借主に不利な内容の契約となるので、借地借家法により無効となります(定期賃貸借の場合を除く)。従って借主はこの条項のある/なしに関係なく、減額請求ができます。
「二年ごとに3%ずつ増額(減額)する」というように、自動的に賃料を増額または減額する条項です。改定の基準が借地借家法の規定する経済事情の変動を示す指標(注)に基づいて相当なものである限り、その条項は有効となります。ただし、この条項を定めたときの前提となっていた事情が失われた場合、契約当事者はその条項に拘束されず、借地借家法による賃料増額(減額)請求ができると解されています。
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