2019年 3月12日公開

【連載終了】専門家がアドバイス なるほど!経理・給与

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「企業も寄付ができる? 寄付の損金算入」の巻

テキスト/梅原光彦 イラスト/今井ヨージ

  • 経理

企業などの法人が寄付をした場合、その寄付金が損金(経費)として認められる場合があります。どのような場合に、どれくらいの寄付金が損金として認定されるのでしょう。今回は法人の寄付と損金算入についての基本知識を解説します。

  • (注)「寄付」と「寄附」は同じ意味ですが、一般的に用いられるのは前者で、法令・公用文における公式の表記は「寄附」となっています。以下の本文では新聞などで一般に使われる「寄付」で表記を統一しています。

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寄付金損金算入の意義

寄付金は経費と見なされるのか?

企業経営の目的は営利活動を行い、利益を出すことです。一方で寄付は、見返り(利益)を求めない行為なので、営利活動とは真逆の行為です。寄付をしたからといって売り上げが伸びるわけでもなく、企業の本質から考えれば無意味な行為ということになります。

従って法人税法上も、原則として営利活動に伴う経費以外は認めていないのですが、寄付については、「一部例外」ということで法人税法上の経費として認めています。その理由は、企業の社会的存在意義にあります。

企業などの法人は地域社会の一員でもあります。震災等の復旧義援金のように特別な場合だけでなく、普段のお付き合いで地域の夏祭りや花火大会の協賛金(広告宣伝費等を伴わないもの)など慣習的に支出をしている企業も多数あります。これらの支出=寄付は、企業が事業を円滑に実施し、規模を拡大するために必要な費用であるという考え方もでき、その意味から「必要経費」として損金算入が認められるということなのです。

もちろん、寄付の内容や金額にかかわらず、全てが経費と見なされるわけではありません。以下、ケースごとに解説します。

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損金算入のルール

法人税法では寄付先によって損金算入額(法人税を計算する過程で経費として認められている額)の範囲を定めています。すなわち寄付をする相手先に応じて、損金に算入できる限度額が異なるということです。

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損金算入額の4区分

寄付先としては主に、以下の4区分があります。

1)国、地方公共団体に対する寄付金

国や地方公共団体への寄付金は全額を損金算入できます。また、国税庁が指定した団体に対する震災等の寄付についても同様の扱いとなります。

以下、具体的な事例で説明しましょう。

2)財務大臣の指定した寄付金

財務大臣が指定した寄付金は全て損金算入できます。
具体的には……

  • 学校教育関係:国立大学法人等の業務に充てられる寄付金等
  • 試験研究関係:研究法人の試験研究の用に直接供する固定資産の取得のための寄付金
  • 共同募金関係:各県共同募金会の共同募金
  • 日本赤十字社関係:毎年4月1日から9月30日中の寄付で財務大臣が指定した日本赤十字社への寄付金

などです。
以下、具体的な事例で説明しましょう。

3)一般の寄付金

一般の寄付金(1、2、4以外の寄付)の代表例としては町内会に対する寄付等が挙げられます。また法人と特殊な関係にある外国法人(国外関連者)に対して寄付をした場合には限度額計算をするまでもなく、全額が損益不算入となります。

一般の寄付の場合、寄付金を全て損金に算入できるわけではなく、限度額が定められています。損金算入限度額は、以下の計算式に基づいて算出します。

なお、損金算入限度額については、4)の特定公益増進法人等に対する寄付がないことを前提とします。

以下、具体的な事例で説明しましょう。

例えば、期末の資本金等の額が10,000,000円、所得の金額(注1)が20,000,000円だった場合には、(10,000,000円×0.25%+20,000,000円×2.5%)×25%=131,250円が損金算入限度額となります。損金不算入額の168,750円が法人税法上経費となりません。

つまり、寄付をした場合には168,750円×実行税率30%(注2)≒50,600円相当額の税負担が生じます。

  • (注1)所得の金額とは、申告書別表四の仮計の金額に、支払った寄付金の額を加算した金額となります。
  • (注2)実行税率は仮定した数値となっています。

4)特定公益増進法人/認定NPO法人に対する寄付金

特定公益増進法人、認定NPO法人への寄付についてはいずれも以下の計算方法で損金算入額を算出します。一般の寄付金がないことを前提として損金算入限度額は、(a)と(b)の合計となります。

以下、具体的な事例で説明しましょう。

例えば、期末の資本金等の額が20,000,000円、所得の金額(注3)が40,000,000円だった場合には、

(a)(20,000,000円×0.25%+40,000,000円×2.5%)×25%=262,500円
(b)(20,000,000円×0.375%+40,000,000円×6.25%)×25%=1,287,500円

(a) + (b) = 1,550,000円が損金算入限度額となります。損金不算入額の450,000円が法人税法上経費となりません。つまり、寄付をした場合には450,000円×実行税率30%(注4)= 135,000円相当額の税負担が生じます。

  • (注3)所得の金額とは、申告書別表四の仮計の金額に、支払った寄付金の額を加算した金額となります。
  • (注4)実行税率は仮定した数値となっています。

なお、特定公益増進法人/認定NPO法人がどのような法人を指すかは、以下のように定められています。

特定公益増進法人とは

教育または科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄与する法人をいいます。具体的には次の法人です。

  • 独立行政法人通則法第2条第1項に規定する独立行政法人
  • 地方独立行政法人法第2条第1項に規定する地方独立行政法人で一定のもの
  • 日本赤十字社(指定寄付以外で事業全般に対するご寄付)・自動車安全運転センターなど
  • 公益社団法人および公益財団法人
  • 私立学校法第3条に規定する学校法人で一定のもの
  • 社会福祉法第22条に規定する社会福祉法人
  • 更生保護事業法第2条第6項に規定する更生保護法人

認定NPO法人とは

NPO法人のうち一定の基準を満たすものとして所轄庁または国税庁長官の認定を受けた旧認定NPO法人をいいます。認定を受けていないNPO法人に対する寄付については、上記3)の一般の寄付となります。

税法改正後のルール変更に注意!

ほかにも「企業版ふるさと納税」「国外関連者に対する寄付」「完全支配関係がある他方に対する寄付」などがあります。それぞれに税法改正後にルール変更があるので、ご注意ください。

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ライター紹介

梅原光彦

ライター歴30年超。新聞、雑誌、書籍、Web等、媒体を問わず多様なジャンルで書き続ける。その一つが米原万里著『打ちのめされるようなすごい本』に取り上げられたことが勲章。京都在住。

監修/中川 誠

プロフィール

東京税理士会麻布支部所属。1972年生まれ。ベンチャー企業に対する税務申告および経営相談、相続コンサルティングなど幅広く行う。町医者のような会計事務所を目指している。

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