2019年10月 8日公開

【連載終了】専門家がアドバイス なるほど!経理・給与

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「接待飲食費の税務について」の巻

テキスト/梅原光彦 イラスト/今井ヨージ

  • 経理

どこまでが「接待交際費」の範囲なのか、どこまで損金処理できるのか……接待交際費の取り扱いは経理担当者にとって悩ましい問題です。今回は、接待交際費の中でも身近な「飲食」に関する交際費=接待飲食費を中心に解説していきます。

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飲食に関する接待交際費の基本

平成26年4月1日以降、大企業も飲食に関する接待交際費は一部損金に計上できることになりました。また、中堅・中小企業についても、飲食に関する交際費が多額な会社は、選択により税務上有利になる場合があります。

交際費とは

交際費とは、交際費、接待費、機密費、その他の費用で、法人がその得意先、仕入れ先、その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答、その他これらに類する行為のために支出する費用とされています。交際費の全体像については過去記事(「接待交際費と会議費の税法上の違い」の巻)をご覧ください。

「接待交際費と会議費の税法上の違い」の巻

税務上の飲食費とは

飲食費とは、飲食、その他これに類する行為のために要する費用をいいます。ただし、専らその法人の役員もしくは従業員、またはこれらの親族に対する接待等のために支出された費用は除きます。

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損金算入できる接待飲食費

そもそも交際費は損金不算入というのが原則です。ただし、交際費のうち飲食に関する接待費=接待飲食費が1人当たり5,000円以下の場合、交際費から除外して経費にできることが明文化されています。

接待飲食費の5,000円ルール

税務上の飲食費のうち、その支出額を、飲食等に参加した者の数で割って計算した金額が1人当たり5,000円以下(注)である費用は交際費ではなく、全額損金に算入できる会議費とすることができます。ただし、次の事項を記載した書類を保存していなければなりません。

  • 飲食等の日付
  • 飲食等に参加した得意先、仕入れ先、その他事業に関係のある者等の氏名または名称およびその関係
  • 飲食等に参加した者の人数
  • その費用の金額ならびに飲食店等の名称および所在地(店舗がない等の理由で名称または所在地が明らかでないときは、領収書等に記載された支払先の名称、住所等)
  • (注)税込経理の場合、1人当たり税込5,000円以下、税抜経理の場合1人当たり税抜5,000円以下で判断します。

ワンポイントアドバイス

日付、関係企業、参加人数などの明細は帳簿の摘要欄もしくは、領収書の裏面や立替精算書に以下のように記載しておくとよいでしょう。

(例) 10/1 (株)吉田商事 吉田様ほか2名、当方2名 卸売先 金額:27,000円(税込)

【消費税に注意!】
税込経理の場合:27,000円(税込)÷5人=5,400円→5,000円超なので接待交際費
税抜経理の場合:25,000円(税抜)÷5人=5,000円→5,000円以下なので会議費

接待飲食費のフローチャート

交際費の損金不算入制度の改正について

従来、大企業の接待交際費は全額損金不算入でしたが、「法人の交際費等の損金不算入制度に関する規定」の改正により、平成26年4月1日から、大企業も接待交際費のうち、「接待飲食費の50%相当額は全額損金算入できる」こととされました。大企業が使う交際費(飲食費)を増大させ、景気拡大につなげようとの意図から改正されたものです。
なお、損金不算入制度の改正規定の適用期限は、令和2年3月31日までに開始する各事業年度までとされています(令和元年9月30日現在)。

平成26年度税制改正による交際費等の損金不算入制度

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接待飲食費Q&A

接待飲食費についてよくある疑問をご紹介します。

Q1 どのような費用が飲食費に該当するのか?

A 飲食費に該当するのは次のような費用です(社内飲食費は除く)。

  • 自己の従業員等が得意先等を接待して飲食するための「飲食代」
  • 飲食等のために支払うテーブルチャージ料やサービス料等
  • 飲食等のために支払う会場費
  • 得意先等の業務の遂行や行事の開催に際して、弁当の差し入れを行うための「弁当代」(得意先等において差し入れ後相応の時間内に飲食されるようなもの)
  • 飲食店等での飲食後、その飲食店等で提供されている飲食物の持ち帰りに要する「お土産代」

Q2 飲食費に該当しない費用にはどのようなものがあるか?

A 以下の費用は飲食費に該当しません。

  • ゴルフや観劇、旅行等の催事に際しての飲食等に要する費用
  • 接待等を行う飲食店等へ得意先等を送迎するために支出する送迎費
  • 飲食物の詰め合わせを贈答するために要する費用

【解説】
上記の費用は全て飲食に関連はするものの交際費となり、損金に算入できません。ゴルフや観劇、旅行の場合は催事自体がメインであって、その中の飲食だけを切り取って交際費から除外することはできません。また接待に関係する旅費交通費は送迎も含めて交際費となります。贈答品もたとえ飲食物であっても物品を贈答しているので交際費になります。

Q3 どのような費用が社内飲食費に該当するのか?

A 「社内飲食費」とは、得意先等ではなく、専らその会社の役員や従業員あるいはこれらの親族に対して接待等のために支出する飲食費をいいます。

Q4 社内飲食費に該当しない費用とは?

A 次のような費用は社内飲食費に該当しません。

  • 親会社の役員等やグループ内の他社の役員等に対する接待等のために支出する飲食費
  • 同業者同士の懇親会に出席した場合や得意先等と共同で開催する懇親会に出席した場合に支出する自己負担分の飲食費相当額

Q5 接待飲食費について帳簿書類への記載事項で注意すべき点は?

A 帳簿書類には「飲食費に係る飲食等に参加した得意先、仕入れ先、その他事業に関係のある者等の氏名または名称およびその関係」を記載しなければなりません。これは、社内飲食費でないことを明らかにするためです。従って、原則として、「○○会社・□□部、△△◇◇(氏名)、卸売先」というように飲食等を行った相手方の氏名や名称の全てを記載する必要があります。

ただし、相手方の氏名について、その一部が不明の場合や多数参加したような場合には、その参加者が真正である限りにおいて、「○○会社・□□部、△△◇◇(氏名)部長ほか10名、卸売先」という記載であっても差し支えありません。また氏名の一部または全部が相当の理由があることにより明らかでないときには、記載を省略して差し支えありません。

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実務上のポイント

接待飲食費を損金算入するうえで気を付けておきたい実務上のポイントとはなんでしょうか。

定額控除方式か50%方式か

平成26年度の税制改正で、接待飲食費の損金算入について、中小企業は800万円の定額控除方式と50%方式の選択適用ができるようになりました。すなわち年間1,600万円超の接待飲食費を支出している場合には50%方式を選択した方が有利になります。

有利な方式を選択するために

まず、その支出が接待交際費に該当するかどうかを判定し、接待交際費に該当する場合は、補助科目で接待飲食費かそれ以外かを区別しておくことです。中小企業の場合は、年間の接待飲食費が1,600万円超かどうかを判断し、50%方式と定額控除方式のどちらが有利かを判断します。

接待飲食費の額の50%相当額の損金算入と定額控除限度額までの損金算入との比較

接待飲食費の額が年1,600万円を超える場合(損金算入額:A>B)

接待飲食費の額が年1,600万円以下の場合(損金算入額:A≦B)

最後に

税務はエビデンス主義です。帳簿書類への記載事項は要件を満たすように準備をしておく必要があります。社内の立替申請書などのフォームを工夫して、帳簿要件を満たすようにしておくと確実です。税務調査時に立証できるように書類の準備には万全を期しておきましょう。

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ライター紹介

梅原光彦

ライター歴30年超。新聞、雑誌、書籍、Web等、媒体を問わず多様なジャンルで書き続ける。その一つが米原万里著『打ちのめされるようなすごい本』に取り上げられたことが勲章。京都在住。

監修/田中章仁

プロフィール

1974年生まれ。神奈川県鎌倉市出身。東京税理士会渋谷支部所属。個人事業主から中小企業まで幅広くサポート。モットーは「共に悩み、共に喜ぶ」。週末は鎌倉の少年野球チームで監督を務める。4児の父。

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